番外その3「認めてくれたひと」
番外編第3段。
紫希視点で過去編。
紫希が初めて聖司と出会った日の話。
まだ紫希は狂ってないです。
運営してるサイトの拍手文にしてたやつで、短めです。
ざわざわ……。
「(ほら、あの子が……)」
「(ああ…汚らわしい)」
「(魔族との混血なんて……)」
耳障りな声がボクに届く。
────うるさい。
距離はそこそこ離れている。けど潜めようともしないその声をとても不快に感じた。
言いたい事があるなら真正面から言えばいいのに。
奴らが思っている事なんて分かり切っている。
『忌まわしい』
今、ボクを飼っているのはボクの母さんの父親。
───つまりはボクにとって祖父なのだけれど、それを認めようとはしない。
何故ならボクの父さんは──魔族だから。
(……寒い)
ぽつりと一人で冬の寒空の下にいるボクが身に付けているのは薄手の服。
まともな服なんて、あの男は与えてくれない。裸じゃなければそれでいいといった感じだ。
そんなボクに冷たい風は容赦なく、身体からは熱が奪われていくばかり。
(……凍え死んじゃうのかな?)
あの男が屋敷にボクを入れてくれるのは夜の間だけ。
それ以外の時間はずっと外に放り出されている。
今日もいつもと同じ。
────ボクは独り。
「……風邪、引くよ?」
俯いて地べたに座り込むボクの肩に突然、そんな声と共に水色のコートが掛けられる。
驚いて顔を上げると、そこには優しそうな風貌の青年が微笑んでいた。
「よかったら家に来ない? そのままだと心配だから………」
今まで与えられてきた眼差しや言葉とは違う。
優しくて、温かい。
────そんな何かが酷く心地よく感じる。
そんな彼にボクは興味を持った。
「………いいの?」
いつもなら誘いは即座に断っている。
だけど、初めて向けられた優しさに惹かれて、ボクは彼についていった。
───ボクは、聖司に出会えて本当に良かった。
知らなかった感情を教えてくれた、大切なひと。
“家族”というものを持たないボクにとって、聖司は本当の兄のように感じられる存在。
だから、ボクは聖司を守るよ。
────初めてボクを認めてくれたひとだから。
紫希は聖司と出会った頃はまだ死刑執行人でもなく、狂ってもいませんでした。
狂った理由は多分本編で書きます。
紫希は家族の愛情(家族からの愛情だけではないんですが)に飢えてるので、初めて情を注いで接してくれた聖司に執着してます。
血が繋がってたらブラコンだよこの子。
聖司も同じくブラコンになると思います。
少し分かりにくい文になってしまった感があるような……