夢の中にて2
もう、半月以上の更新になります。本当にごめんなさい。この作品もちゃんと完結して、載せたいのでよろしくお願いします。
そうして、俺は彼女のサボりに付き合わされてしまう。
これでは皇帝陛下にしかられるというのに。
「まったく、柴犬さんは仕事をサボって悪い子です」
「たぶん、貴方のほうが悪人ですけどね」
そんなふうに返されることも予測して楽しんでいるのだろう。
将来は国を手の平で転がすことができる悪女になりそうで恐い。
けれど、彼女はそんな様子も見せずに微笑んでいる。
「私たちは共犯ですね。悪い人たちです」
共犯という響きに、俺たちは不可思議な連帯感が結ばれていた。
たぶん、彼女はそんな物がほしくてしょうがないのだろうか。
「ここです」
彼女が俺に付き添ってほしいといったのは、一つの白樺の木。
その木はたいして見所のない、むしろ、冬の白樺は枯れ木にしかみえない。
彼女がどうして俺を連れてきたのかわからない。
「この木は?」
「内緒よ」
そんな言い訳を俺にささやいた後、ナーシャは白樺の木に足をかけた。
慣れているとにするすると。
「えっ。ま、待て、ナーシャー!」
俺の混乱を笑うようにナーシャは止まらない。
ここは、彼女に怪我をさせないように、落ちてこないように備えるが。
それは杞憂だったようだ。
ナーシャは白いドレス姿でスルスルと登ってしまう彼女の体力には驚かされてしまう。
そうして、彼女はあっという間に、白樺の天辺にのぼりきっていた。
「ねぇ。はやく上っていらっしゃいな。柴犬さん」
見下ろして、俺に手を振るナーシャ。
どう考えてものぼるしかない状況に俺は観念し、脚をかけてはね上がる。
俺は彼女の手近の枝に足をかけて着地。
「お見事」
「やめてください」
憮然とした表情で、ナーシャにかえしていた。
そんな俺の反応すらも、彼女は楽しんでいるようだ。
彼女はきっと質問を持っているのだろう。
だから、俺は意図に乗るように俺は彼女に問いかけた。
「なぜ、こんなことを?」
彼女はすぐに答えずに、足をプラプラさせて本当にご機嫌だ。
しかし俺のとがめる視線に、しょうがなさそうに眼下を指差した。
そこにあったのは、ルーシフの町。
宮殿は丘の上にそびえるために、一望することができる。
まるで、王都の平和をうたっている。
石で作られた巨大な建物が埋め尽くして、景色はまさに圧巻。古くからある石造りの町並みは美しい。
金で飾られた聖堂は陽光に照り返され美しく輝いていた。
「すごい」
「でしょ。ここは私のお気に入りなの」
ナーシャは誇らしく、笑顔を向けた。
俺の気分も、なんとなく嬉しくなってしまう。
そうして彼女はカメラをとりだし、その景色を収めていた。
今もっているのは薄いデジカメというあたりが、彼女の用心なのだろう。
ほんとうに何かが間違っているとおもう。
俺はどうしても聞きたいことがあった。
けれど撮影に夢中になっているナーシャに聞くことはためらってしまう。
聞くのは後でいいのだろう。
なんというか、彼女とこの景色を見ているのが宝物のように美しく感じていた。
執事とお姫様はとてもいいですね。主従関係はいいなと思い書いてます。もとになったロシア皇女アナスタシア。彼女のイメージ、せめて変わった世界の中で残ってほしいと思っています。せめて、こちらのナーシャの話を進めたいと思います。