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TRPGをベースにしたAI管理RPG。クリア後に竜の力を手に入れ転生した俺。TRPGの知識で生き延びて必ず現実世界に帰って見せる!!  作者: 春の小川


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第8話「出会いとすれ違い」

帰りの道中、もう少しで外に出られる――そんな場所で、一人の女性がモンスターと戦っている場面に出くわした。


<カメレオン・マンティス> モンスターLV3。

大型のカマキリ型で、周囲に溶け込んで奇襲や不意打ちを仕掛けるのが特徴だ。


この階層ではかなりの強敵だが、攻撃手段は物理一辺倒。透明化にさえ気を付ければ、対処できない相手ではない。

ちなみに第一階層のモンスターはLV1ばかりで、<ビッグ・アント>や<バインフラワー>などが代表格だ。

<キラー・ウッド>はLV2なので、素材に価値があるのも納得できる。


そんな強敵と対峙しているのは、ローブ姿で詠唱中の女性冒険者。持っているのは魔導書らしき本――どうやら《魔術師》のようだ。

だが、《魔術師》が単独で相手をするには危険すぎる。距離を詰められれば、その大鎌で一撃だ。


(助けに入ったほうがいいか?)

そう考えた矢先、その魔術師の女性が素早く詠唱し、炎を生み出して<カメレオン・マンティス>に叩きつけた。


直撃を受けたマンティスは大きく飛び退き、地面でもがきながら燃え上がった体を必死に消そうとする――が、やがて動きを止めた。


「よし、やったか?」


……そんなフラグを立てるようなセリフを口にする魔術師さん。


「なにやってるんですか! 早く次の魔法を唱えて攻撃して!」

俺は思わず声を張り上げた。


なぜなら、地面に倒れた<カメレオン・マンティス>が、アニメの光学迷彩みたいに透明化し始めたのだ。


だが、慌てることはない。溶け込むといっても、完全に姿が消えるわけじゃない。

気配も体温もある。生き物としての“存在”までは隠せない。


しかも、魔術師ならLV1から《センス・エネミー》を使えるはず。

敵意を感知する魔法だ。あれさえ使えれば対処は容易なはずだ――


俺の声に反応して、魔術師さんはこちらを鋭く睨んだ。

(え、なにその敵意!?)と思ったが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


「お姉さん! 《センス・エネミー》を早く! さっきのモンスターがまだ生きてます!」


魔術師さんはマンティスのいた方へ向き直ったが、すでに奴は景色と同化してしまっている。

きょろきょろと辺りを見回すが、“胎内”の薄暗さもあって、目視での捕捉は不可能だ。


「彼女が使える魔法は……《ファイア・ボール》だけかもしれないね」


(え!? 魔術師LV1って、そのレベル帯の魔法全部使えないの?)

いや、今はそんな疑問を考えてる場合じゃない。


<カメレオン・マンティス>はLV3。

魔術師さんがLV3だとしても、接近戦になれば圧倒的に不利だ。


俺は竜人魔法LV1の《サーモ・ビジョン》を発動した。

視界がサーモグラフィのように変化し、熱源のある場所が赤く浮かび上がる。

人の形をした赤が魔術師さん、そのすぐ近く――巨大な赤い塊が接近中。


(気づいてない!?)


俺は続けて《ストロングフット》を行使し、距離を詰めた。


(うおー、間に合え!)


モンスターの大鎌が振り下ろされようとしている。

しかし魔術師さんは、まったく気づいていない!


「ほあたーっ!」


――ギリギリ間に合った。


勢いのまま飛びかかり、気合の入った一撃をモンスターの頭部に叩き込む。

不意打ちを受けたマンティスは大きく体勢を崩し、姿を現した。


立て直される前に、畳みかけるように連撃を叩き込む。


「あたっ、あたっ、ほあったぁー!」


《ファイア・ボール》のダメージも残っていたのか、マンティスは俺の連撃に耐えきれず、その場に崩れ落ちた。


「ふーっ、間に合ってよかった……」


攻撃を終えた俺はすぐに鉤爪を解除する。

危ない、危ない。モンスターが陰になっていたから、たぶん見られてはいないはず。


「お姉さん、お怪我はありませんか?」

俺は紳士的スマイルで声をかけた。


「ちょっと! 別に助けてくれなんて頼んでないよ!」

「この獲物は私のだからね。あんたは勝手に横殴りしてきただけ!」


腕を組んでフンとそっぽを向き、倒れたマンティスの方へ歩いていく。


(ええ~~……つ、ツンデレなのか?)


「なんだこいつ、助けてもらっておいて何て言い草だ」

横でエルシナーデさんがご機嫌斜めだ。完全に昭和ヤンキーみたいなガンを飛ばしている。


魔術師さんはモンスターに近づき、フードを外した。

露わになったのは――特徴的なやや尖った耳。


(へぇ、エルフだったのか)


エルフは五種族の中でも特に魔法に長けた種族だ。

だが、その姿を見て俺の中に新たな疑問が湧いた。


――魔法が得意なエルフが、《ファイア・ボール》は使えるのに《センス・エネミー》が使えないのはなぜ?


そんな疑問を抱えていると、彼女がこちらを振り向く。


「おい、いつまでそこにいるつもり? 言っとくけど、魔石も素材も譲る気はないからね」


(……もしかして俺、ハイエナ扱いされてる?)


感謝を期待していたわけじゃないけど、助けたのにそれはちょっとショックだな……(´・ω・`)


出口まではもうすぐだし、一人でも大丈夫だろう。

それにLV3のモンスターなんて、この階層ではレア中のレアだ。


「お邪魔しました。モンスターには気を付けて帰ってくださいね」


そう言い残して俺はその場を後にした。

後ろでは、エルシナーデさんがまだガンを飛ばしていたけど……。



◆◆◆


“胎内”を無事に出て、冒険者ギルドへ向かう道中。

俺はさっきの戦闘で感じた疑問をエルシナーデさんにぶつけてみた。


「魔法使いって、LV1の魔法を全部使えるわけじゃないんですか?」


「??? LV1の魔法っていうのは、アキラがいた“大昔”の話かな? “全部”というのは、下位魔法のことを言ってる?」


(おっと……前にも冒険者の等級やレベルの話をしたときもそうだったけど、どうやらこの“現実になった世界”では《LV》という概念が存在しないらしい)


「ええ、そうです。《ファイア・ボール》とか《センス・エネミー》、《プロテクション》みたいな、比較的簡単な魔法全般のことです」


「うーん……。もし、そんな下位魔法をいくつも使える魔術師がいたら、それは相当な修練を積んだ者だね。

そもそも、魔法を“ひとつでも”使えるだけで立派なことなんだよ」


(な、なんだってー!? 魔法ひとつ使えるだけですごいのか!?)

確かに、現実世界で火の玉を撃てたらアベンジャーズ入りできるレベルだ。

……そう、ここはもう“ゲーム”ではなく“現実”なんだ。


(ってことは――)

戦士が使う《フォーカス・アタック》や、護人の《ガーディアン・フォース》なんかも、ひとつ使えるだけで超一流扱いなのか?


「そういえばエルシナーデさん、俺の戦い方を見て“武位”の使い手だって言ってましたけど……。

それって特別な“技”を使うことを指すんですか?」


「その通り。アキラの反応を見てたけど、聞き慣れない言葉みたいだったね。大昔は別の呼び方でもしてたの?」


驚いた。《フォーカス・アタック》や《ガーディアン・フォース》といった大仰な名前の技も、

その実は“命中率を少し上げる”とか“ダメージをちょっと減らす”程度の補正技だった。

つまり、“力を込めて攻撃する”“踏ん張って耐える”といった普通の行動に、ゲームっぽく格好いい名前を付けただけなのだ。


「転生前はですね、レベルごとに“武位”――当時でいうスキルをいくつも習得して、それを駆使して“胎内”のモンスターに挑んでました。

今は、どうやって魔法や武位を習得してるんですか? 俺、気になります」


「そうだね。まず魔法だけど――“魔法書”を解読して、その理を理解し、古代語で正しく発声することで行使できるんだよ。

でも、魔法書はとんでもなく高価だし、古代語も難解だから、使えるようになるまでが一苦労さ」


(なるほど……。入手が難しいうえ、解読にも学習にも時間がかかるのか。そりゃあ、魔法ひとつ唱えるだけでも大変だ)


「次に武位だけどね。これは一例だけど、王国の近衛兵団が扱うものとか、引退した虹等級の冒険者が道場で教えてる場合もある。

でも、ほとんどが門外不出だよ。そう簡単に教えてはもらえないだろうね」


(う~む……なるほど。そうなると、かつてLV5で習得できた《ライトニング・サンダー》とか《チャージ・アタック》を使える冒険者なんて、

今では滅多にいないってことか……いや、もしかすると、それ以上の“未知の武位”を操る者もいるかもしれない)


「いやー、転生前の世界とはだいぶ変わっちゃいましたね。あはは。

もしかして俺の“竜人魔法”って、今の世界ではかなり珍しい部類だったりします?」


「そんなの、当たり前じゃん。

拳から竜の鉤爪を生やして、獣人族でもできないような跳躍で戦ってさ。

それに、あの無礼なエルフ女を助けた時も何か使ってたでしょ?

武位と魔法を同時に三つも行使できる人間なんて、私は初めて見たよ」


(うっ……そう言われると、ちょっと気持ちいいな……)

いや、ダメだ。調子に乗るのは危険だ。

俺が使えるのはLV1の竜人魔法と、バハムートからもらった2つの魔法だけなんだから。


「ねぇ、アキラ。さっきどうやって“姿の見えないモンスター”を攻撃できたの?」


「あ、ああ……あれはですね――」


俺は歩きながら、《サーモ・ビジョン》の仕組みを説明した。

そして、二人並んで冒険者ギルドへと向かったのだった。



◆◆◆



冒険者ギルドに到着した俺は、受付の女性に魔石の買い取りを依頼した。

案内された先は、査定専用のフロア。

そこでは十数人の冒険者が、それぞれカウンターで魔石や素材を査定してもらっていた。


空いているカウンターに進み、今日の成果――魔石がパンパンに詰まったポーチを差し出す。


「お疲れ様です。……っわ、すごい量の魔石! ずいぶん貯められてたんですね」


「いえいえ。これ、今日の午前中だけの成果ですよ」


ドヤ顔で答える俺。


「えっ!? 今日だけでこれだけですか? 確かにお兄さん、ここで見かけるのは初めてですけど……」


「腕には自信がありますから。ここのモンスター程度、指先ひとつで仕留められるくらいにはね(ウィンク)」


とキメ顔で俺はそう言った。

その横で、エルシナーデさんが呆れたように腕を組む。


「あ〜あ〜。調子のいいこと言っちゃって。私が力添えしたこと、忘れないでよね」


「もちろん。これはただのギルド向けにできる冒険者アピールをしただけですって。ははは」


受付嬢が苦笑いをしつつ番号札を渡してくる。

「さ、査定に少しお時間をいただきますので、こちらの番号でお待ちください。終わりましたらお呼びしますね」


俺は番号札を受け取り、フロアの椅子に腰を下ろした。


「やあ、お兄さん。新顔みたいだけど、冒険者になりたてかい?」


「おう、そうだよ。昨日登録したばかりさ!」


……って答えたのは俺じゃない。ジギーさんだ。

っていうか、隣にいたの気づかなかったんだけど!? 気配を消してたのか!?


「い、いや、モヒカンさんじゃなくてだね……。まぁいいか。どっちも新人さんみたいだし、頑張りなよ」


「へぇ〜、ジギーさんも午前で切り上げたんですね?」


「おうよ。腕には自信があるんだ。ここのモンスター程度、俺にかかれば指先ひとつでダウンさ!」


「……あ〜あ〜。なんか聞き覚えのあるセリフだなぁ」

エルシナーデさんが小声でつぶやく。


(うう……他人が言うとすごく恥ずかしいな、これ)


「さ、最近の新人さんは腕が立つ冒険者が多いようでなによりだ」


あ、そういえば俺に話しかけてくれていたんだっけ?


「すみません。ご挨拶が遅れまして。俺も昨日、登録をしたばかりの新人です。よろしくお願いします」

おそらく先輩冒険者が気にかけて声をかけてくれたのだろう。お行儀よく接したほうがいいよね。


「やっぱりそうだったかい。盗み見るようで悪いとは思ったんだが、すごい量の魔石だったからつい声をかけたのさ。

頑張るのは良いが、無茶だけはするなよ。ここのモンスターはあまり強くはないが数だけは多いからな」


「はい、先輩からのアドバイスしかと賜りました!」

そう答えたのは俺ではない、となりにいた世紀末冒険者のジギーさんだった。


「お…おう。モヒカンさんもほどほどにな…」

ジギーさんの圧に押されたのか、先輩冒険者はその場を後にした。


そんな会話をしていると、別のカウンターから声が聞こえた。


「え!?そんなに待つの?」


「すみません、この受付は少し混み合ってまして……」


(あ、あの声……)

見れば、胎内で会った魔術師エルフさんが<カメレオン・マンティス>の大鎌を抱えて査定を待っていた。

あの細身の体で、よくあれを持ってこれたな……。


「番号札8番、ジギー様、査定が終わりました」


「おう、それじゃお兄ちゃん、先に行ってるぜ!」


ジギーさんは元気に報酬を受け取ってギルドを後にした。


そして少しして、俺の番が呼ばれた。

「番号札9番、アキラ様、査定が終わりました」


査定結果:魔石32個。

ゴールド換算で720G。

貢献ポイント換算なら37ポイント。


今回は装備を整えたかったので、全てゴールドに換えてもらう。

お目当てのハンドアックスが400Gだったから、これでようやく手が届く。


出口に向き直ると――


査定を終えた魔術師エルフさんが、先ほど話しかけてきた先輩冒険者と話をしているようだった。

もしかして、新入りに声をかけているのかな?魔術師エルフさんも新人なのか?


オンラインゲームでは新規プレイヤーに声をかけてアドバイスや支援したりする古参プレイヤーがいる。

もちろん、たいていはクランや固定パーティの勧誘が目的なんだけど。


彼もそいったたぐいの人で実力がありそうな新人を探しているのかもしれない。

俺もジギーさんも査定待ちするくらいの魔石を持ち込んでいたし、魔術師エルフさんは今の世界では貴重な魔法を使える。


会話を終えた魔術師エルフさんがこちらに気づき、歩み寄ってきた。


少し身構える俺。


「あんた、さっきはあんな言い方して悪かったね。助けてくれたのに、ありがとう」


……え? 素直!?

エルシナーデさんと目を合わせ、思わず固まる。


「戦闘中で、気が立ってたんだよ。悪い癖でさ」

「世話になったのに自己紹介もまだだったね。私はリナラ。見ての通り魔術師だよ」


「先ほどはどうも。あの状況では仕方ないですよ。こちらこそ勝手な行動をしてしまい」


「ふふっ、わかってくれるんだ。まぁ、お互い冒険者同士、これからも頑張ろうな」


そう言って、リナラさんは軽く手を振って去っていった。


「ふーん。まぁ、そういうことならさっきの無礼は許してあげてもいいかな」

エルシナーデさんも、ようやく不機嫌を解いたようだった。


その後、俺たちはハンドアックスを購入し、午後の狩りを終えて宿「草笛亭」へ戻った。


ただ――午後の成果は、正直“そこそこ”だった。

なぜなら、ハンドアックスでは俺の乱獲スピードに全く追いつけなかったのだ。


やっぱり竜人魔法ピアッシング・クローの威力は別格。

店売りの武器なんて、足元にも及ばない。


……おれは痛みに耐える覚悟を、改めて固めるのだった。


第8話も読んで頂き有難うございました。

続きの第9話は来週の11月16日(日曜日)18:00の投稿を予定しています。


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次回作もよろしくお願いします。

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