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【11.5】閑話・かわいい妹のモノローグ

会話中心。閑話扱いで、小話程度にさらりと。

お姉ちゃんが、変だ。

お姉ちゃんは運動部のマネなんてやってるくらいだから、もともと割とさばさばしてて活動的な人って印象。なのに、なんかおかしいのだ。なんというか、静かになってしまった。部屋にこもっていると思えば机に向かって勉強しているみたいで、お母さんは呑気に喜んでいたけど、そんな珍しい時もあるかなってくらいに考えていたら、なんやかんや、冬休みに突入してしまった。期末の結果もよかったみたいだけど、お姉ちゃんは相変わらず静かだ。お母さん、「女の子はおしとやかな方がいいわね」なんて言ってる場合じゃないからね。これはおかしい、絶対におかしい。

だってお姉ちゃんの変化は、それだけじゃないのだ。爆発的にため息が増えたのを、わたしはちゃんと知っている。ため息って言葉から連想されるほどには重々しいわけじゃないけど、いつもと違うことくらい、わたしにもわかる。ちなみにわたしが根っからのお姉ちゃんっ子というかシスコンなのは、自覚ありだ。

あーもう、今日もため息ついてる。こういう時は、アレだ!


「お姉ちゃん。おいしいケーキ、食べたいな!」


これがお姉ちゃんの正しい誘い方だと、妹歴の長いわたしは信じている。



 *



息が白い。イルミネーション本番の季節は過ぎたけれど、年末の街はまだきらきらしていて、人々は慌ただしく過ぎていく。

そんな中、わたしとお姉ちゃんはたまに来るカフェに来ていた。というか、実はお姉ちゃんとしか来たことがない。そんな、わたしにとって少し特別なカフェは、今回行きたいってねだるにもちょうどいい場所だと思ったんだ。

一年でも一大イベントであるクリスマスが過ぎているからか、さほど待たずに席に案内されたので、早速注文。しばらくして、大好きなフルーツ満載タルトと素敵な香りの紅茶が二人分運ばれてきた。さて。


「お姉ちゃん、一体どうしたの?」


わたしは単刀直入に切り出した。家族だもん、気を遣ったり言葉を選ぶようなことはない。それにお姉ちゃんにもそうであってほしかったから、ずばっと聞いてみた。

お姉ちゃんはなんとなく感付いていたんだと思う。苦笑して口を開いた。


「そろそろ聞いてくる頃かなって思ってた」

「自覚、あったんだ」

「まぁね。なんか心配かけたみたいでごめん」

「今日のケーキはおごってもらうから平気」

「……確信犯め」


口調こそ恨みがましいけど、お姉ちゃんは一応笑顔だ。人はそれを苦笑と呼ぶのかもしれないけれど。

そして思ったより簡単に、口を割った。


「いやーなんか。モテ期だったんだよね」


おおっとー。これはベテラン妹のわたしの予想の斜め上を行く返答がー。

ここはテンプレ通りに返しておくべきか。


「お姉ちゃん、あのね?付き合ってっていうのは、多分どこかへ一緒に来てっていう意味でね?」

「そう言いたくなる気持ちも残念ながら理解できちゃうんだけど、こればっかりは勘違いじゃないってば」

「ええー。どうかなぁ?」


疑惑の目を向けながらも、ぱくりと一口。あぁぁー、おいしい。口実とはいえ、来てよかった。幸せ。

だけどできる妹は、本来の目的も見失わない。一応訊いておく。


「それで、相手はどんな人なの?」

「その一応訊いとくか、みたいなのやめてよ」


あ、バレてた。さすがお姉ちゃん。


「えーと、相手は部活の部長と、部活の同学年」

「え、部長ってあの王道イケメン?そして同学年って、ワンコイケメン?!」

「部長はそれだと思う。にしてもワンコイケメンって一体……なんとなくわかっちゃうけど。でも違うよ」

「えぇ、じゃあまさか、まさかとは思うけど、あの和風イケメンの方?」

「和風イケメンも相当謎だけど、多分そうなんじゃないの」

「な、なんてこった」


わたしはもちろんお姉ちゃんの部活の応援に行ったことがあるので、部員の顔は分かる。米印、ただしイケメンに限る。

そしてお相手は、そんなわたしが顔を覚えているくらいのイケメン二人であった!

しかし対するお姉ちゃんは十人並みだ。顔もスタイルも、勉強も女子力も、良くも悪くも平均、普通!妹フィルターを通してもそんな評価なのに、それなのに!そんな奇跡があるわけがない!!

しかも片方は和風イケメンだと言うし。お姉ちゃんと同学年は、ワンコと和風しか覚えてないけど、消去法でワンコかと思いきや、うーん。

お姉ちゃんは、そんなばかなと言わんばかりのわたしに、不満そうだ。


「だってちゃんと好きって言われたもん。二人から」

「えぇぇー。あ、友達としてってこと?ラブじゃなくてライク?」

「かと思いきや、どう考えたって恋愛的な意味なんだよね。片方はわざわざ念押ししてくるし。私だって空気くらい読めるのにさ」


うーん、自信満々なところに水を差すようだけど、それはちょっと怪しいと思う。

でもそれ以上に、逃げられないためだと思うよ、お姉ちゃん。相手は相当な策士だね。

たぶん、お姉ちゃんの話は本当だろう。わたしに対してこんな嘘をつくメリットがないもん。だけどにわかには信じがたいのも事実で。


「……うっそだぁ」

「これが本当だから困っちゃうよねぇ」


モテる女は辛いわぁ、みたいな顔するな。大好きなお姉ちゃんが相手でもちょっとイラッとくる。

でもそんな余裕の表情をみて、わたしは少し、ほっとする。だってね。


「もう、答えは出てるんだね」

「……うん」

「じゃあため息は、なんで?」

「あー。それはね、ちょっと目指すところが高いせいかな」


ふーむ、つまり部長さんの方を選んだわけね。聡い妹はそれだけで万事把握です。それならクリスマスのあれも納得。

お姉ちゃんのことだからどちらも振ってしまうとかも考えたんだけど、そこは年頃、恋する乙女だったらしい。全然そんな雰囲気なかったのに……ちょっと悔しい。わたしにも知らないことがあるなんて。だけどわたしにも、お姉ちゃんに言ってないことはあるもんね。お互い様なら仕方ない、諦めよう。

それに、もう目標まで定まっているならば、わたしにできることはひとつだ。


「お姉ちゃん」

「ん、何?」

「応援してるね」

「うん。ありがと」


照れるように笑うお姉ちゃんは、十人並みでも可愛い。これは決して妹フィルターのせいじゃないはず。

そして心配事のなくなったわたしは、心置きなくケーキと紅茶に意識を戻したのでした。うん、極上!



  *



そして冬休み明け、今日から登校の朝。

お姉ちゃんは、吹っ切れたような顔をしていた。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


わたしは笑顔で、お姉ちゃんの背中を押した。

わたしは妹の沽券にかけて、お姉ちゃんを全面的に支持します!



  *  *  *

和風イケメン=高野くん、ワンコイケメン=大内くん。

レギュラー陣を主に担当するお姉ちゃんの周りにいるのはイケメン(かつ実力者)が多いので、妹が覚えてるイケメンとお姉ちゃんの会話に出てくる人間は大体イコールです。

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