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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜  作者: 織子
第一章

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20/20

番外編ー晴れた春の日(後編)


「まだ着るの?」

ロワナは辟易して言った。


汚れたドレスを着替える為に、ドレスショップに入って小一時間経った。3着目だ。これ以上は着替えたくない。


「疲れましたか?」

「ええ。もう違うお店に行きたいわ」


ノクティスは淡々と言った。

「では先ほど試着したドレスは全て皇城へ送ってくれ。あとこれと、それと···」

「もういいから!行きましょう」


店ごと買いそうな勢いのノクティスを引っ張るように店を出た。

外に出ると、日が落ちかけている。

「夕焼けがよく見える場所に行きましょ!」


ロワナはノクティスの手を引いて街の高台へ向かった。


大通りが見渡せる、少し高い位置に面した広場だ。中央に噴水があり、水面も空も赤銅色に染まっている。


ロワナは夕焼けに染まる街を見ながら呟いた。

「綺麗ね。私の一番好きな色」


「何故一番好きなのですか?」


ノクティスの問いにロワナは首を傾げる。

(どうして分かりきった事を聞くのかしら?)


ノクティスの頭と、熱を帯びた赤銅色の瞳を見つめて、微笑みながら答えた。

「分かってるでしょう?」


ノクティスは額に手を当てて深く息を吐く。

「·····ふぅ。やめてください。キスしたくなります」


「えっ···」

ロワナは狼狽えたが、すぐに言い返した。

「すれば良いじゃない」

実際のところ、してほしい。


ノクティスは暗い瞳でロワナを見た。

「ご冗談を。姫も気付いているでしょう?皇太子殿下の部下が我々を見張っている事を」

と言いつつ、ノクティスは距離を詰めてくる。


ロワナはギラリと光る赤銅色の瞳から目を逸らさずに言った。

「ちょっとくらいなら、お兄様も多目に見てくれるんじゃないかしら」

「お叱りを受ける時は一緒に居てくださいよ」


もう鼻先が触れる距離だ。「いいわよ」と返事をしようとしたが、ノクティスが口を開いてロワナの口を塞いだので答えられなかった。


一度深くキスをすると、ノクティスが止まらない。苦しくて放すと、すぐに塞がれる。

(ちょっとって言ったのに)


二度、三度と口付けし、ロワナが涙目でノクティスを睨むとようやくノクティスは離れた。

にやりと口を歪ませて謝罪する。

「申し訳ありません。久しぶりでしたので、また加減が出来ず」


(本当に悪いと思ってるのかしら?)

ロワナは睨んだまま言った。

「もう少し優しくしてくれないと、お兄様に呼ばれた時に付いて行かないわよ?」


ノクティスは口に手を当ててわざとらしく崩れ落ちた。

「くっ···そんな可愛い事を言わないでください」


「ノクス!」

ロワナは恥ずかしくて憤慨した。


「ふふ。皇太子殿下の部下は今は近くに居ません」

言われてみれば、気配がなくなっている。


「殿下の部下には別の仕事を与えました」

「そんなこと出来るの?」


オーガストの部下まで動かす事が出来るとは。


「こうでもしないと、姫様に指一本触れられぬまま帰る事になりそうでしたから」

ノクティスは不穏な笑みを浮かべて言った。


(お兄様はノクスに弱みでも握られているのかしら····)

回帰後のオーガストは、どうもノクティスの掌で踊らされている節がある。


「――あっ」

ロワナは唐突に思い出した。


(あの少年。お兄様に似ているのだわ)


先ほど馬から助けてくれたあの子。髪色こそ違えど、瞳の色と、何より顔立ちが似ていた。


「どうしました?」

ノクティスの問いに、ロワナは若干興奮して答えた。

「先ほど馬から助けてくれた子ですが、お兄様に似ていたのです」


「え?」

ノクティスは眉を寄せた。


ノクティスの怪訝な顔に、思案していてロワナは気付かなかった。


オーガストはオッドアイも珍しいが、瞳の色も希少な色だった。


(お兄様以外で、金の瞳を初めて見たわ)


ふと前を向くと、怪訝な顔のままのノクティスがこちらを睨んでいる。鋭い視線ではないが、不機嫌である事は間違いない。


「ノクス?どうしたの」

ノクティスはまた距離を詰めて来た。ロワナは思わず一歩下がる。

「何故逃げるのです」

「だってノクスが怒ってるから···」

しかもなんだか眼が怖い。


後退りした靴の踵が壁に当たった。つまりもう下がれない。ノクティスは両手でロワナを壁に閉じ込め、口だけ微笑って言った。

「この状況で他の男の事を考えるなんて、度胸がおありですね?」


ヒヤリとした圧に押され、ロワナは謝った。

「ご、ごめんなさい」


素直に謝ったからか、ノクティスの圧が少し収まる。だがまだ解放してはくれないようだ。


「姫、目を閉じてくださいますか?」


ロワナは言われるがままぎゅっと目を閉じた。せっかくのデートだ。これ以上機嫌を損ねたくない。


ノクティスがロワナの左手を手に取った。

(手にキスしてくれるのかしら?)

期待して待っていると、そうではないようだ。ちょっと手がくすぐったい。するりと何かが嵌まる感覚がしてすぐに目を開けた。


「わぁ···」

左手の薬指に、深い赤銅色のルビーの指輪が輝いていた。


「婚約指輪をまだお渡ししていなかったので」


ノクティスの瞳の色と似ている。ロワナは薬指を握りしめた。

(嬉しい。ノクスの色)


「ありがとうノクス。大切にするわ」


ノクティスは優しく微笑んだ。この笑みも、回帰前には見れなかったものだ。蕩けるような柔らかな笑顔。




「そろそろ帰らねばなりませんね。皇城までお送りします」

「嬉しい。皇城に来るのも久しぶりじゃない?」

「ええ。そろそろ陛下と皇太子殿下に直訴しなければ。私を冷遇するせいで、まだチャンスがあるのではと良からぬ輩が増えてきているのです。看過できない」


皇帝とオーガストからの冷遇は、ロワナがなくしたのだが、言わないでおいた。


ノクティスとオーガストの打ち解けた掛け合いを見るのも、ロワナは好きだったからだ。


2人は同じ場所に乗り込み、夕焼けを見ながら皇城へ向かった。

 









番外編、お読みいただきありがとうございました。


兄の溺愛とノクティスの溺愛を書くのが楽しかったです。またお目にかかれると嬉しいです。


新キャラもこっそり登場させて、またコツコツ書き溜めていこうかなと考え中です。

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