19:次篇
(ふぁぁ~、ひっさびさによく寝た。マジで。)
口の中で欠伸を噛み殺しながら、普段の通学路を歩く。
いつもだったらこの時間帯まで修行させられるんだけど……、何故か今日は婆ちゃんが滅茶苦茶優しかったんだよねぇ。普段なら数秒単位の睡眠時間が今日はなんと8時間ももらえたし、朝ご飯も結構豪華だった。あと爺ちゃんが買って来てくれたらしいちょっといいプリンまで出て来たし、普段より寝すぎてなんか眠いことを除けば最高にご機嫌な1日。
……爺ちゃんが優しいというか私に甘いのはいつものことなんだけど、婆ちゃんに優しくされるのは正直かなり警戒してしまう。今日私死ぬんか?
(まぁ結構鍛えてるからそうそう死ぬことはないと思うんだけど……。)
「あ、山本さ~ん! おはよ~!」
「あぁ松原さん。おはようございます、奇遇ですね。」
そんな考え事をしながら歩いていると、後ろから声。
振り返ってみてみれば自身の数少ない友人である松原さんの姿が。彼女も私同様登校中のようですね。
あ、ちなみにですが私の『巫女としての仮面』は周囲に誰もいない時や、物語の“視点”がこちらに向いている時以外は常につけるようにしてます。別に素を出しちゃってもいいのですが、読者の皆様には『巫女』としての姿で登場しちゃってますからね。別に素を出してギャップを狙いに言ってもいいんですけど、まだちょっと早いかなーって。
(……にしても。)
「ん? あっ! もしかして口に朝ご飯ついてる!?」
「……いえ、いつも通りのお綺麗な顔だなぁ、と。」
「え、な!? や、辞めてよ山本さぁ~ん!!!」
かなり照れながら、私の背中をバシバシと叩いてくるまつっち。
彼女が怪我しないように霊力による身体強化を解いて生身で受けますが……、結構本気で叩いてますねこの人。鍛えているのでこの程度で崩れるような体幹してませんが、かなりの威力です。
そんなおふざけを繰り広げながらも、再度マジマジと彼女の顔を眺めます。
やはりと言うべきなのか、作者が1巻の修正作業を行ったことでようやく統一出来始めたのでしょう。新しく生えてきた方の記憶と全く同じ顔がそこに浮かんでいます。おそらくこれからも定期的にブレていくことには成るでしょうが……、松原さんってこんな顔してたんですねぇ。
うん、樹里ちゃんやみかんちゃんと比べるとまだ手抜きだけど、他のモブに比べれば気合入ってる。
(みかんちゃんが加入したばっかりだから当分いらないとは思うけど……。)
追加戦士として入れるなら彼女でしょうね。もしくは何かしらの犠牲者?
ま、何か起きるにしても大分後に成るでしょうし、大まかな物語の進行は作者に任せるつもりなのでこちらから動く必要はないでしょう。お話がつまらなく成りそうになった瞬間介入はしますが、あんまりやり過ぎるとぶっ壊れちゃいますからね。
程々にしていきましょう。
「あ、そうそう山本さん。そろそろゴールデンウイークだけどさ、何か予定ある?」
「ゴールデンウイーク……、あぁそう言えばそうでしたね。」
暇だったらどこか一緒に遊びに行こー! と誘ってくれる彼女に微笑みを返しながら思考を回し始めます。
怪異や霊力やらと色々現実世界とは違う要素を持つこの世界ですが、暦はそう変わりありません。祝日は同様にちゃんとありますので長期休暇というものもあります。普通の女子高生であればせかっくの休みを存分に楽しむのでしょうが……。
(巫女としては結構憂鬱なんだよねぇ、コレ。)
何せこの期間、正確に言うとこの期間の後。怪異が大量発生するんですよ。
長く続いたお休みの後となれば、人の気持ちも下がるというもの。魂って実は肉体や精神に結構引っ張られましてね? 体調が悪くなったり気分が落ち込むと魂も弱っちゃうんです。んでそうなると人の魂をご飯にする怪異たちが寄ってくるわけでして……。
こういう時期って私達にとっては繁忙期なんですよねぇ。
(結局、結界のアップデートは止めてもらえることになったけど……。多分コレを機に動き出すんだろうなぁ。)
昨日のお説教の際、婆ちゃんに怒られて一時的に監視用式神とかを手元に戻す羽目になったんだけど……。明らかに『笹沼先輩』の行動量が増えているような気がする。
相手は確実に何かしらの能力者だから、発覚を心配してかなり遠巻きな監視に限定してるんだけど……、それでも何か動いているのは解る。まだ彼が完全な悪役、もといこの物語における『怪異の発生源』と判明したわけではないんだけど、『物語の次の起点』に成るのは確実だろう。
(まぁ魅力的な漫画には魅力的な敵役が必須ですからね。せいぜい華麗に踊ってもらうことにしましょうか。……私は違う意味で踊ることになりそうだけど。)
基本的にこの町で起きる怪異騒ぎは樹里ちゃんやみかんちゃんの主人公チームに任せることになるのだが、そんな彼女たちでもこの町全ての怪異を倒すことは出来ない。何せ学生だし、活動できる時間帯も決まってる。いくら長期休暇があると言っても、四六時中怪異退治に使えるわけではないし、大量発生は休暇が終わった後。
となるとその他の誰かがカバーしてやらないといけないんだけど……。
うん、実はワンマンが確定してるんですよね。はい。
これが何故かと言いますと、ウチ。『往霊大社』の立ち位置が関わって来まして。まとめ役である私達は、何かあればすっ飛んで問題を解決しなくちゃいけません。となるとこの時期の婆ちゃんと爺ちゃんは基本的に他の地域のヘルプで走る回ることになりますので……。この町の問題に対応できるのは私だけ。
(自動排除してくれる結界は『物語』ごと破壊しちゃうから使えないし、主人公たちが暴れた後始末も私担当。……う~ん、仕事量考えたら憂鬱になって来た。)
この世界、もといこの漫画のためにも頑張らないといけないのは確かなんだけど、やっぱり仕事が多いと憂鬱になるというもの。気分が下がれば怪異を寄せ付けちゃうことになるのも解ってるんだけど、嫌なものは嫌なのだ。
そんなことを考えながら、顔には一切出さずまつっちこと松原さんと言葉を交わしていく。
準レギュラー的な立ち位置の彼女だ。その言葉から次のイベントのヒントが出てくるかもしれないし、今後の伏線に繋がるかもしれない。顔に笑みを張り付けた裏でこんな風にずっと思考を回しているが……、会話内容自体はちゃんと頭に入れてる。
……まぁ大半はどうでもいい世間話だけど。
「それでさ~、塾の先生が酷いの! 竹刀持って振り回してくるしさ~。」
「それは大変……、じゃなくて。普通に児童虐待に分類されると思いますよ、ソレ。」
「え、そうなの?」
「授業が解り易くて実績はあるのかもしれませんが、今の時風にそういうのは……、ん?」
主人公に張り直した監視役の式神。
そこから送られてきた映像及び音声データ。
「なるほどなるほど……。」
「あれ、どうしたの山本さん?」
「……いえ、何でもありません。」
かの『笹沼先輩』がゴールデンウイーク後の数週間。この町から離れる、ねぇ?
怪異が大量発生する時期に、わざわざこの町から離れる。明らかに何かしでかすヤツじゃん。あの子たちに任せるのは確定してるけど……。ちょーっとこっちも本腰入れて準備し始めましょうか。
タイトルを 『転生巫女はカラーページが欲しい。』から変更いたしました。今後ともよろしくお願いいたします。




