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漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。  作者: サイリウム


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17/34

17:画策



「……予想外、と言うべきだろうか。こちらの把握していない霊具があったとは。」



深夜帯、誰もが寝床へと入り込み安眠を享受する時間帯。


“彼”はそんな時間にパトロールとして動き回る少女たち。特にみかんの手に着けられたグローブを眺めながら、自身の考えを口に出していた。


その周囲に施されているのは、『隠蔽』の効果。完全にその存在が知覚できなくなるという効果ではないため、さくらの扱う『隠蔽』と比べるとお粗末な術式に見えてしまうが……。彼が使う術式は、巫女たちの扱う技術系列とは全く違うもの。


さくらのを『切り取って隔離し無かったことにする』ものだとすれば、彼が扱うのは『薄め誤魔化し違和感を抱かせない』もの。自身を中心に効果を及ぼしながら、広がるごとに効果が薄まることで“切れ目”を無くし相手がより高位の存在であっても発覚しない様な術式。


自身の存在を隠すことは難しかったが、その本性を完全に隠すことには成功していた。



(まぁ、彼女達ではこれでも気が付けないだろうが。)



本来彼の使う術式はこの地の守護者、『往霊大社』の神主や巫女に対するもの。


事実その本性を隠し切り、成果を上げているのだが……。付随効果として多少なりとも『隠蔽』の効果を及ぼしているのは確かである。まだ初心者を抜け出せていない樹里やみかんが彼の存在を知覚することは不可能だった。


しかも彼の調査によると、現在巫女の老婆は出張中で県外に出ているし、神主の翁は所用でこの町から離れている。“彼視点で見れば”現在見習い巫女であるさくらは霊力を持たない人間であるため、この町に守護者はおらず脅威はない。


何も気にせず『対象を観察する』にはこれ以上ない時間だった。



「当初の予定では、この地の結界に対する新たなアプローチを試すためのモノだったが……。」



そう口にしながら彼が思い出すのは、“タコの怪異”。


結果として樹里が胸に納まる刀を目覚めさせる要因になったものであり、さくらの初陣を飾った怪異でもあるソレ。『笹沼』という名で活動する彼が手ずから調整し、この地に張り巡らされた結界の効能に対しどれだけ対処できるかを調べる名目で投入された怪異である。どうなってもよい存在だったため祓われたことは特に問題なかったのだが、あの場所に塚本樹里がいたことは完全に予想外であり、目覚めてしまったことも想定外の出来事だった。


怪異討伐前に結界を張られたせいか、タコの怪異がどのように屠られたか、誰によって屠られたのかすら彼は判別出来ていなかったが……、彼も『さくらの祖母が後片づけに出動している』ことは把握出来ていたため、『さくらの祖母が退治した』という風に考えていた。


ともかく、『笹沼先輩』からすれば非常に興味深い存在なのが、『塚本樹里』なのである。



「まさか自力で力を手に入れてしまうとは、な。……こちらにとっては完全な予想外でしかないが、 『観察』の対象としてはこれ以上のものは無いだろう。少々悪趣味であることは確かだが。」



そもそも彼がこの地にやってきた時から、気にかけていた少女ではあったのだが……。刀を目覚めさせ覚醒したことにより、彼の樹里への興味は日に日に大きくなっている。


そんな彼が独自に入手した文献によると、この地には『守護者』である巫女たちの他に『担い手』と呼ばれる霊具をその身に宿した戦士たちが居たのだという。


樹里の祖先であるこの者たちは全て。この地に居を構える神社、『往霊大社』と深い関係を結んでいた。


そして“大社”という他の神社とは違った呼ばれ方をするこの神社には、『笹沼』が強い興味を抱くだけの理由が存在していた。


一時期まで“大社”とは出雲大社を指す様な言葉であったが、この世界で起きてしまったとある事故によって各地に大社が乱立するようになっている。その地域のまとめ役のような神社だったり、その一族の能力が他と類を見ないほどに優れていたり、その地に眠る神や怪異・妖怪によって霊的な主戦場となったがゆえにその名を与えられることが増えたのだ。


そして、この地域に存在する『往霊大社』は……、そのすべてが当てはまる。



「もとよりこの地方一帯のまとめ役であり、代々有力な霊能力者を輩出してきた山本の一族であり、祀る神のせいか妖魔が非常に集まりやすい土地。」



戦後の高度経済成長期、それによって都市だけでなく結界を再構築されたためここ数十年は怪異の欠片すら発生しなかったこの地ではあるが……、近代以前となると非常に血生臭い歴史が残っている。


怪異を率いる妖怪たちと、人の世を守るために戦う霊能力者たち。


流石さくらの血の源流と言うべきか。終始人間側優勢で進んでいたらしいが、たった一人ですべての怪異を祓うのには限界がある。故に見込みのある人物に霊具を与えてお抱えの戦士にしたり、一族の子を嫁がせるなどしてこの地に根付いて行ったのが、『山本』の一族だった。


しかし時代が進むとともに科学技術の発展が起き、『怪異などの伝承の否定』が起き始めたため自然と妖魔陣営は弱体化。それに伴い山本の一族は本家だけを残し、戦いに疲れた分家たちを切り離すことで一般人に戻ってもらうような方針へと切り替えていた。


さくら達の世代となると流石にもう残っていないが、彼女たちの祖父母の世代が『往霊大社』を地元の名主にして駆け込み寺のように扱うのは、この過去が名残りとなっているものだ。



「そして完全にこの町をを安寧の地としたのが、現神主が張ったこの結界。緻密に組み込まれ人の記憶から怪異どころか妖怪すら忘れさせるような高度なもの。この地に眠る妖魔たちの血すら隠し切ってしまうような術式だが……」



だからこそ破りがいがある、とつぶやく彼。


彼がこの地に目を付けたのは、先ほど上げた3つ。特にその後者2つが理由である。


古来より霊能力者を輩出してきたということは、市井にその持ち主が流れ一般人として生活している可能性が高く、自身に宿った力を忘れて生活している可能性が高い。一般に戻った分家はまだ役目を覚えている可能性があったが、それ以外ならばありうる。事実『塚本樹里』という存在が居たし、『笹沼』はその胸に眠っていた霊刀に興味を持ったからこそ近づいた。


そして何より守護者である神主と巫女がかなりの高齢で、後継者もいない。彼からしても現巫女であるさくらの祖母は脅威でしかなかったが、年が年だ。あと十数年もすれば老衰で死しているだろうし、他の地から守護者が派遣されたとしても、それは『山本』の者ではなく脅威に値しない。


これほど“環境の整った場”は、そうそうない。



「さくら……、だったか。彼女が後継者としてこの地に訪れた時は撤退も視野に入っていたが、蓋を開けてみれば霊力の欠片すら持たないただの一般人。その母も霊力を持たないがゆえに家を離れたと聞いていたが……、鳶が鷹を産むことなどそうそうないのだろう。」



まぁ実際は鷹どころか、“その視点のせいか”この世界の神である作者すらも呪殺可能圏内である化け物に育ちつつあるのだが、彼からすれば霊力を持たない小娘でしかない。


物語の外側と言うべきか、この世界の存在では持ちえない視点を持っているからこそ一番注意しなければいけない『山本さくら』。しかしその危険度を彼が把握するよりも前に、自身の霊力を完全に隠し切る術を覚えてしまったのがさくらである。“何かが起きる”まで最も警戒すべき相手を過小評価してしまった『笹沼』は、今後の計画を組みなおしてく。



「あのグローブの子、名前は知らないが彼女の調査も行わねばならないだろう。しかし、大筋は変わらない。」



彼がこの地に来る直前の調査で、伝承に残る『刀』の持ち主がフリーであることは理解していた。


故にそこに目を付け観察。程よい先輩を演じながら好感度を稼ぎ、ゆくゆくは“材料”にしようと考えていたのだ。運悪く目覚めてしまったがゆえに利用できなくなったのは確かだが、未だ守護者側に問題を抱えているのは変わらない。むしろ見方を変えれば『目覚めたからこそ』出来る実験があるのだ。


イレギュラーは発生しつつも、状況は好転し続けている。



「どれだけ前提条件が変更されようとも、その都度修正すればよいのだ。まだ“使い道”は決めていないが……、親友の彼女共々、頑張ってくれたまえ。」



そういいながら彼が目を落すのは、手元の書類。


束になったそこには常人では読解不可能な文字が刻まれており、何かしらの計画書であることが推察出来た。どうやらこの計画は上手く進んでいるようで、その顔に笑みが灯る。



「寿命を待ってもいいが、此方にも“期限”がある。動かれる前に対処してしまうのがいいだろう。」



筆を走らせ何かを丸で囲み、その束を懐に戻す彼。


その書類には、『さくらを人質とする』という文章が覗いていた……。




次回はさくら視点に戻ります。でも生きてるかな……?

またスレ回にご好評いただきましたので、適宜入れさせて頂きます。

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