表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漫画世界に転生した巫女はカラーページが欲しい。  作者: サイリウム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/34

13:始末


急に刀を持って現れた主人公の姿に、驚きを隠せないみかんちゃん。


そしてその真横で、式神を椅子代わりにしながら眺める私。


いやはや、婆ちゃん印の『隠蔽』の精度はほんと意味わかんないよねぇ。普段は霊力の遮断だけだけど、本気で使用してみればあら不思議。起動までにちょっと時間がかかる欠点にさえ目をつぶれば、五感どころか霊力すら感知できなくなっちゃう。


まぁやり過ぎると自分の存在そのものが世界から忘れ去られて、死ぬことになっちゃうんだけど……。効果だけ見ればとっても優秀だ。


現にみかんちゃんの真横にいても気が付かれてないし、近くにいる主人公ちゃんも怪異も私の存在に気が付いていない。ほーんと便利だよねぇ。……なんで婆ちゃんがこんな術作れる上に私がそれを習得できるのかは永遠の謎だけど。そもそも人間が世界から忘れ去られるって何???



(にしても、この怪異。マジでどっから出てきてるんだろ?)



今回の私主催な『みかんちゃん覚醒イベント』は、式神を怪異代わりに登場させそれを主人公ちゃんとみかんちゃんが共闘しながら撃破。これにより『新メンバー追加!』的なことを行おうとしたものだ。


作者がいつまでたってもお話を進めようとしないからね、こっちからテコ入れしてやろうとしたわけですよ。


でも蓋を開けてみれば、私が誘導していたポイントよりも早く怪異が表れちゃってるし、それとみかんちゃんたちが交戦を始めちゃってる。私の代わりに作者が『このイベント利用してやろ』と思って介入してくれたのかもしれないけど……。



(メタ的な思考を抜きにした場合、滅茶苦茶問題なんだよね、コレ。)



かなり注意深く見ないと解らないが、この町は非常に高度な結界が張り巡らされている。


地面に限界まで祈祷した杭を打ち込み、その上に立つ家々の区画を線として扱う結界。上空から見たとしても単なる綺麗な住宅街にしか見えないソレは、怪異や妖怪などの発生を完全に防ぎ、外から入ってきた敵すらも大幅に弱体化させるというもの。


高度経済成長期にてこの地区をまるっきり改装する時に、爺ちゃんが主導したこの結界。その効果はちょっと頭がおかしくて、一瞬で山々を消し飛ばすことのできる妖怪がつまようじさえ壊せなくなってしまうレベル。この前おこづかいをせびるついでに聞きに行ったら模型図を見せてもらえたんだけど、狂人かと思う程度には制度がヤバかった。


ちなみに昔そういう危険な妖怪がいたらしくて、まだ若かった爺ちゃんと婆ちゃんが『試運転しよ!』のノリでそんなヤバめな妖怪を連れてきて町の中に放り込んだら、マジでそうなっちゃったみたい。



(……なんで私の祖父母こんなヤバい人なの?)



婆ちゃんが直接戦闘に長けるといえば、爺ちゃんはどっちかというとこういう結界術の方を得意とする。あの化け物みたいな自身の祖母が『お爺ちゃんの腕前は頭おかしいからねぇ』と言うほどにその術の精度は狂っている。


つまり、本来この町では怪異の“か”すら存在出来ないはずなんだけど……。



(なんか出現してるんだよなぁ。……ま、この辺りはもう爺ちゃんが動いてるみたいだし、婆ちゃんは県外の妖怪退治で出張してるから今日の修行は無し。時間を完全にフリーで使える機会なんて滅多にないんだ。最初考えてた暗躍は出来そうにないけど、二人の初陣。見守らせてもらいましょうか。)



そんなことを考えながら、彼女たちの戦闘に視線を向ける。


ちょうど樹里ちゃんが片足の怪異を弾き飛ばしたようで、ゆっくりと息を整えながらその霊刀を構え直している。既に何度かの戦闘を繰り返したためか、その切っ先に一切の迷いは見て取れないが……、頬に流れる一筋の汗。多少の緊張は残っているのだろう。


まぁそれはそのはず、なにせこれまで彼女が倒せた怪異は“小物”だけ。確かに一番最初にあのタコの巨大怪異と出会ってはいるが、倒せてはいない。



(ま、作劇を考えると怪異とか妖怪とかこれからどんどん出始めるだろうからねぇ。さっさと倒して乗り越えて貰わなくちゃ困るんですよ。)



んで、それに対してみかんちゃんの方だが……。


まだ状況を飲み込み切れていないのだろう、呆然とした顔を浮かべている。ま、それもそのはずだ。自分の親友が急に刀持ってバケモノと戦い始めようとしているのだ。びっくりしない方がおかしいだろう。



(……さっき樹里ちゃんがみかんちゃんに声をかけた時、相手が彼女だと解っているような動きではなかった。キャップとか服装で顔隠れてるし、解らなかったのだろう。対して樹里ちゃんは、何を考えているのか未だ制服での行動。顔も隠してないし、すぐに解っちゃう感じ。)



このイベントの行く末は、既に私から作者に委ねられている。


最初は恋愛かと思わせておいてバトルものとかいう意味不明な路線変更をした愚か者だが……、樹里ちゃんの過ごした日常回を見る限り、そこまで『小さくまとまったお話』を作るのは下手ではないようだった。今日出て来た足の怪異も、タコの怪異を気持ち悪くて怖いキャラを生み出すのも得意っぽい。多少ブレることもあるが、人の造形も悪くないとは思う。


でもこの漫画は、『戦闘もの』だ。バトルの描写が上手くなければ意味がない。どう頑張っても世界を作るのは作者だからね。ま、私としては作者に頑張ってもらってカラーページを獲得して貰わないといけないんだ。二人の戦いにこれ以上介入するのはやめてあげるから、いい感じのを描けよ? マジで。



「逃げて! 早くッ!」



わたしがそう考えている間に、再度始まる彼女たちの戦闘。


樹里ちゃんが未だ誰か解っていない相手に逃げることを進めながら、怪異に向かって走り寄っていく。まだ剣道という競技での動きが残っているが、ある程度適応し始めているのだろう。高速で小物の怪異を切り飛ばしながら、確実に足の大型怪異への距離を詰めている。



「スススキ、アリ」


「ッ! 後ろ!?」



そんな彼女の背後から、その気配を隠していた怪異たちが一斉に襲い掛かるが……。即座に振り返りながら、一閃。確実に攻撃をガードし相手を切り殺している。


一応婆ちゃんに扱かれているのである程度戦闘への造詣が深まって来たのだが、おそらくあれは自身で気が付いたのではなく、何かに言われて反応したという感じだ。気が付いた瞬間と、その時に出た声、そこから攻撃に移るまでの間にラグが多すぎる。いくら彼女が初心者とはいえ、そこまでポンな子だとは考えられないし……。



(うん、確実にあの“霊刀”。意思がある奴だな。)



刀が彼女に声をかけて、気が付いたという感じだろう。タイムラグの問題もこれなら道理が通る。


……あまり霊力の籠った道具、霊具に関しての知識はないのだが、彼女の心臓に眠っていたという背景から確実にワケアリな品であることは間違いない。というか彼女が主人公である限りワケアリ品しかありえないだろう。見た感じ、多分周囲に声を届けられるような奴じゃなくて、持ち主である樹里ちゃんにしか声をかけられないタイプの奴なんだろうけど……。どうなんだろうね?



(こういうアイテムって完全に味方な奴から、実は敵側の存在でしたとかマ~ジでいろんなパターンあるからな。心臓に埋まってたって背景から、アレ破壊した瞬間に樹里ちゃんの心臓が止まるとかも普通に考えられるし……。)



今の段階では『何かあった時に備える』ことしかできないなぁと考えていると、ちょうど樹里ちゃんが足の怪異と相対。そしてその戦闘が始まった瞬間に、ようやくみかんちゃんが再起動し始める。


せっかく夜なべして作った『手袋』を送ったんだ、上手く使ってよね?



「な、なんで樹里が……、い、いやそんな場合じゃッ!」



思わず言葉を漏らしてしまう彼女だったが、自身の親友が何か危険なものと戦っている、というのは理解できたのだろう。その場から逃げるのではなく、何か彼女の助けに成れないかと思考を回し始めるみかんちゃん。


彼女が“昔から愛用している”と思い込んでいるグローブのおかげで、実はもう樹里ちゃんと肩を並べて戦えるような力を持っているのだが、まだ彼女はそれに気が付けていない。先程怪異から逃げる時に使った“足”も、火事場の馬鹿力だと勘違いしてしまっている。つまり彼女が“出来る”手助けは、完全なサポートのみ。



「な、なにか……。そうだっ!」


(お、なんか見つけたのか……、Oh。)



彼女の頭脳が何かの答えを導き出し、即座に動き出すみかんちゃん。何をするのかなーと式神に乗りながら追いかけてみると、彼女が手に取ったのは大きなガスボンベ。ちょっと古めのお家に置いてあった、プロパンガスのボンベだ。


あ、あのぅ。みかんちゃん? そ、そういう物的な損害が出た時は私が後で修繕しないといけなくなるんですけど……。



「これ、ならッ!」



無意識のうちに霊力を使用しているのだろう、20㎏サイズのボンベを軽々と持ち上げ、主人公と戦う足の怪異に狙いを付ける彼女。そしてそのまま……、投擲。



「ジュリジュリっ! 避けてっ!」


「ッ!?」



そしてその直後に投げつけるのは、何故か持っていたライター。


大幅に強化されたその四肢によって放たれたそれは、火を保ちながらガスボンベを貫き……、引火。大きな爆炎と共に怪異を包み込んでしまう。



「そ、その声! み、みかんちゃん!」


「そうだよっ! あと二本目もぶん投げるから避けてっ!!!」


「イヤなんでそんな重そうなの片手で持ててるの!? あとなんでここに!?!?」


(うわぁ、大爆発。……え、もしかしてこれ。周辺住民への記憶処理も私がする奴?)



先程の掛け声で爆炎に包まれる前に回避することが出来たのだろう、地面に降り立ちながら声を荒上げる樹里ちゃん。


まぁ彼女からすれば本来親友がいない場所の筈にいて、常人では出来ないことをしているのだ。意味不明でしかないだろう。そして対するみかんちゃんも、自分の異常性にようやく気が付いたのだろう、『なんで私こんな重そうなの投げ飛ばせてるの?』と滅茶苦茶困惑した顔を晒している。


……うん? い、いやちょっと待って???



(今の爆音確実に町中に響いてたよね? 寝てた人が叩き起こされる奴だよね……? ひ、ひぃん! 防音とかの結界張っておけばよかったッ! 明らかに今の音で起きちゃった人いっぱいいるッ! 人集まったら明らかにアウトだし! 全員無理矢理気絶させにいかなきゃッ! んで全員の記憶処理にプラスして火の処理とか、建物の修繕しなきゃ! おわーッ! 婆ちゃん出張中だから全部私がしないといけないッ! でも明らかに一人じゃ今夜中に終わる作業量じゃないィ!!! おわー!!!!!)



隠蔽の術式を維持しながらも、一斉に手持ちの式神を全力稼働して行動を開始する私。


そんな苦労も知らずに、言葉を交わす樹里ちゃんとみかんちゃん。



「と、とにかく! ジュリジュリ! 水臭いよ! こんな危なくて面白うそうなことしてるのに、私混ぜてくれないなんて! 親友でしょ、私達っ!」


「お、面白そうって、みかんちゃん危ないの嫌い……」


「だからでしょうが! 友達が変なことしてるのに相談してくれないのに怒ってんの!」


「ご、ごめん……。」


「いいよっ! ともかく、あの化け物倒しちゃうんでしょ? なんかよく解んないけどすっごく体の調子がいいし、手伝うからね! 文句は無し! あと終わったら全部説明してよねっ!」



先程のガスボンベ投擲で倒し切れていないのは二人とも理解していたのだろう。


やり取りもほどほどに収め、樹里ちゃんは刀。みかんちゃんは二本目のガスボンベを持ち上げている。


あ、あの。防音の結界張るまであと2秒ほど待って……。あ、投げちゃった。




瞬間あたりに響く、二回目の爆発音。




………うん! 今日も徹夜だね! あはー! 後始末がんばるぞー!!!


あと作者は殺す。私の仕事を増やす様な戦い方させるなボケ。ば、婆ちゃん出張でいないからようやくお布団で寝られると思ってたのにッ!!! うわぁぁんん!!!!!




※なお討伐“は”無事終わりました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ