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第42話 二度目のダンジョン探索 8

 

「まだ来てるよ! ……油断しないで!」

 セリウスが振り返り、血走った目で奥を睨んだ。


 ランタンの光に照らされ、数え切れぬほどの白い影が続々と押し寄せてくる。

 召喚の源・大きな魔石は取り出した。だが、これまでに呼び出されたスケルトンたちがすべて消えるわけではない。

 すべてを打ち倒すまで、この戦いは終わらないのだ。


「……ったく、どんだけ呼び出されてやがったんだよ!」

 オルフェが毒づき、大剣を振り上げた。


「でも、もう増えはしません。片っ端からスケルトンを砕いていけば、必ず終わりは来ます!」

 レオンが叫び、長槍を構える。


「やり切るしかないな!」

 アランが再び前に出て剣を振りかざす。

「全員、気を抜くな! ここで踏ん張れば勝ちだ! この出口の防衛線を守り切れば、数の有利を保ちながら戦える」


 五人は再び肩を並べ、一匹づつ出てくるスケルトンたちを迎え撃った。

 がしゃり、と骨の列が一斉に金属音を響かせ、狭い通路の出口が再び戦場と化した。


 がしゃり、と骨の列が一斉に金属音を響かせ、狭い通路の出口が再び戦場と化した。


「こいつで十体目だッ!」

 オルフェの大剣が振り下ろされ、骸骨兵の頭蓋が砕け散る。

 飛び散った骨片を踏み越え、次の影がすぐに現れる。


「息をつく暇もないね……!」

 セリウスが汗を飛ばしながら剣を振るう。鋭い突きが骸骨の首を貫き、骨の体が崩れ落ちた。


「でも、確実に減ってきてるぜ!」

 リディアが短槍で脚を狙い、骨を折って体勢を崩す。倒れたスケルトンをアランが斬り伏せた。


 レオンは後方で長槍を構え、正確な突きを放つ。

 長槍は骨の隙間を抜けて胸郭の魔石を貫き、骸骨兵を一撃で崩壊させる。


「よし、いいぞ! このままここを守り切れ!」

 アランが檄を飛ばし、陣形を整える。


 戦いは果てしなく続いているように思えた。

 だが、確かに骸骨の群れは薄くなり始めていた。

 散らばる骨の山が通路を塞ぎ、足場は悪くなるが、それが逆に敵の動きを鈍らせてもいた。


「……数が減ってきたな」

 荒い息の合間にアランが呟く。


「ようやく終わりが見えてきたか!」

 オルフェが笑みを浮かべ、大剣をもう一度振り抜いた。


 がしゃり……がしゃり……。

 骨の行進音はまだ続いている。だが、その足音は最初の頃よりもまばらになっていた。


「……あと少しだ。気を抜くな!」

 アランの声に、皆が頷き返した。

 疲労で重くなった腕を振り上げ、彼らはなおも迫る亡者の群れに立ち向かう。


 何度目か分からない打ち合いが続く。汗は額を伝い、呼吸は荒く、全員の体は満身創痍だった。


「……こいつらで最後だ!」

 アランの叫びと同時に、通路の奥から現れたのは十体ほどのスケルトン。


「気合いを入れろ! 一匹残らず砕き切るぞ!」

 オルフェが雄叫びを上げ、大剣を振り抜いた。骨が砕け散り、破片が飛び散る。


 リディアの短槍が隙を突き、オルフェの突撃が一体を吹き飛ばす。セリウスは剣を振り回し、仲間の背を守る。

 最後の最後、アランが剣を振り下ろし、最後のスケルトンを真っ二つに断ち割った。


 がしゃりと音を立て、骨の山が崩れ落ちる。

 通路には、もう敵の気配は残っていなかった。


「……やっと……終わった……!」

 リディアが槍を杖のように突き立て、肩で息をする。


「本当に……長ぇ戦いだったな」

 オルフェが大剣を地面に突き立て、天を仰ぐ。


「やっとこれで、地上へ戻れるね」

 レオンが短く言い、仲間たちはうなずいた。


 骨の山を踏み越え、五人は通路を進む。

 地上へ続く階段を一段一段登るごとに、冷たい地下の空気が次第に和らぎ、外の世界の匂いが漂い始める。


 ――そして。


 眩しい光が目に飛び込み、彼らはダンジョンの入口へと戻ってきた。

 夜空には星が瞬き、遠くに街の灯が揺れていた。


「……生きて戻れたな」

 アランがしみじみと呟く。


「今回は、少し無理をし過ぎたかな」

 セリウスも額の汗を拭きながら点を仰ぐ。


 五人は足を引きずりながらも街へと向かい、やがて冒険者ギルドの扉を押し開いた。


 酒と喧騒の広間に姿を見せた瞬間、場がざわめく。

 全身泥と血にまみれた一行の姿は、何より雄弁に彼らの戦いを物語っていた。


 ざわめきが広がる中、五人は受付まで歩み寄った。

 受付嬢が目を見開き、慌てて立ち上がる。


「報告と、成果の確認をお願いします」


 アランは頷き、背の袋を重々しく机の上へと置いた。

 ごとり、と鈍い音を立てて転がり出たのは――煌びやかな装飾を施された指輪、青白く輝く拳の魔石、そしてそれより二回りほどの大きな魔石。


「これは……!」

 受付嬢の声に、五人は顔を見合わせる。高価買取の期待が高まった。

「この品については、私では分りかねます


「おい。もしかしてかなり高価なものなんじゃねーか?」

 オルフェが期待のこもった笑いを向ける。レオンが当然だろうという視線を送った。

「ブルーの魔石は色が良いし、もう一つのは特大です。安いはずはないでしょう」


 ほどなくして、ギルド付の鑑定士が呼ばれた。

 白髪交じりの老魔術師で、片眼鏡をかけた人物が机に腰を下ろし、一つひとつ品を手に取る。


「ふむ……まずはこの指輪から」

 指輪を光にかざし、呪文を唱える。淡い光が石の部分から広がった。


「……これは《魔導師の指輪》。装着者の魔力操作を安定させ、魔法の詠唱を補助する品じゃ。希少価値は高いぞ」


 リディアが思わず小さく息をのむ。

 アランが皆を見回し確かめる。

「これは、レオンに使ってもらおう。魔法が使えるのはレオンだけだからね」


「いいんじゃねーか」

「俺もそう思う」

 オルフェとリディアが同意を示した。セリウスも静かに頷く。


 続いて鑑定士は、青白い魔石を手に取る。

「ほう……これは上質な《蒼晶石》。高位の魔導具の動力源として使える。市場に出せばかなりの値が付くじゃろう。まあ、ギルドで買い取るなら三百万ゴールドというところかの」


 そして、最後に大きな魔石を前に置いた。

 老鑑定士の顔が険しくなる。


「……これはただの魔石ではない。強大な魔力の媒介石……儀式の核として扱われていた可能性が高い」


 周囲がざわめく。


「召喚の源か……」とアランが低く呟く。


「大きすぎて値段をつけるのが難しいのう。二千万ゴールドは、下るまいが、オークションにかけた方が良い品じゃな。ここで買い取るなら二千万ゴールドということになるが……どうする」

 鑑定士が断言した。


 五人は顔を見合わせる。

「どうする?」

「オークションでいいんじゃねーか?」

「僕もそう思います」

「私もそれでいいよ」

「決定だな。俺も、わくわくしてきたぜ」


「じゃあ、青い魔石は買い取りで、大きい魔石はオークションでお願いします」

 アランが手続きを依頼した。


「じゃあ、とりあえず三百万ゴールド。それからオークションは一月後になるが出品者は会場で見ることができるぞ。興味があるならチケットを渡そう。」


「はい。お願いします」


 アランは、三百万ゴールドと指輪とオークションのチケットを受け取った。




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