第21話 元義妹の裁判は、あまりにも彼女の変わりように……
ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。
一ヶ月の蜜月が終わり、幸せの絶頂にいる中、一通の手紙が我が家に届いた。
それは、裁判所からの通達でアルベルト様がペーパーナイフで封を切り、中を確認していると……。
「どうやら、君の元義妹が見つかって、現在裁判所の地下牢に入っているそうだ」
「裁判所の地下牢⁉」
「なんでも、俺達の結婚式の際、刃物を持って侵入しようとしたところを取り押さえられた。これは父の配慮だろうな」
「まぁ……」
「直ぐに裁判となるのだが……どうする? 体が辛いなら」
「いいえ、私も最後まで見届けます。見届けることしか出来ないけれど」
「分かった……。裁判は今日の夕方らしい。それまではゆっくり過ごそう」
まさか、結婚式にそんな事があったなんて……。
そういえば、式の最中外が騒がしかったのはそれが原因……?
でも、どれが確実かなんて分からない。
全ては、裁判所でわかることだと割り切り、私達は用意するべく慌ただしく動いた。
そして夕方の裁判に間に合うように向かうと、母とアルベルト様のご両親もついていて、裁判が始まった。
――まず驚いたのは、義妹の姿だった。
着の身着のままという出で立ちで、髪もボロボロ……化粧だってしていない。
一瞬言われないと元義妹だと分からないほどの変貌ぶりに、言葉をなくした。
罪状は、ロガンド商会とフィズリー洋服店の結婚式の際、刃物を持って結婚式場に侵入しようとしたこと。
さらに、元義姉であるナディアの殺害を明確に企図していた点だった。
その後釜に自分が入ろうと目論んでいたことまで、一ヶ月の間に聞き出せる事は全て聞き出した後だったようだった。
「だって、お義姉様ばかり狡いもの。本来アルベルトの隣は私のものよ」
「悪いが、君に呼び捨てにされる筋合いはない」
「目を覚ましてアルベルト! 貴方が本来愛するべき女性は私なのよ⁉」
「随分と被害妄想も酷いようですね」
「精神を病んでいる恐れがあります」
「だからといって、減刑することは出来ませんが」
「どうして皆そんな酷いことを言うの!? あるべき姿に戻そうとしただけなのに!」
……もはや元義妹には、何を言っても無駄だと裁判官や裁判長も感じているらしく、皆一様に残念そうな目でメアリーを見つめている。
当の本人は、自分がなぜそんな目を向けられるのか理解していないようで、「皆可笑しいわ!」と叫んでいたわ……。
「反省の色も無ければ、これでは再犯する可能性が極めて高い」
「義理の姉妹だったにしても、元義姉である姉を殺害する殺意は極めて高いと言えるでしょう」
「元義姉……? どういう事?」
「あれだけ街でも有名なのに、聞く耳もないのか?」
「君のお父上と、今まで育ててくれた義母であるフィズリー夫人は、離縁が成立している。君はお父上の籍に入り、もはや家族でもなんでもないんだよ」
「は? 勝手に決めないでくれる? 私は了承してないわ」
「裁判を行い、取り決められたことだ」
「なんでも裁判裁判、そんなに裁判が偉いわけ?」
「法に従っているからね」
「私こそが法よ。私の言うことが全てなの。他の法なんて知らないわ」
その言葉が落ちた瞬間、法廷の空気が一段冷えた。
この言葉に、次第に会場はざわりと声を鳴らした。
それすらも元義妹であるメアリーには理解できていないようだったわ……。
「量刑を重くしたほうが良さそうですな」
裁判長が低く言った。
「殺人未遂に加えて反省の色もない再犯の可能性極めて高く……精神を病んでいる」
「懲役十五年を言い渡す。服役中は精神科に入り、そこで服役してもらい、懲役が終わったら極めて厳しい修道院へ入れるということで、皆さんよろしいか?」
「牢のある厳しい修道院にしましょう」
「それがいい」
「私は悪くない! どうして皆、私を悪者にするの!?」
その後の詳細を、私は知ろうとしなかった。
ただ、二度と彼女と会うことはない――それだけで十分だった。
叫んでいたメアリーだけど、裁判官と裁判長が決めた刑は覆ることはなく、メアリーは引き摺られるようにしてその場を去ることになった……けれど。
「お義姉様! お金を出して! 私を自由にして! そしたら殺しに行くから!」
「誰が殺してほしくてお金を出しますか? 少しは考えなさい」
「いやよ! もう牢屋はいや!」
「さようなら、赤の他人の人。ナディアは君の姉でもなければ、ただの他人だよ。ただの他人を助ける程、俺達は優しくはない」
「いやああああ!!」
お母様とアルベルト様の追撃により、メアリーは叫び声を上げて去っていった……。
これでようやく……元家族ふたりの刑がしっかりとなされ、彼らと会うことは人生でもう無いのだと確信すると、ほっと力が抜けた気がする……。
元義妹の変わりようには驚いたけれど、あれが因果応報と言うやつなのだろうけど、哀れに見えて仕方なかった……。
私は息をするのを忘れて、ただ唇を噛んだ。
「これにて閉廷!」
その言葉に私達は頭を下げ、被害者家族用の部屋に入りほっと息を吐く。
――全てが終わった。
元家族と言う因縁が、全て断ち切られた。
それだけで、こんなにも力が抜けるほど、ほっとするなんて……。
よほど私の中で、あの元家族との生活は苦痛だったのね……。
「大丈夫か、ナディア」
「ええ、全てが終わったのだと思ったら気が抜けてしまって」
「そうね……。やっと、やっと全てが終わったわ」
もう生活を脅かされることもない、人格を否定されることもない。
それがこんなにもほっとするなんて……アルベルト様と結婚してから忘れていたけれど、随分と心の負担になっていたのね。
「ありがとう、アルベルト様……。私達親子はこれで……前を向いて生きていけるわ」
「ああ、ナディアは俺の隣で……」
「ええ、無論です」
アルベルト様に抱きしめられ、私は彼の胸に顔を埋めて安堵していると、お母様は嬉しげにしていて、私も微笑んでから……解放からか一筋の涙を流したのだった――。
その後のことを、私は詳しく知ることはなかった。
ただ、二度と彼女と会うことはない――それだけで十分だった。




