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魔導師レイシス、神と悪  作者: tommy
1章 一人前になるという事
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トライアングル

知らぬ女の朝の挨拶にベッドの外に転げ落ちたレイシス。

「誰です…?」


「あら、ひっくり返らなくてもいいじゃない?」

半身を起こして長い髪をかき上げてレイシスを見つめ返す女。


「誰なんですか…?」

頭の中で盗賊とか新手の泥棒の入り方なのかとか、詐欺師とか考え始めるレイシス。


「レイシス…?」

ローラが物音で起きた。

体を起こして目をこすりながらつぶやく。


「ローラもお目覚めね。」

女はローラの顔を見てローラの名前を言って見せる。


「マサキチ…?」

ローラが目をこする手を止めて驚いた顔をする。


「あら、よく分かったわね。」


「え?」

ローラの言葉を聞いて慌てて回りを見るがマサキチの姿はない。


「本当に…君が?」

ベッドから転げ落ちた態勢から力が抜けないレイシス。


「マサキチって名前は違うけど。」

笑って答える女。


「名前なんていうの?!」

ローラがすぐに聞く。


「フィーネって呼んでちょうだい。」

ローラにニコリと笑みを向けるフィーネ。


「うん、よろしくねフィーネ。」


「こちらこそよろしくね。」


「ちょっと待ってくれ。」

レイシスの頭は整理し切れていない。

よろしくの挨拶を聞いていると余計にレイシスのバグが複雑になる。


「君がマサキチだったとして、今までなんの目的でついてきてたんだ。」

待てという手をフィーネに向けたまま立ち上がるレイシス。


「僕らはなんとなくそういう事をする奴とつるむのは危険なんだ。」

真顔になるレイシス。


「フフフ、いい判断ね。」

服の袖で口元を隠して笑う女。


「真剣だ、僕は。」


「ごめんなさい、でも安心して。あなたの力になる事が私の義務なの。」

レイシスの目を見て態度を直す女。


「力…義務?」


「あなたも自分の力に気付いて無いわけではないでしょう?あなたには人間には扱う事も感じ取る事さえ出来ない力があるの。」

女の顔からは真剣さが伝わってくる。まだ朝早く、少し暗さが残る部屋のせいもあるのか。


「レイシス?」

と空いた間にローラが声をかけた。


「ああ、分かってるよ…。」

僕でさえ扱えない力を僕に与えたの?と皮肉をすぐに思いついたが口には出すのはやめた。


「その力の制御をこれから訓練して行きましょう?というわけなの。」


「コントロール出来るようになるの?」

希望と不安が表情に混じる。

さっきまでの表情とうって変わり、すがるような顔を一瞬見せる。


「なって貰わないと困るわ。」


「そっか…。」

ー人には扱えも感じもしない力…使いこなせるようになった僕は人間じゃないのか?ー




フィーネはレイシスの持つ力についてすぐに話し始めた。

「まずあなたは生まれながらに魔王を退けた英雄と呼ばれた者の力を秘めていたの。」


「秘めていた?」


「過去形にしたのはその力が封印状態だからよ。」

ベッドに腰掛け少し前のめりになるフィーネ。


「そうなの…?」


「納得いってなさそうね。」

フィーネも納得いかないという顔で返す。


「いや、続けていいよ。」

少し焦ったように両手を振ってレイシスが促す。

ローラはレイシスの隣で顎に手を当てて考えながら聞いている。


「私はその力の訓練を手伝うのと、管理することが役目。来るべき魔王との戦いに向けてね。」


「なるほど…。」

ゆっくり頷く。


「ここまで宜しくて?」

フィーネが顔を近づける。


「ああ…。」


フィーネが顔を引っ込めるとほぼ同時にレイシスが二の句をつぐ。

「あのさ、魔王はいつ現れるの?」


「さあ。」

両手を左右に出して首をかしげる。


「さあって…その時が近づいたから君が来たんじゃないの?」


「それはそうね、あなたが死ぬ前には来るわよきっと。」


「大雑把な…。」


「大丈夫だよ、レイシス!」

無邪気というか無知というかそんな励ましをくれるローラ。


「う…うん。」

ぎこちない頷きを返すレイシス。


「とりあえずよ。とりあえず先立ってやることがあるわ。」

フィーネが人差し指を立てる。

ベッドから立ち上がるフィーネ。

ようやく朝日が差してくる。背を向けたフィーネの背を照らす。


「なに?」


「封印の解除。」


「暴走しないかな…。」


「もちろん一部ね。いきなり全て解放するなんて無謀よ。封印はあなたと力を繋ぎとめる役割もはたしてるわ。訓練して使えるようになっていって段階的にね。」


「そうか…全て解放したらどうなるの?」

一度顔を伏せてからフィーネの方に顔むけるレイシス。


「人間ではいられなくなるでしょうね。」


「…。」


「レイシス…?」


「なんでもないよ、僕はどうしたらいいの?」


「とくにすることはないわ、私がやるから。」


「そっか…。」

拍子抜けするレイシス。

なんとなく深呼吸してみた。なんだかけっこう落ち着けた。


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