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フォーリンズレポート  作者: 柴太郎
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episode00 始まりの終わり 2

未知の飛来物質「フォーリン」の発見から瞬く間に人類は研究を開始。


フォーリンそのものの解析はもちろん、フォーリンを用いた産業開発など多岐にわたって研究は進められた。


そして、ある時フォーリンの超常現象を発生させるには所有しているものの意思、特に闘志が必要であることがわかった。


このフォーリンの特性を最大限に引き出せ、成果を上げられるのは軍事転用だと各フロントが気付き始めた頃、ある開発者が抜きん出た才能を発揮する。


フォーリンの特性を活かし切れるのが軍事関係であることを早々に見抜き、その上でさらにフォーリンが自らの研究対象であるロボット工学とが最もマッチしていることにも気付き、地球上で誰よりも早く開発を進めていた。


そして、その研究者は自らが暮らす「イザナギフロント」の軍事研究所にスカウトされ、人類史初のフォーリンを動力源とした軍事戦闘用搭乗型ロボットが完成させる。


その研究者の名前と「フロントライン間交流軍士官」略してFL士官の戦いをフォローするということにちなんでそのロボットは「フォローズ」と名付けられた。


そしてフォローズはフロントライン交流会の「交流」と目されている争いにおいて主戦力兵器となった。


このフォローズの登場により人類は再び、限りあるフォーリンも含めた物質をめぐってフロント誕生以前の戦争に徐々に近づきつつある戦いを繰り広げていった。


そして時は2200年になりかけの頃、イザナギフロントとウラノスフロント間におけるフロントライン間交流会での出来事。


夜明け間近上空にて。


「隊長ぉ!こっちのフォローズもう限界です!」


20代後半にもなっているであろうFL士官が自らの隊長へ救護の要を発していた。


(夜明けが近い。もし朝日に照らされて、こっちの位置がウラノスの奴らにバレでもしたら、俺はともかくすでにフォローズが大破してるこいつらはまず助からない。)


「チィッ!」


舌打ちをしながら自らの命よりも隊の安否を案じている今年で15歳になる若すぎる少年隊長はこの状況を打破する策を考える。


「あなたならできるわ。特別だもの。」


士官学校へ入る時に母に言われた言葉。


「君にFL士官の中でも特別である証、 「スペシャリッシマ勲章」を授ける。これからは実戦にて励むといい。」


特別式典で士官学校長に言われた言葉。


「君は特別だッ!ぜひ、ぜひに君の体を研究させてくれぇ!フォローズのためなのだぁ!」


実戦にも慣れた頃出会った自らがフォローズを開発したと宣う小汚いおっさんの言葉。


「そうさ、俺は特別さ。特別だからこそこのクソッタレの戦いの歴史を終わらせる権利と義務がある!俺だ、俺だからこそこの戦いを終わらせられるんだぁああ!」


少年隊長はそう叫び、自らのフォローズを敵がいるであろう後方へ旋回させた。


「隊長ッ!?何を?!」


隊員たちが少年隊長の唐突な行動に驚く。


「お前たちは先にイザナギへ戻れ!俺はウラノスの奴らを全滅させてから行くッ!」


「そんな、、無茶ですよ!いくら隊長でも敵は30機近く残ってます!」


若い女性士官が少年隊長を案じ叫ぶ。


「ここで俺がやんなきゃ大切なもん抱えてるお前ら7人が助かる術がなくなっちまうだろうがっ!いいから早く行けよ!」


「で、でも…」


「行けッ!」


「…わかりました。隊長、どうか武運長久を」


隊の中でも寡黙で冷静沈着な20代前半の隊員が部隊前進の命を承諾する。


「へへ、いつも悪りぃな」


少年隊長は無理やりはにかんだ。


「どうか死なないでください。隊長!」


先ほどの女性士官が少年隊長の命を再び案じた。


「…おぅ」


隊員たちはイザナギフロントの方向へ飛び立っていく。


いくら齢15にしてイザナギフロントにおける最高峰のFLフォローズ士官と評されていても30機のフォローズを前に一丁前に啖呵を切ったぐらいでは緊張は無くならない。


少年はこの時初めて人生で死を直感した。


そして隊員たちがいなくなって10秒もしない内に夜明けを迎え、さらにその10秒後には29機のフォローズが少年隊長の元へ向かってきた。


(おかしい…。F3Sには30機って出てたのに。俺と会戦する前にどっかに行きやがったな…。)


F3Sつまり闘志感知システム(Fighting Spirit Sencing System)はある一定の距離まで、もしくはマーキングしたフォローズが接近してきた場合それらを自動感知し、パイロットへ知らせるもので、闘志によって作動するフォーリンの特性を逆手に取ったものである。


そのF3Sが先ほどまで捉えていたフォローズ一機を見逃すはずはなく、間違えなくそのフォローズの特有の超常現象つまりP2(Paranormal Phenomenon)効果であることが予想できた。


「イザナギのスペシャリッシマだな!?覚悟ォッ!」


殺意を抱き大量のフォローズが一気に少年隊長へFEフォーリンエネルギー実体剣を向け突撃していく。


「まずいな…残り一機が気がかりだ。だが…こいつらを残しておくほうがもっとまずい!」


少年隊長はそう発した瞬間、フォローズのコントロールレバーの操作によって自らのフォローズのP2効果を発動させる。


少年隊長のフォローズの炉心であるフォーリンが金色に強く輝く。


「悪いが、先に地獄へいってくれ!」


P2効果を発動させた少年隊長のフォローズはPE実体剣を振るごとに業火やエネルギー波などを発生させ、たった一振りで少なくとも5機以上は撃破した。


「はぁ…はぁ…相手らがP2効果持ちじゃなくて良かったぜ。予想よりも遥かに弱かった。命拾いってやつだな…」


戦闘開始から1分と経たずに29機のフォローズが解体された。


ある機は四肢部分を全て裂かれ、ある機はパイロットルームをパイロットごと一刀両断され、ある機は業火によってエンジン部を燃やされ、故郷で帰りを待つ家族の写真が貼ってあるパイロットルームごと爆発させられた。


そしてその解体されたうちの一機から雪崩れ落ちそうになっていた敵隊員を少年隊長はフォローズの腕で捕まえた。


「残り一機がいたはずだ。それもP2効果を使える隊長格のやつが」


「しらねぇよ…グゥッボハァアッ!」


少年隊長のフォローズの一振りにより大腸の一部が横腹から剥き出しになっているその隊員は血反吐を吐きながら答えた。


「ふざけるな…貴様は知っているはずだ。それとも大腸が飛び出るよりも痛い衝撃が欲しいか?」


「チッ…どこまでいっても悪魔だなテメェら…人様から大事な宝物を盗んでおいてよ…いいぜ教えてやるよ、うちの隊長様はその宝物を取り返しにいったんだよクソが」


(やっぱりそうきたかクソッ!早くあいつらのとこに戻らねぇと!いくら俺がここ数年で鍛えてきてやったとしてもアレを奪うために大ダメージを負っちまってる。そんな時にこいつらの隊長格が来ちまったら…)


「悪りぃな、お前らはここで死んでてくれよ。ただ、地獄で俺の席の予約も取っといてくれてかまわねぇぜ。どうせいつ死んでもおかしくないからな。」


そういうと少年隊長は敵隊員を投げ捨てた。


「グゥッボハァッ!あ、あぁ予約は取っといてやるよ若けぇ悪魔さんよ…」


(悪魔、か…)


少年隊長はほんの一瞬だけ思案した後、自らの隊員たちがいるはずの方向へフォローズを全力で発進させた。


(俺のフォローズの炉心の光も薄くなってきてる…早くしねぇと!)





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