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漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。  作者: サイリウム


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4/31

4:変化


「あー、マジでどうする……。」



時刻は深夜近く。ようやく一息付けた私は、自室にて書庫から持ち出した本を眺めていた。


あれからちょうど2週間、私の『好感度が解るサポートキャラ作戦』は思いっきり失敗に陥っている。一時期主人公と接点を持つ前に人混みに呑まれて死ぬんじゃね? と思うほどの人数に囲まれていたのだが……。お隣の松原さんやおそらく主人公の親友ポジである夏さんのおかげで、最近はある程度の余裕が出て来た。


実際、一番人が多かった時もかなり助けてもらっており、松原さんが『すいません先輩がた、あっしの席がそこでして。座れませんのでご配慮の程を……!』と何故か三下口調でゴマすりしながら威嚇し、夏さんが『山本さんの占いはあたくしが丸一日お願いしているんですのよ! 皆様方! お散りになって!』と何故かお嬢様口調で教室の外へ。


お陰様で私は安寧を取り戻し、主人公の観察作業に移ることができたのだった。



(もちろん二人にはお礼に何か占ってあげたり、一緒にご飯食べるようになったりした。特に松原さんは席が隣と言うこともあって、仲がいい方、って言えるだろう。夏さんの方は普通の友達ではなく、主人公との接点を増やすために起点として接し始めたっていう理由があるけど……、『孫に友達出来るかな?』と不安だったであろう祖父母を安心させる“数”に入れて問題ないはず。)



まぁそんなおかげで、クラスの中でも私のキャラクターはほぼ固まってきている。


戸籍上はただの高校生と言えど、巫女の恰好をしている以上私は『巫女』だ。祖父母の神社の名を背負っていることに他ならないので、一切の気が抜けない。というわけで毎日イメージを崩さぬように頑張っていたおかげか……。真面目な巫女さんみたいな感じに落ち着いている。隠すべき『目』のことも露見していないし、学生生活としては何の問題もない。


それで先ほど言っていた多忙を極めた占いの方も、松原さんと夏さんが奔走してくださったそうで、予約制という形に収まっていた。放課後に、私が希望した『剣道場近くのベンチ』で大体剣道部の練習が終わるまで行われるというもの。夏休み前まで予約が埋まるという謎の状態にはなっているが、おかげさまで私も休み時間を謳歌できるようになった。


お陰様で何とか休み時間を確保し、主人公と接触できたのは良かっただろう。けれど……



『あぁそうだ塚本さん。よろしければ何か占いましょうか? よくこちらの方を見ていらっしゃいますし、お気になるのでしたら……。』


『ジュリジュリ、してもらえば~?』


『あ、ううん! 私は大丈夫だから!』



とまぁこんな感じで避けられてしまうのだ。


交友関係自体は夏さんを通じて問題なく構築できているし、会話も挨拶程度だけども毎日してる。そしてあの時言ったように、私が占いしているところをちらちら見たりしているんだけど……。あちらから希望して来るどころか、こっちから声をかけたとしても断られてしまう。というか少し避けられている気までしている。


占いという一歩間違えれば胡散臭さを纏ってしまう事柄を扱っているのだ、そう思われないように普段以上に気合を入れまくって理想の巫女演じてるのに……。



(もしあの先輩? と簡単にくっついちゃったら漫画的に面白くないだろうから、占いで出た内容をちょっと弄って伝えて主人公ちゃんの周辺に波乱が起きる方へと傾けようと思っただけなのになぁ。)



ほらだって、恋愛系の漫画ってくっつくかくっつかないかをじっくり描写するんでしょ?


即断即決速攻カップル成立したら面白味半減しちゃうじゃん。いやそのカップル成立後をメインに描く予定ならいいんだけどさ? カラーページが欲しい私としましては人気が得れそうな方が好ましいんですよ。ちょうど剣道部の観察を通じて『主人公に視線を送ってる同級生の男子』の存在は把握できたわけだし……。


けれどそんなことを考えても、主人公との関係が微妙なのはあまりよろしくない。


イベントを見逃さないように、教室ではバレないようにずっと観察してるし、放課後はわざわざ剣道場の近くで陣取って占い師ながらではあるが、観察している。けれどずっと一緒にいるわけではないので、何か見逃す可能性が高いのだ。



(かといって、それこそずっとあの子にべったり、ともいかないんだよなぁ。)



何度も言うが、私の今の身分は『巫女』。まだ見習いではあるが、れっきとした神社に所属する正真正銘の巫女だ。


高校生という身柄ではあるが、祖父母から任される仕事や、巫女としての修行もこなさなければならない。色を見たいのは確かだが、これまでお世話になりまくっている祖父母の信頼や思いを裏切る様な事は出来ない。だから任された仕事はきっちりやるんだけど……。占いの一件で私に“その筋”の才能があったことを婆ちゃんが理解しちゃったみたいでね? なんかオカルトチックな修行が始まり出してるんですよ。


この前だって、金曜の放課後から月曜の朝までずっと滝行させられたし……。


祖父母に保護してもらった手前、後継者として求められるのならばその全てを受ける覚悟は出来てるんだけど、連日乙女が滝に打たれるってヤバくないですか? いや耐えれた上に風邪すらひかなかった私も大概なんですけども。


一人だけ世界観違くない? 他の修行も色々ヤバいのばっかだし、結構辛いし、しんどい。



「はぁ……。まぁ今日の修行はないし、夜ぐらいゆっくりしたいんだけど。花の女子高生が持つ唯一の娯楽がご先祖様の日記を見る、ってのはアレだなぁ。」



そんなことを口にしながら、この白黒の世界で手元の紙をめくって行く。


今見ているのは以前も言った、書庫に納められている過去の神主たちの日誌になる。この神社に来てから真っ先に叩き込まれた古文の知識、というか神社で保管している蔵書を読めるように古語を教えてもらったおかげで、大体のものは読むことが出来る。


んで私の一族はかなり真面目に記録を付けていたようで……。ほぼすべての神主が事細かに当時の情景を書き残してくれているのだ。まぁ今私が見ている6代前の納豆狂いの人は、ただの料理本になってるけども。


これ結構面白いのよね、単にレシピ載せてるんじゃなくて味も詳しく書いてくれてるから下手なグルメ小説よりも面白かったりする。それにたまに自分で作って食べるっていう楽しみ方も出来るし。



(でも、女子高生がすることではないんだよな、……今度爺ちゃんにお金貰って近場の喫茶店でも行ってみるか?)



主人公との関係が微妙なのは、非常によろしくない。だってこのままじゃ真面に色を見れなくなりそうだし。


その対策として考えられそうなのは、やはり『みんなでスイーツ食べに行こうぜ!』作戦である。彼女の親友である夏さんを巻き込めば付いてきてくれるだろうし、甘味を通して交友関係の再構築を狙う……。うむうむ、我ながら素晴らしい作戦ではないか!


そうと決まれば明日の朝にでも、爺ちゃんに小遣いでもせびるとしよう。神主としては結構厳しい人だけど、巫女じゃなくて孫として接せばあの人滅茶苦茶甘いからな……。流石に貰い過ぎたら悪いし婆ちゃんにも怒られるからしないけど、500円くらいあれば何か食べれるやろ。



「あ、でも。最近物価高だし、それじゃ足りない……。おん?」



もうちょっとせびった方がいいかなぁ、なんて考えながら手元のページをめくると……。納豆狂いの日誌の内容が、急に変化する。そういえばコレ料理本じゃなくて神社の日誌っていう扱いだったなと思いながら詳しく読み込んでみれば……。



「なんか能力バトルしてないか、こいつ。」



気が付いたら護符みたいなのいっぱい出して怪異と戦った日記になってるぞコレ?


どうした納豆狂いのご先祖。あなたこれまで納豆のことしか書いてなかったじゃないですか。納豆を油で揚げてみたら上手かったけど油使い過ぎて奥様に怒られたとか、自分で納豆作りまくってる時に麹作ってる所に祈祷しに行ったらそこの麹が全滅して全額賠償する羽目になったとかしか書いてなかったじゃないですか。


……ん? いやこのついでに書かれてる“護符”のレシピって。



「式神を宿らせれば、ある程度の自立稼働する上に視界の共有も出来るのか?」



描写見る限り、そこから戦闘に持って行くのがメインっぽいけど……。そういう監視目的の運用も出来るみたい。


いやめっちゃ便利じゃん。主人公めっちゃ観察できるじゃん。



「えーっと、霊力込めた和紙を人型に切り取って印を入れる? ……あー、この印知らない奴だ。文字的に多分鼠とかの霊? を入れるんだろうけど……。あー、うん。これ無知なまま一人でやったらダメな奴だなこりゃ。何起きるか解らん。」


「だねぇ。あたりだよ、さくら。」


「…………いつの間に婆ちゃん横にいるの?」



私しかいないはずのこの部屋から祖母の声。


横に視線を向けてみれば、何故かそこには座布団の上に腰を下ろしながら茶を啜る彼女の姿が。


あ、あのえっと。さっきまで気配全くしなかったんですが……。え、なに? 前々から気配薄い人だと思ってたけどどうやって!? いやそもそも“式神”って何!? すっごい便利そうで受け入れそうになったのに、何だコレは!? 明らかにバトルな感じの要素じゃないですか!!!


おい作者ァ! いつの間に路線変更したッ! 読者離れるぞ馬鹿! 剣道部での主人公たちのやり取り見る限り、恋愛で行くんだろお前ッ! ならそれを貫き通せッ! こっちで修正するにも限度があるんだぞ馬鹿ッ!!!



「ほんとは来年に教えようかと思ってたんだけどねぇ。自分で見つけちゃうなんて、さくらはとっても凄いねぇ。」


「あ、うす。」


「せっかくだ、簡単なの教えてあげるから、ちょっとやってみるかい? 慣れればた~くさん動かせるようになるよぉ。」


「……もしかして今から修行って感じ?」


「感じだねぇ。」


「……もしかして厳しくて辛い奴?」


「大変かもねぇ。」



こ、これまでの辛めな修行が全部『まぁこれぐらいさくらなら出来るよねぇ。簡単簡単』だったのに、今日は『大変』? “簡単”でかなりクソ辛かったのに?


きょ、拒否権とかは……。あ、ない。



スゥゥゥ……



が、がんばりまっす。




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