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第五話
そう。家から出た後もそこは『迷路』だった。
世界が――――――――――――迷路になっていた。
「…………ん? お前知らなかったの?」
友人はあっけらかんとそう言う。
これでは、
スーパーマーケットにいつ辿り着くかも分からない。
コンビ二にいつ辿り着くかも分からない。
ファミレスにいつ辿り着くかも分からない。
僕はただ迷う。
回り廻って、また巡る。
ぐるぐるぐるぐる、と。
「でもさ」
友人は絶望の淵にいる僕に声を掛ける。
そして迷わず、はっきりとこう口にする。
「世界がこんなになってもそこまで不満は無いんだよな」
いや。
そんな訳が無い。
そんな事がある訳無い。
反対意見を示す僕に友人は「だって…………」と続ける。
「人生なんて所詮『迷路』みたいなものだろう?」
僕は、ショックのあまり声が出なかった。