表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第1話 悪女令嬢、王宮の門を閉ざされる

王宮大広間には、絢爛たるシャンデリアの光がきらめき、玉座の間を埋め尽くす貴族たちの視線が、ひとりの令嬢に注がれていた。

「リリーナ・カルモード、これより第二王子アルフォンス・バレリア殿下との婚姻式を執り行う――」


その宣言は、華やかな装飾の中で、まるで遠雷のように響いた。だが、リリーナは冷静を装いながらも、胸の奥で小さく緊張を震わせていた。幼少より「悪女」と噂されてきた彼女は、この日を迎えることに複雑な思いを抱いていたのだ。


「王子様……」


微かに呼びかけた声は、ほとんど届かない。周囲の視線は、噂の“悪女令嬢”に刺さる刃のようで、リリーナはぎゅっと握った手の中で指先が白くなった。


その時、式場の奥から不穏なざわめきが走った。扉が勢いよく開き、数人の従者が慌ただしく入ってくる。誰かの声が叫ぶ――


「陛下、令嬢が――!」


次の瞬間、王宮の儀式は一瞬にして崩れた。リリーナの目の前で、書類が散乱し、侍女たちが悲鳴を上げる。式を妨害したのは、彼女が最も警戒していた人物たち――王宮の内部で暗躍する陰謀者だった。


「悪女め……!」

誰かが小さく吐き捨てるように言った声が、リリーナの耳に届く。王宮中の視線が彼女を責め立て、まるで罪人扱いだった。


その夜、リリーナは追放の通知を手に、王宮の門の外に立っていた。

「契約……は……?」


内心で問いかけるが、返事はない。夜風に揺れる髪を押さえ、リリーナは一歩ずつ城を離れる。けれど、王子アルフォンスの意志は、密かに彼女の背中を押していた。


「リリーナ、君の力が必要だ」


心の中に響いたその声に、リリーナはわずかに唇を緩めた。追放令嬢として生きる――それは、単なる屈辱ではない。王国の闇に立ち向かうための、第一歩でもあった。


遠くに見える王宮の灯が、夜の闇に溶ける。リリーナは深呼吸をひとつ、そして固く決意した。


「……王国を、そして私自身の真実を取り戻す――」


そう呟くと、彼女は侯爵令息セドリック・ヴォーンの屋敷へと歩を進める。そこには、これから始まる策略と知略の、第一章の幕が静かに開かれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ