第三話
しかし焦らずにはいられなかった。
そんな時――――――――、
「あれ? ――じゃん。久しぶり」
声を掛けられた。
考えてもみれば久々に人の声を聞いた気がする。
朧げながらも見覚えのある顔。
声の主は僕の友達だった。
しかしここで当然ながらもある疑問が沸いてくる。
何故僕の家に――――この迷路にこいつがいるのだろう。
そう思い、友達にその事を訊いてみる。
「ああ、偶然お前の家を見掛けたから顔を見ていこうと思って、玄関から上がらせてもらったんだよ」
――――――玄関。
この言葉に僕はいかにも過剰に反応する。
この友人は玄関の場所を知っている。
それ即ち『迷路』を攻略出来るという事に繋がるのは何より分かりやすい自明の理だ。
僕は友人にこの『迷路』を攻略したい旨を告げる。
すると彼は、
「ああ、何だ? ここから出たいのか?」
ならついて来いよ、そう言って自身から右斜め前のドアを開ける。
僕は黙って彼の後に続く。
左斜め前――――左――――下――――右後ろ――――30m程進んで左から8番目のドア――――右から3番目のドア――――右――――右――――上――――下から二番目のドア――――右斜め前――――。
「そろそろ玄関だ」
彼がそう言ったかと思うと、懐かしい光景が見えてくる。
――――――――――――――――玄関だ。