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漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。  作者: サイリウム


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32:詐術




「と言っても私もまだ若輩、どこから説明すれば解りやすいものか……」



そう言いながら頬に手を当てるさくら。その表情は2人がよく教室で見る『山本さくら』と全く同じものではあったが……。先程までの出来事。正確に言うならば気絶する直前の記憶が、その判別を鈍らせてしまう。


何せ、樹里とみかんからすれば巨大な怪獣のような化け物が目の前でうむうむと唸っているようなものである。確かに既に『隠蔽』によって霊力は一切感じられず、その表情も柔らかいものへと変化しているし、怪異のような化け物ではないため言語によるコミュニケーションが可能な存在ではあるのだが……。冷静でいられるわけがない。


何せ少し気分を損ねただけでも簡単に消し飛ばれそうな存在が手を伸ばせば届くような場所にいるのだ。正気を保っていられるだけで奇跡であった。



(山本さんで……、いいいんだよね?)


(たぶん。さくらっちで間違いないと思うんだけど……。こ、こんなに強かったんだなぁ。)


(だ、だねぇ。)



小声でそう話しながらも、『さっき襲撃者と見間違えた』と言っていた彼女のことを思い出す二人。


さくらからすれば咄嗟の誤魔化しでしかないが、樹里とみかんからすれば彼女の言葉以外の情報がない。自然とその言葉を信じてしまうことになるのだが……。もし“勘違い”されたままだったらどうなるのか。その可能性に至ってしまい、気絶する前に感じていたあの覇気が自分たちにより強く襲い掛かって来ることを考えると……。


もう絶望でしかない。


これ以上このことを考えても絶対に幸せになれない。精神を正常に保つため大きく身震いしながらその思考を急いで廃棄した二人は、とりあえず姿勢を正しながらさくらの次の言葉を待ち始める。


するとちょうど考えがまとまったのだろう。既に人間の枠を飛び越えていそうなバケモノが、口を開く。



「まずですが、私達のような霊力を扱う存在を『霊能力者』と呼びます。細かい分類や地方による独自の呼び方など色々ありますが、大体こう言えば伝わる感じです。確かに珍しい存在ではありますが、国内で大体10万人ほど。その能力差はまちまちですが、1000人に1人ぐらいはいる感じですね。」


「10万!?」


「お、思ったよりいっぱいいる……。」


「ちなみに、ある意味“資格職”なので無許可での活動は御法度ですね。お二人ともおめでとうございます、立派な犯罪者ですよ?」



「「…………え」」



思わず顔を見合わせる二人。


こんな状況で眼前のさくらが嘘を言うようには思えない。つまり樹里もみかんも、思いっきり法を犯してしまっている。一瞬何か誤魔化そうと考えた彼女達だったが、この神社にいる時点で逃げ場など無し。様々なことが走馬灯のように脳内で流れ始め……。若干涙目になりながら両手を自ら差し出してしまう。


その様子はさながら、手錠をかけてもらう時のアレであった。



「んぐぅふッ! ……し、失礼。ちょ、ちょっと虐め過ぎましたね。ご安心ください、捕まりはしませんよ? こと『怪異』関連となりますと国も警察もそう大きく動けませんから。いくらでも見逃すことが出来ますので。」


「そ、そう……、なの?」


「えぇえぇ。ささ、ここから少々長くなりますので、楽に聞いてくださいね? 手も仕舞って頂いて結構です。」



こみ上げる笑いを無理矢理抑えようとして変な音を出したさくらであったが、その後に続く言葉は非常に優しいもの。わざわざ懐から式神を取り出し座布団などを用意させた彼女は、『お茶菓子もお出ししましょうね』と付け足しながらも“細かい説明”を続けていく。


その内容だが、さくらからすれば『かなり部分的』なものなれど、怪異関連についてほとんど情報を持っていなかった樹里やみかんからすれば値千金。最初は酷く緊張していた彼女達だが、人型の紙人形。式神と呼ばれたソレが運んできた茶や菓子を勧められるがままに口にすることでゆっくりとだが平静さを取り戻していく。


茶の温度が少し落ち甘味の味を舌が理解できるようになった頃。いつも通りの様相を取り戻した二人は、少しずつそれをかみ砕いて行った。



「え、えっと。まず敵は『怪異』とそこから進化した『妖怪』がいて。」


「知る人が多ければ多いほど強く成ってしまうから、明かせないし隠さなきゃいけない。」


「だから国とかが大々的に動けない。だから地方の有力者が色んな事を取りまとめてる。……であってる、さくらっち?」


「えぇ。さきほど10万人と言いましたが、真面に戦えるのは1万ほどですからね。かなり小さな世界故、昔ながらの協力体制を敷いている形になります。基本的に関東一円はこの『往霊大社』が担当しますので、これまでのお二人の戦いもこちらで『以前から登録してあった』という風にすれば問題ありません。この町でしか戦闘を行っていないようですし、ね?」


「「よ、よかったぁ……。」」



茶を啜りながらそう答えるさくらと、抱き合いながらその安堵を分かち合う二人。


未だ高校生という未成年ながら犯罪者になるところだったのだ。『誤魔化しちゃっていいのか』という考えこそあれど、警察のお世話にならなくて済む。完全にその心配の靄が腫れたわけではなかったが、一番の懸念が問題なくなったのだ。


ようやく心から一息つける彼女達であったが……。だからこそ思考が回り始め、幾つかの疑問が沸いてくる。



「え。も、もしかしてだけど山本さんって……、わ、私達のこと。知ってた……、の?」


「勿論。この町の管理者ですから監視してましたよ? お知り合いですし、単に怪異を滅していただけです。ウチは積極的に取り締まる様な神社ではないので、危険性なしとして放置していましたね。」


「じゃ、じゃあ何で昨日……!」


「後片付けです。」


「……え?」


「後片付けです。」



自分たちのことを前々から知っていたのなら、何故昨日助けに来てくれなかったのか。『弓鳥』との戦闘のことを問い詰めようとした彼女達であったが……。その言葉によって封殺され、顔を見てみれば数えきれないほどの青筋が浮いている。



「私もね、暇じゃないんですよ。この町以外にも“見なきゃいけないこと”はたくさんありますし、普段の神社の仕事もあるんです。ご存じですか? 『怪異』が実在するなら『神』もいるんですよ。ウチはどちらかと言うと祟り神ですから疎かにすると非常に不味いんですよ。そこに他のヘルプ、そもそも戦えるものが少ないせいで他地域の面倒も見なきゃならないんです。いくら式神でマンパワーを増やせると言っても限りがあるんです。どれだけ大変か解ります?」


「「あ、あの、えっと。」」


「そもそもの話ですが……。何故、貴女たちが戦った後の町が元通りに成っていたのか、知っていますか? 知らないですよね? そうです私が直してるんですよ。壊れた家も道も電柱も全部一人で元通りにしてるんですよ。放置していれば『怪異』の存在がバレてしまうから夜が明ける前に“誰かさんが放置した”後を必死に直してるんですよ。周辺住民が偶々見ちゃった可能性もあるので一人一人検査して、当てはまってたら記憶を消さなければならないんです。どれだけの作業が必要になるのか……、本当に解ります???」


「「大変申し訳ございませんでした。」」



そう言われてしまえば、もう頭を下げるしかない。


何せ二人とも『なんか次の朝には全部元に戻ってる』ということで若干軽視していた所があったのだ。無論町の破壊を最低限に抑えようとする努力はしていたのだが、何か全部元通りになると考えてしまっていればその意識も少し薄らいでしまうもの。


思い返せば昨日の戦闘でも町にかなりに被害を出してしまっていたし……、それを全部一人で治していたのであれば、もう謝る以外の選択肢はない。



「……ふぅ、失礼。少々感情的に成り過ぎたようでこちらこそ申し訳ありませんでした。これもお役目ですので、気にしていませんとも、本当に。まぁ出来れば町を壊さずに戦って頂きたいものですが。」


「「が、ガンバリマス……。」」


「まぁこちらも、本来自身が担当すべきお仕事を変わって頂いたようなもの。その点には感謝しておりますし、昨日別件が重なり町を外していたからこそ救援に向かえなかったのは謝罪いたします。……して、話は戻りますが本日は何用で当神社に? 霊能力者としてより“高み”に登りたいのであれば、お友達ですし“無償”で引き受けさせて頂きますよ?」





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