電流計は?夜眠れないのでアナログとデジタルのことについてぼんやりと考えてみたら迷走した(3)
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1970年代には「時計は針表示ならアナログで、数表示ならデジタル」という理解が広まっていたことが分りました。
時計メーカがデジタル腕時計と称する製品を販売し、広告を出して宣伝して、それらが広がったからでしょう。
1996年の雑誌を読んでたら「消費者がデジタルを意識したのはデジタル腕時計が最初だろう」という趣旨の説明があった。見たら分かるでしょ!という感じか。
第2仮説が必要でしょうか。
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例えば電流計。(1)で出てきた可動コイル形電流計です。
乾電池と豆電流やマブチモーターとかを電流計につなぐと、電流に応じて針がピコーンと動いて適当な位置で止まる。その目盛を読んで電流の測定値を得る。だけれども針の位置は電流に相応して連続的に動くので、目盛と目盛の間に止まることもある。その値をどう読むのか。
学校では目盛の10分の1までを「目分量」で読み取るように教わった。得た値が 12.3 mA(フルレンジ 50mA で目盛は 1mA)のとき、他の人は 12.2mA と読み取るかも知れないし、12.4mA と読む人もいるかも知れない。
これがアナログ式の電流計で測定するということなのだろう。
なお、アナログ式の電圧計は電流計と大きな抵抗(内部抵抗という)を組合せたものです。電流計がベースです。
電流計と電圧計は直列接続と並列接続があって、使い方に注意ね。
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電流計にはデジタル式のものもあります。
というか最近のテスターはデジタル式が多いですね。デジタル式は自動で測定レンジを切り替えてくれて、アナログ式より細かい桁まで数値で表示してくれて、値の読み取りが楽です。
デジタル式の電流計は流れる電子の個数を数えているのではなくて、電圧計と電流プローブ等とを組合せたものです。電流を電圧に変換して、電圧計で測定して、得た値を換算して数値表示しているようです。デジタル式の電流計は電圧計がベースなのです。アナログ式とは逆ですね。
電流プローブとはホール素子や変流器(Current Transfomer、CT)などです。シャント抵抗を使うこともあるそうです。いずれにしても電流を相応する電圧に変換して、電圧計で測定するのです。
デジタル式の電圧計の心臓部は、アナログ・デジタル変換(Analog-Digital Conversion、ADC)です。
ADCには幾つかの方式があって、その1つに、コンパレータ(電圧の比較器)で基準電圧との大小を比較して二分探索的に電圧を求める方式があります。
測定レンジを 0〜5.12V とします。まず最初は測定したい電圧を 2.56V と比較します。小さければ次は 1.28V と比較します。電圧が 1.28V より大きければ 1.28V と 2.56 V の中間の 1.92V と比較する、...と言った感じ。これを求めたい精度まで繰り返します。9回繰り返せば 0.01V 単位まで求まります。これを逐次比較型といいます。
実際の電圧計はもっと工夫した方式で実装されてますけど。たぶんね。
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コンパレータは、2つの入力と電源(正と負)と、1つの出力があり、2つ入力の大小によって、1(正電圧)か0(負電圧)を出力するアナログICです。トランジスタを使ったものとCMOSを使ったものがあります。
アナログな入力(電圧)を扱うアナログ回路なのですが、大小を判定して1/0を出力するところにデジタルっぽい気配がしますね。
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電流計を初めて作った人は?
1820年4月21日、デンマークのエールステッド(Hans Christian Oersted;コペンハーゲン大学正教授)が電流が磁針に力を及ぼすことを発見。約3ヶ月後に発表。
フランスのアンペール(André Marie Ampère;パリ大学)は、エールステッドの発表を知った1週間後、電流のことを「電流」と命名して、アンペールの法則とか右ねじの法則を発見して、9月18日に論文を提出。...! 論文を1週間で書けるのか。
ドイルのポッケンドルフ(Johann Christian Poggendorff)は1820年9月に、1巻きのコイルの中心に磁針を置いた電流計を考案したそうです。当時24才。
その直後に同僚?のシュバイガー(Johann Salomo Christoph Schweiger;ハレ大学教授)も初めて検流計()を発明。当時41才。
電磁気関係なら、だいたい1820年から。
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例えば温度計。温度の単位であるケルビンもボルツマン定数によって定義されているけど、普通はアルコールなどを使ったアナログ式。温度に相応して体積が変化することを利用している。細い管に目盛が付いていて、赤く着色されたアルコールの到達した先端で温度を示す。
バイメタルという温度に相応して湾曲する金属を使ったものもありますね。メタルの先に針が括り付けられていて温度によって針の角度が変わって温度を指す。これもアナログ式。
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デジタル式の温度計もあって、熱電対やサーミスタなどの温度センサを利用している。
温度センサは、温度による起電力や電気抵抗が変化することを利用したもの。測定方法はアナログ式だけど、センサの出力は2パターンあって、アンプなどで適切なレンジに変換した電圧で出力するアナログ式と、ADCした値を出力するデジタル式(I2Cとかで)がある。電圧出力のセンサでも温度計側でADCして液晶パネルなどに表示する。
熱電対をアナログ式の電圧計につなげて温度計用の目盛を用意すればアナログ式の温度計になるけど。販売されているのかな? デジタルマルチメータ(デジタルテスタ)に熱電対が付属しているものは見たことがある。
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アルコール式の温度計の中身ですけど。
着色したアルコールだと思っていたのだけど、Wikiでは「灯油」になってる。2012年に石油に編集されたのがリバートされて、もとのアルコールと灯油に戻って、2015年4月に灯油のみに(アルコールが削除)。ノートを参照するとアルコールか灯油らしいけど。ほとんどが灯油とか。
検索してみると、灯油ですと言うブログ?が多数派。割れた温度計から漏れた液は水に浮くという証拠の写真まである。
あと、化学辞典第2版では普通は「灯油」だと明言。平凡社の百科事典では「実は、多くの場合石油」とも。「実は」!
始めはアルコールだったのが、いつの間にか灯油になっていたのですね。
最初のアルコール温度計は1641年頃、フェルディナンドⅡ世が作ったらしいです。
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電流計や温度計でのアナログとデジタルは、相応するアナログな値として表示するか、計器側で変換した数値を表示するかという違いがある。変換とはADCのこと。
ならば、デジタルかアナログかは測定方法(第1仮説)ではなくて、表示方法によっても違うと言うべきか。これを第2仮説としましょう。
第2仮説: 何かしらの数量を「数値で表示したらデジタル、それ以外で表示したらアナログ」です。それ以外とは目盛と針の位置などです。
でもなー
クォーツ式の腕時計でいうアナログ式は、電流計や温度計のアナログ式とは違うように感じられてモヤモヤしますけれど。デジタル式の電流計や温度計はアナログ式と測定原理が違うし、内部でADCしているからデジタルなのかも知れないけれど。
うーむ。とりあえずこれで行きましょう。
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ADCは天秤と似ていますね。
天秤は、重さを数えてはいないけれど、どの分銅の組み合わせと同じになるかを調べているのは数えているのと同じだと看做せるかも。だからデジタルということで整理してはどうかとも思うけど。
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ところで、アナログ式の電流計や温度計でも、その目盛を読み取った測定値は数値なのだからデジタルと考えるべきでしょうか。
人が処理した値でも、計器内でADCした値でも、その質に違いはないはず。切り捨てなどして目盛と同じにすれば曖昧さを少くなるできる。目盛線とギリギリでどっちにするか微妙な場合もあるけれど、これは計器内で処理しても微妙な場合があるのは同じでしょう。デジタル式の電流計でも最後の桁が揺れて決まらないことってあるよね(機器によって違います)。
この点、アナログ式の温度計を写真で撮って並べれば、これなら本当にアナログですね。
そう言えば、地震計は振り子のおもりの先にペンを付けてロール紙に記録していて、アナログ式ですね。調べて見たら今ではデジタル式もあるそうです。
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第1仮説と第2仮説は両立するケースが多いと考えられます。
数えたなら数値になるのだから、そのまま数値で表示したらデジタルですし、量りたい値を何か相応させて目盛を付けて表示すればアナログになるからです。
この仮説の検証は今後の課題です。
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間違いの指摘とか疑問とか、ご意見・ご感想とかありましたら、どうぞ感想欄に!
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2024.3.30 電流計と温度計について加筆。
2024.4.9 タイトルを修正。
2024.4.25 推敲を少し。
2025.4.17 推敲。