20:黒水
「でさ~、もうジュリジュリの反応が奥手で奥手で! どうせ休みなんだからもう京都まで追いかけちゃえよ! ってもう喉のここら辺まで出てたのよ!」
「うむむ、それはもうままならないモノですなみかん殿。」
「マジそうなの! でもあの子『用あるからいけない』って! それぐらいなら私一人で頑張れるって言ってるのに聞かないんだよなぁこれが! こう、モヤモヤしてる方が集中できないってのに!」
「確かに~。ところで『用』ってなに? 二人で何かしてるの?」
「あっ! え、えっと~~~」
その日の放課後。女子高生は女子高生らしく近場のファミレスにお邪魔し、駄弁っているわけなのですが……。
うん、早速みかんちゃんが『正体バレ』しそうに成ってますね、うん。
私一人なら聞き流すこともできたものの、今日はまつっちも『塾ないからついてって良い?』ということで合流。部活のため来られない樹里ちゃんを除いた3人でここに来たせいか、普通に危うい状態になっちゃってます。
みかんさんは知らなくてもおかしくありませんが、ご存じの通り怪異という種族はその存在を認知している人の数が多ければ多いほど強くなります。漫画的にも色々早いですし、ここは助け舟を出してあげた方がいいですね。
「すいません松原さん、ちょっといいですか?」
「あ、うん。大丈夫……、って何その量!?!?!?」
「食べ放題と聞いていたものですから、少し取り過ぎてしまって。運ぶのを手伝ってもらっても?」
私の手元にあるのは、白と黒で構成された味気ない食べ物たち。
正直この場でここまで食べる気はなかったんだけど、まつっちこと松原さんの思考を吹き飛ばすには強い衝撃しかない。ということでサラダーバーに置いてあった野菜類やら麺類やらを丸ごと自身の皿に乗せ、運搬中という寸法だ。別にコレぐらい一人で運べるんだけど、手伝ってもらった方がインパクト残るからね。お山の輸送依頼ってわけです。
……にしても、単行本出せたっていうのに作者の画力は成長しないもんだなぁ、ほんと。
週刊か月刊かは解らないが、本が出せたということはそれなりの話数を書いて連載したということは間違いない。けれど私の手元にあるのは、『ギリギリ何の料理か解る』程度の食事達。もう慣れたものだし、味と匂いも解るから我慢は出来るんだけど……。もうちょっと頑張ってくれませんかね、ほんと。
(そっちの時代とか連載形態は解んないけどさ、もし令和だったら3Ⅾモデルとか色々便利な機材あるじゃん。そういうの使ってくれないものですかね……。)
そんなことを考えながら、まつっちこと松原さんに運ぶのを手伝ってもらう。
みかんちゃんはもう知っていることなのだが、松原さんの前で自身の食事量を見せるのは始めてだ。一瞬だけガチで理解できないものを見る様な視線を向けて来たが……、すぐにその色が『心配』に移る。私が取り過ぎちゃって食べれなくなった場合どうしよう、という感じのものだろうが、心配ご無用。
「や、山本さん? そ、それ食べ切れ……」
「もう頂きましたよ?」
「え、そんなわけ……。は!? まだ席ついて数秒だよッ!?!?!?」
「ふ、ふふふ。まつっちもようやくこちら側に来ましたな。さくらっちのハイパー食欲を知る世界に……!」
「まぁ“詰め込むこと”は巫女の必須技能ですからねぇ。お腹が空いてなくても飲み込まないと死ぬのですよ。」
「……なんか闇深発言してません?」
話題を切り替えられると考え、ふざけ始めるみかんちゃん。
その顔色に安堵の色が出ていることからも、これ幸いと飛び込んできたのだろう。無駄に監視して普段の彼女を知る私からすると少々おふざけのキレが弱い気がするが、肝心の松原さんは私の食事スピードとその発言に気を取られているので問題はない。
ま、私も私で彼女の活動を『知らない』ことになっているので、偶々何とか切り抜けた感じを演出したが……、そう何度も出来ることではないんだよね。それとなく助けるのにも限界があるので気を付けてよ、本当に。
「わ、私の巫女さんへのイメージ崩れそう……。」
「確かに本職にするのはお止めするでしょうね、大変なことも多いですし。あ、でもバイトだけでしたら楽しい所だけ体験できますよ? どうです松原さん?」
「か、かんがえとく。」
「えぇ、そうしてくださいませ。それにしても……、剣道部の先輩さんでしたか? 塚本さんの想い人の。」
そう言いながら、話を『恋愛』の方に戻していく。
既に朝の監視、この世界の主人公である『塚本樹里』が朝練を行う剣道場にて監視役の式神が情報を送って来てくれたので何があったのかは知っているのだが……。
「そうそう! 剣道部ね? GW中はほぼずっと練習な予定だったみたいなんだけど、肝心の笹沼先輩が家の用事かなんかで京都に行かなくちゃいけないんだって! しかも五月の中旬まで帰ってこないらしいのよ!」
「それはそれは、大層長い長期休暇ですね。」
「だねー、ちょっとズルいかも。」
「解る。まぁ実際はお休みじゃないみたいなんだけどさ~。」
みかんちゃんが樹里ちゃんから聞き出した情報、そして私が式神から盗聴及び盗撮した情報を纏めると……。
実はウチの剣道部はかなり強い方で。定期的に対外試合をするようなのですが、なんと今年のGWは京都に行く予定だったみたいなんですね? ですがまぁ“何故か”引率するはずの顧問の先生、さらに受け入れる側の高校の顧問も急病でぶっ倒れちゃったそうで、急遽中止になっちゃったそうなのです。
ですが“何故か”あちらさん。京都の受け入れる側の生徒たちが文句を言ったようでしたね? 『せめてそっちの主将である笹沼と試合させろ』と非常に煩く、仕方なく御実家が京都にあるらしい笹沼先輩が『帰省』という形で向かうことに決まったそうです。
(あ、“何故か”以外の所のツッコミはやめてくださいね? ここ漫画の世界ですから現実とはちょっと違うんです。)
んで帰省することになった笹沼先輩ですが……。まぁ色々御実家の問題を抱えているらしく。家に帰ることが決まった瞬間にドカドカと勝手に予定を入れられたそうでして。結局彼はGWを含んだ約半月ほどあちらに滞在するはめに。
彼としても非常に不本意らしく、少々憂鬱な顔をしていたそうですね。
「ま、あの人って結構良い所の子らしいしね。色々あるんでしょ。私としてはさっさとそんな人をジュリジュリに射止めて貰いたいんだけど……。」
「恋心は難しいのでしょう。」
「でもみかんちゃんの気持ちも解るかも。樹里ちゃん先輩の話する時、明らかに恋する乙女になってるもんね。小学生の時からずっとそんな感じだったんでしょ? そりゃ『ウジウジしてないでさっさとアタックしろッ!』ってなるよ!」
あぁそうそう。
ちなみに先ほどちょっと式神で調査したところ、ウチの高校で引率予定だった顧問は怪異が貼り付いておりました。どうせ祓ってもまた貼り付けられるのは目に見えているので放置していますが、十中八九笹沼先輩の仕業でしょうね。
(いやだってどう考えても『笹沼』にとって都合よすぎじゃん。)
作者が何を考えているのかは知らないが、確実にこのタイミングで笹沼という存在をこの地から離したいのだな、というのは理解できる。
この不在期間の間、本当に笹沼が京都に行くのかどうかは知らないが、どちらにせよ『読者様に開示される情報』の中では、笹沼にアリバイが出来るわけだ。この間に奴は色々と暗躍できるだろうし、此方の想定が正しければ『怪異』をこの地に持ち込みまくることが出来るだろう。
まだ完全な証拠が出そろっていない以上、笹沼以外の誰かが黒幕な事も考えておきたいところだが……。
(ま、コイツのせいで私の仕事が増えるってことは確実だな。……うん! コイツの『物語上』の出番が全部終わったら生け捕りにしてサンドバックにしよ!)
この前私に嘗めたことしやがったし、作者も出汁を降り終わった煮干しなんていらないだろう。そんなゴミを私が貰っても誰も困らないだろうし、ちょっとだけストレス発散に付き合ってもらうことにしよう。“味がしなくなる”まで時間がかかるだろうし、サンドバックにするのは当分後に成りそうだけど……。
十分楽しんだ後にキレイに漂泊して、樹里ちゃんにでも上げればみんな幸せ! うんうん! いい計画だよね!
(そのためにも、もうちょっと情報は必要かな?)
彼がこの空白期間に何をするのかは解らないが、京都に行くにしても、町の外から怪異を連れてくるにしても、この町を一時的に留守にするのは確かだ。発覚を恐れて『笹沼先輩』方面の情報はあまり集められていなかったんだけど……、この機会に家探ししちゃうのもいいかも。
「だからさぁ、マジで……。あ、さくらっちジュース無くなってるじゃん。ドリンクバーでついでに取って来るけど何がいい?」
「? あぁでしたら全部混ぜで。」
「…………山本さんってそんなことするんだ。」
「楽しいでしょう?」
考え込んでいる内に話が進んでおり、みかんさんに問われたのでそうお願いします。
子供っぽいのは自覚していますが、全部白黒だと何見ても面白味が無いんですよ。でもごちゃまぜにすると入れる時とか、入れた後とかでトーンが変わったりするでしょう? あと色んな液体混ぜたってことが解るように書き分けをしなくちゃいけないってことで作者に嫌がらせできますし、よくやるんですよ。
されたくなかったら物語をもっと面白く書くか、画力を上げるか。読者様のためにも、何より私のカラーページのためにも。ちゃ~んと頑張ってくださいね、作者?
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