夢の中のお姫様 2
赤いカーネーションは日本やアメリカでは母の日に母親に送る物ですが、ロシアだと若干変わります、墓前に供えたり、また、兵士が帰還した時に渡す花でもあります。
ここでロレンツに手渡し事により、彼の戦いが終わったことの象徴になります。
俺の傷はたいしたことがなく、軽いリハビリを続け様子見ということになった。
改めてみても白い部屋。
彩りはさきほどのカーネーションの赤。
レジーナが甲斐甲斐しく、俺の服をたたんでいる。
家事がうまい妹に羨ましいといわれるが、見張られているみたいだ。
「兄さんはもっと私に感謝するべきだよ」
などと調子に乗り出すから困ったものだ。
「記憶があいまい。」
しかし、俺が一人残り、撤退戦をおこなうことがなにかおかしい。
「俺の戦いの最後の記憶にあるのが、雪が降り続ける荒野だった」
そんなふうに俺が口をひらくと、心配そうに俺をみおろした。
なにかまちがったことを行ったのかと、警戒する。
が、レジーナは目じりに涙をうかべていた。
「兄さん。まだ記憶があいまいなの。ヴォールグラードは大都市なのに」
慈悲深くさとされるとそれ以上なにもいえなくなり、俺はだまりこむ。
しかし、記憶のなかにあるのは凍った岩場をふみつけた感覚。
俺がおかしいのか、記憶がおかしいのか。
「三年はながいな」
オッドゲイルがつぶやく。
その三年という言葉に、自分の中で違和感がつのっていく。
体はすぐに治ったというが、意識を取りもどすのに三年もかかった。
しかし、その三年になにがあった?
今わかるのは、戦争に勝ったということ。
「……なにか、今までのことがしりたいんだが」
「そうだね。少し待ってて」
レジーナは耳元の端末でコールをおくる。
耳元につけている端末はC・ie(人工知能)をつなげたネットワークをあやつることができた。
これのおかげで、生身の人間がオートマトンに命令をおくることができる。
端末における命を受けたオートマトンが俺達のまえにあるいてきた。
オートマトンは人間そのままだ。ただ、頭部の送受信用のアンテナと背中からでるコードだけが人とのちがい。
自然な笑顔から三年の進歩がわかる。
「寝ていた時のことがわかる資料を持ってきてくれ」
「かしこまりました。部門は資料・歴史ですね」
彼女が検索すると、手持ちのカートから。
『三月帝国十年史』という本をとりだした。
その分厚さは百科事典なみ、重量は八百グラムぐらいあるのではないだろうか。
「ねぇ、もう少し読みやすいものでいいんじゃないかな」
レジーナの困ったように笑う。
意識をとりもどした人に渡す本の重量としては最悪だ。
ページ数としても千ページを超えるかどうかという厚み。
しかし、ここまで便利になり違和感のないオートマトンをみていると三年の月日をおもう。
「ほとんど、オートマトンは人間とかわらなくなっている」
俺のつぶやきにレジーナが笑う。
「なんというか、床若の国にいって帰ってきたら三百年たっていたオーシンの話を思い出すな」
オーシンはケルト神話の騎士だった。
ある時彼は、狩の途中で美しい女性に結婚をもうしこまれ、オーシンは異界にわたり三年の月日をすごした。
やがてオーシンに里心がつき国にもどるが、そこは三百年の月日がたって故郷は滅んでいたという話。
たしかに、俺は三百年ぶりに帰ってきたオーシンというわけだ。
「さすがに三百年は疲れたね」
長話をするほどの体力は回復していない。
「じゃあ。寝かしてもらおうか」
なんだか、異物感がただようが、目覚めたばかりのせいか。
けど、三年ぶりにおきたにしては対応があっさりとしすぎている。気のせいか。
そんな考えのまま、俺の意識は闇におちた。
この辺りからSF要素がてできます。オートマトン、いわゆるロボットですね。
今のところ、精巧なオートマトンはでていませんが。AI技術の発展により代わっていきそうです(笑)
ロレンツが戦っていた戦場のモデルは第二次世界大戦の独ソ戦、戦場はスターリングラードのイメージですね。
スターリンVSヒトラーという、独裁者同士の後世的にどちらも負けてほしい戦争だったりします。
ちょっと前の本屋大賞になった「同志少女よ 敵を撃て」の舞台で、つまりこの世界のモデルは戦後すぐの時代だったりします。
あと見てくれるだけでもとてもうれしいですので、琴線にふれたらナイスやコメント、ブックマークよろしくお願いします!!