26:新入
……よし、視線がズレた。
ここから先は『漫画に描写されない場面』なので……。
「後片付けの時間だぁぁぁ!!!!!」
「ぇ」
「わぁ」
「……これ、反応しなくちゃいけない奴?」
「どうすれば……」
なんか小声で喋ってる怪異五人衆の方へ視線をちらり。
そのあと両手の人差し指でクイクイ。
ではもう一度。
「後片付けの時間だぁぁぁ!!!!!」
「「「「「う、うぉぉぉおおおおお!!!!!!」」」」」
うむ、良いシャウト。
はい、ということで後片付けの時間です。
時間軸としましては怪異五人衆の脳ミソを弄り洗脳し終わって、『黒幕』っぽいムーブを決めた後。
まぁ色々言いたいことはあるんですけどね? もうそろそろ夜が明けるんですよ。一般人がそろそろ活動し始めちゃう時間なんですよ。でもね? こいつらが暴れる前に察知できたから『防音&防振』とかの結界は貼れていたんだけど……、戦闘跡とか思いっきり残ってるんですよ。急いで後始末しないと確実に衆目に晒されちゃうのでマジで速くお掃除しないといけないんですよ。
ご存じの通り、怪異という存在は『人によって認知される』ことでその種族全体の能力を高めてしまうもの。
つまり私達霊能力者、というか現地の守護者は何があってもその痕跡を残しちゃいけないのだけれど……。え~、主人公組の二人、樹里ちゃんもみかんちゃんもそんなこと知りません。彼女達も意識はしてただろうけど、明らかな格上を相手してる時に周囲の状況を気にかけて戦う事なんて出来ないので……。
「もう少し何とかならなかったの、『弓鳥』。道路とか抉れちゃってるじゃん。」
「ぇ、ぁ。も、申し訳ございませんッ!!!」
「あ、ちなこの話し方が“素”だから覚えておいてよね。たまにさっきのに戻すけど動揺しないこと。」
そう言いながら、懐に入れてあった修復用の式神たちをリリース。
既に撤退したのであろう樹里ちゃんとみかんちゃんが居た場所に急行させ、複数の視界を共有しながら町の後始末を始めていく。
ほら怪異五人衆の処理する時に使った“菌類の式神”が居たでしょう? 無限増殖できるようになったから、人手がぐっと増えて大分やり易くなったんだよね。細かい作業はこっちで直接指示を出さなきゃいけないけど、さっき使った『戦闘用』とは違う『修復用』に調整した奴だからね。ある程度は自力で何とかしてくれるってもんです。
記憶処理する人も今回はいないし……。“こっち”は軽く気に掛けるだけでいいかな。
(……にしても、よくこんなもの作ったな。)
そう考えながら、眼前に跪く彼らに視線を向ける。
さっきの私の話し方について、それを命令と受け取ったのだろう。そろって綺麗な返事を返してくれる怪異五人衆たち。洗脳と言うか、怪異の脳に当たる部分を書き換えた感じだからもう『改造』でもう二度と元には戻らない感じなんだけど……。触ったからこそ分かる、無駄に高い技術力。
努力するベクトル間違えてないか? とは思わないでもないが、この怪異たちの製作者はかなりの腕を持っているのだろう。
急に変化した私の話し方に対する対応力、個々の細かな性格の違い、恐怖以外にも幾つか備わっているのであろう感情の発露。そのほか幾つの要因から、こいつら怪異五人衆は妖怪というよりも人に近い要素を持つことが見て取れる。いや確かに妖怪のなりそこないではあるのだが、怪異と人間を混ぜ混ぜして妖怪として生み出そうとしたというべきか……。まぁなんか人っぽいのだ。
単なる戦闘能力だけを求めるのであれば“不必要”な機能もあるっぽいし……。何がしたいんだろうね、笹沼は。
(何となく察せるところはあるけど、今それを考えることではない。……問題はこいつらをどう使うか、だよね。)
元はといえば私が一時の感情というか、このクソ雑魚どもが『私を攫う』とかいう嘗め腐った行動をとったが故なんだけど……。作者としてはそれが気に入らなかったらしい。気が付けばこいつらを配下に入れることになってたし、改造することになってた。
なんだろ、大体6割ぐらい作者の意図って感じ?
それに反抗しようとした私の動きと、作者がこの世界の物語を紡ぐ力がぶつかり合った結果、あぁ成ったというか……。まぁおそらくどちらにとっても意図しない結果に転がってしまったのが、現状だ。
(ほん、とぉに! 言いたいことは色々あるんだけど……! カラーページのため。それを得るために必要な読者様たちからの人気の為には、飲み込まなくちゃいけない。作者がしたいことも何となくわかったから、ね?)
アイツがしたいのは、目の前にいるこの中ボスたちと樹里たちを戦わせて、いい感じに成長させたいってことなのだろう。そしてそれが終われば満を持して笹沼先輩が登場するって感じだ。
けどまぁ私があんなことしてしまった手前、作者の思う通りに全てが上手くいくことはないだろう。出来るだけこっちも上手く軌道修正するつもりではあるのだが……。
「うん、もう改造しちゃってるから返せないんだよね。あと守護者としても不審者に武器を与えるのは……、うん……」
「あ、主様?」
リーダー格の熊がこちらを伺って来るのを手で制しながら、更に考えを纏めていく。
一応こっちがまだ『発見していない』状態であれば見逃してあげることも十二分に出来たのだが……、見つけちゃった手前、対処しないわけにはいかない。
そもそもというか、まだ完全に把握できてはいないんだけど……。多分この町には、爺ちゃんか婆ちゃんかのどちらか、もしくはその両方がが監視網を張っていることが確定している。
以前私がみかんちゃんに霊具を与えた時にすぐに発覚したのがその理由だ。結構ガチで『隠蔽』とかしていたのにバレてたってことだから……。多分今何してるのかも大体バレてると考えた方がいい。
最近なんか私に滅茶苦茶甘いし、以前の情報から収集しているのは視覚情報のみ。ある程度こっちのプライバシーとかには配慮して貰えているようだが、私の今の立ち位置である『この街を守る守護者代理』という立ち位置から大幅に逸脱する行為は出来ない。
つまり見つけちゃった時点で対処確定で、排除は作者がキレるから押収一択。
「……よし、決めた。“怪異五人衆”?」
「「「「「はッ!」」」」」
「今日からお前たちの名は“式神五人衆”ね? 対外的には“怪異五人衆”って名乗らせるけど、私の前では式神として振舞う様に。あ、それと全員一歩前に出てきて?」
そう言いながら、取り出すのは何も書かれていない札。
そこにちょっと霊力を流し込みながら文字を刻みまして……、全員の額にシュート。各々に2枚の御札を重ねて張り付けてやる。
最初に張ったのが能力とか霊力の安定化とかそういうの。んで2枚目が私の式神であるっていうのの証明だ。普段は見えないように設定しているが、本人の意思で表に出せるようにしてある。これでウチの神社の敷地内に入っても即殺されることはないし、他の霊能力者。正式に認可受けてるような奴らから狙われるようなこともなくなる。
そ! 作者が“生かしておいて”って言うなら……、扱き使ってやりませんとねぇ?
「こ、これは……!」
「れ、霊力が大幅に上がっています!」
「新しい、力!」
「こ、こりゃすげぇ」
「……歓喜」
「はい煩いから黙れー。とりあえず全員適宜仕事与えていくから、頑張るように。んで最初のお仕事なんだけど……。」
見渡すのは、この部屋。
おそらく笹沼先輩の研究室的なところなのだろうが……。危険物だから全部しまっちゃおうねぇ!
「この部屋にあるもの、全部ウチに運ぶから。日が上るまでにやっちゃって。私は他にやることあるから、お願いね?」
「「「「「畏まりました!!!」」」」」
さぁ~って、次は樹里ちゃんとみかんちゃんのとこに行きませんとねぇ。
黒幕っぽく描かれちゃって業腹ものだけど、暗躍しないと色々ぶっ壊れそうですから。仕方ないね!




