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フォーリンズレポート  作者: 柴太郎
3/3

episode00 始まりの終わり 3

少年隊長がついた時には全てが終わっていた。


言葉通り全てが。


「…」


登り始めた太陽が照らしたものは少年隊長を黙らせるには十分な光景だった。


フォローズの動きを停止させ、周囲を窺っていた少年隊長が見たものは、たった数分前には自身を案じていた隊員たちがフォローズと共に無惨にも引き裂かれていたものだった。


ボロボロに破壊された隊員たちの中心にはウラノスのマークを型部分に彫られていた一機のフォローズだった。


「ッ…」


先ほどまで部隊を持つ隊長だった少年にとっては反吐が出るほど残酷な光景だったが、皮肉にも朝日に照らされた海面と隊員たちのフォローズの残骸は光によって煌めき神秘的な光景を作り出していた。


その美しさによりさらに少年の遅れていた怒りを増幅させた。


「貴様ッ!貴様がぁああああぁっ!!」


怒りを発露させた少年は一目散にたった一機の敵へ向かっていった。その距離は本当に僅かだった。


「ッ!やはりきたかッ!スペシャリッシマ!」


少年の急接近に気づいた敵はすかさず臨戦状態となる。この僅かな動作から見てもかなりの手だれであることが伺える。


「殺す!絶対にッ!!」


「いくらスペシャリッシマでもその機体のエネルギー残量、そしてその疲労度で簡単にこの私の命を取れると思うなッ!」


少年が右腕部に携えたFE実体剣を敵のフォローズの首に当てようとした瞬間、シュッという音と共に敵は姿を消した。


「ッ!これは!?」


(そうか、これがこいつのP2効果か!だからあの時F3Sに引っかからず俺の部隊のところまで!)


シュッ バゴオォ!


「グゥッ!」


少年は突然背後に現れた敵にフォローズの後背部をFE実体剣によって傷つけられる。少年にとって稀に見る損傷であった。


「そうだ、これが私のP2効果。ザ・テレポーターだ!フォーリンのエネルギーと引き換えにF3Sの感知範囲内ならあらゆる場所へ移動できる。」


敵は淡々と己のP2効果の内容を語った。


「なんだテメェ…自分からペラペラと。舐めてんのか!?」


「いや違う。これは餞別だ、スペシャリッシマよ。その声から察するに相当若いな少年。

君の名前はこちらウラノスのフロントにも轟いていた。あまりにも恵まれた戦闘向きの心身とセンス、そして数ある中でも最強と謳われていながらその詳細は誰も知らないP2効果。はっきり言ってその才能にはかなり嫉妬していた。仮にも私もFL士官の中でもトップクラスと謳われていたからな、君が名を轟かせる前までは。フッ、愚かな大人だと笑ってくれてもかまわんよ。」


「貴様…突然ベラベラと。まさかそんなくだらないプライドのために俺の部隊員を!」


少年は敵をものすごい形相で睨みつける。


「残念だが、半分不正解だ。あくまでも私は貴重なフォローズと部隊を任された士官だ。もちろん最優先は君たちがウラノスから持ち出そうとしているアレの奪還だ。」


「なら取られる時点で俺に向かってこいよッ!こんな汚ねぇ手を使いやがって!」


「正攻法では君に勝てないことはわかっている。現に君は囮を引き受けてくれた私の隊員たちを悉く全滅させ、ここに向かってきた。」


「君の隊員にももちろん私の隊員にも申し訳なかったが、それだけ君が化け物だということだよ。」


「そうかよッ!」


「グッ!」


少年は瞬時に敵とのに距離を詰め、FE実体剣によって敵のフォローズの右肩部を削り飛ばした。


敵もその後にすかさず自らの実体剣を少年のフォローズの頭部めがけて振り下ろした。


少年もまたそれを実体剣によってガードする。


これにより両者は拮抗状態となる。


「奪取時による戦闘、私の部隊員たちによる足止め、そして味方の死。これらを受けてもなおこの膂力本格的に化け物という事実を帯びてきたな、少年ッ!」


「うるさいッ!黙って死ね!」


バンッ!


少年は敵を後方へ押し出すと、再び高速で実体剣を敵のフォローズの右腹部へ向かって振るった。


「甘いッ!」


敵のフォローズの炉心が一瞬強く紫色に輝く。P2効果が発動した合図だ。


その効果によって再び敵は少年の背後を取り、実体剣をパイロットルームめがけて突き刺そうとした。


(もらった!いくらスペシャリッシマといえども大振りの攻撃を出した後は一瞬だが隙ができる!これで後はアレを回収すれば任務遂行だ!待っていてくれ!アンナ!)


「…」


勝利を確信し、ウラノスで帰りを待つ身籠った妻を考えた敵は、次の瞬間にはそのすべての考えを誤ちだと訂正した。


グシャアァ!とても大きな音が海面上に響いた。


「あ、あ、あぁ。ブゴァアアッ!!」


そこにはつい数秒前まで少年の背後を取り、突き刺そうとしていた敵が逆に少年によって背後から突き刺されていた姿だった。


敵の口と空いた腹の穴の隙間から流れ出た大量の血がぶち抜かれたパイロットルームの穴を通って海面に落ちていく。


目の前に撒き散らした自らの血を眺めながら敵は苦しそうにつぶやく。


「な、んだ…なにが…」


「…俺はな、お前の部隊の連中に足止めをくらってP2効果を使ってからこの瞬間までずっと効果を継続させ続けてたんだよ。」


少年はゆっくりと微かに憎しみを込めながら語り出した。


「そ、そんなことが…だが、ならど、どうやって私を…」


「客観的に見ればお前の考えは間違っちゃいねぇ…奪還作戦としては十分だ。だがな、そんなあんたが言うように俺は化け物なんだよ。どうしようもなくな。」


ブスゥッ!


少年は刺さっている実体剣を背後から敵の体ごと敵のフォローズの奥へさらに押し込んだ。


「ガッ!ブハァッ!?」


さらに血を吐き出す敵。


「これが俺の能力だ。お前の力を頂いた。いいか?俺のP2効果はな、------------なんだよ。」


「そんな。ことが、そ、そうか…それが君を、こ、ここまで。」


敵は今にも息を引き取りそうな予感をさせる声を出しながら少年の能力について案じた。


「なら…私らはに、任務を半分達成したな…少年よ、君の、そ、その能力は……」


君をいずれ破滅させる。そう伝えようとする前に敵は息を引き取った。


彼らに与えられた任務は実際には2つ。


1つはもちろんアレの奪還。


そしてもう1つは15歳にして最強と謳われている少年の抹殺だった。


敵は少年の能力を聞き、その能力によって少年は少年自身を破滅へと導くだろうと思い至り、最期に一瞬だけ妻のアンナのことを考えて息を引き取った。


グッ、スウゥ


少年は敵から実体剣を抜き取り、海へ落下していく敵のフォローズを静かに眺めていた。


「…餞別返しってやつさ。俺も教えたんだからこれでフェアだろ?…」


「…全て、終わったよみんな。これでお前らは任務を達成できたんだ…」


すでに海の中へ沈んでいった隊員たちのことを思い、少年は目頭が熱くなる。


幸いにもアレが収められたボックスは海面に全て浮いていた。


自らのフォローズにアレを全て括り付けた少年は赤く腫れた目を再び擦り一瞬だけ隊員たちが散っていった海面を眺めた。


彼は任務開始の時とは違い、今度は1人でウラノスとイザナギのフロントラインを跨いだ。





















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