番外編ー晴れた春の日《前編》
累計53万PV達成。たくさんの方に見ていただきありがとうございます。感謝の番外編を投稿します。
お久しぶりだと思うので、登場人物を簡単に。
ロワナ···アルカダイア帝国第二皇女。ノクティスと婚約中。
ノクティス···現ヴァルグレイス公爵。ロワナと婚約中。
オーガスト···皇太子。ロワナの兄
エリシャ···ロワナの専属侍女
「殿下、そろそろ着きますが、本当にお一人で行かれるのですか?」
エリシャは不満そうな声を漏らした。
納得してくれたと思っていたのだが、思い違いだったことにロワナは気付く。
「1人じゃないわよ。ノクティスがいるんだから。心配いらないわ」
「そうは言っても、閣下は騎士ではありませんし····」
エリシャの中ではノクティスは騎士職でもなく、護衛の経験もない。心配するのは無理もない。
「陛下もお許しくださったのだから、心配しないで」
ロワナの中では一番頼りになる護衛なのだが、説明することは出来なかった。
ロワナとノクティスが婚約を発表して2ヶ月。
ノクティスが公爵になって半年。
2人とも忙しく、思うように会えない中、溜まりに溜まった不満が爆発したロワナは皇帝に直訴した。
ロワナは知っていた。オーガストと皇帝が手を組み、ノクティスに大量の仕事を振っていたことを。
――1週間前――
「お兄様!」
ロワナは勢いよく皇太子の執務室のドアを開けた。
オーガストは驚いたものの、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「なんだ?ロワナ。今日も元気だな」
兄弟と父親がロワナの婚約に不満を持ち、その行き場のない想いをノクティスに向けている事は知っていたが、もう我慢ならない。
一月もだ。もう一月も婚約者に会えていない。
「お兄様、ノクティスに過剰に仕事を振るのはおやめになって!一昨日皇都に戻ってきたばかりなのに、もう西へ視察に行かせたそうじゃないの!」
オーガストは狼狽えた。
「いや、他意はないぞ。あいつは仕事が出来るからな。つい多くの事を求めてしまうんだ」
ロワナは更に詰め寄った。
「そうかもしれないけど、それだけじゃないでしょう?お父様も白状したのですからね!私に会わせる回数を減らすために、わざわざ遠くの仕事を頼んだって!」
「なにっ陛下もそうだったのか」
オーガストは素直に驚いた。
「私と陛下の両方からこの待遇を受けていたのならば、それはそれは忙しかっただろうなぁ」
そして他人事のように言った。
自身の行いに全く反省していないオーガストに、ロワナは最終兵器【出ていきます】を使うことにした。
「お兄様とお父様がそのようにノクティスに当たるのならば、私にも考えがあります」
「·······」
オーガストはごくりと喉を鳴らした。
「な、何だ?」
「このままでは婚約者に会えないので、婚約期間ではありますが···ヴァルグレイスで暮らすことになりそうです。そうすればノクティスがいくら忙しくても、会えますからね」
オーガストは青ざめた。
「····ロワナ。お兄様が間違っていたようだ。ノクティスには西から戻り次第休暇を取らせよう」
「そうしてください」
「だから、ヴァルグレイスには行かないよな?」
「それだけでは会えなかった一月は取り戻せませんね」
冷たく言うと、オーガストは懇願した。
「どうすればいい?さすがにそれは、私も陛下も泣いてしまうぞ」
オーガストの声が弱々しい。少しスッキリしたロワナはここまでにしておこうと思ったが、良い案を思い付いてしまった。
「では、お兄様。私はしたいことがあるのですが、一緒に陛下にお願いしてください」
「···内容によるな」
「お兄様?」
「いいだろう」
そうして願い出たノクティスと二人でのお出掛け。皇帝も、オーガストも渋々許可をした。
ノクティスの剣術や体術の実力を知っていることと、これ以上ロワナの機嫌を損ねたくないという思惑もあるだろう。
何にしても、本日。――晴れた春の日、ロワナとノクティスのデートが決行されたのである。
皇都の中心地で馬車は止まった。窓から見ると、仕立屋や宝石店が軒を連ねる華やかな通りだ。
馬車の扉が開き、赤銅色の頭が覗いた。柔らかく微笑む赤銅色の瞳と目が合うと、ロワナは満面の笑みでノクティスの胸に飛び込んだ。




