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僕の悩み物語

作者: セイカ

どうも、お疲れ様です!最初に注意事項としてLGBTの話が含まれています。苦手な方はお気をつけください。

初めて作品を投稿しますので、文構成などがめちゃくちゃだと思いますが、どうか暖かい目で見守ってください。

同性愛。それは自分の性別と同じ性別の人を好きになること。僕もその一人で昔から男の人しか好きになったことがなかった。悲しかったのと同時に納得がいった。

今まで異性にときめいたことがなかったのだ。





今日日曜日は友達と遊びに行くことになっていたが、待ち合わせ時間10分前に着いた僕のところに来たのは友達のドタキャン電話だった。体調が優れず、すぐに連絡しようと思っていたらしいが、しんどくてそれどころではなかったらしい。

『本当にごめんな!』

「大丈夫だよ。お大事に」

友達の心配をしつつ、僕、加茂竜輝は暇になったことを悲しんでいた。

「これが恋人だったら少し辛いね……」

そんなことを呟く。今僕は集合場所だった京都駅の中央改札前に佇んでいる。一度その場を離れ、暇つぶしにぶらぶらと歩いていた。そんな時、ある電気屋に置いてあるテレビに目を惹かれる。内容は……

「今日、午後十二時。同性婚を巡る問題で総理は社会が変わってしまうと発言しました」

それはあまりにも不意打ちだった。心に氷柱のように冷たく痛いものが刺さった感覚がした。

「これ、何を根拠に言ってるんだろ……」

痛くて、苦しくて、悲しい気持ち。人間として生まれ、たまたま同性を好きになったというだけでここまで辛い状況になるなんて。もう真面目に生きているのも馬鹿馬鹿しくなる。

「僕らは生きてきただけで間違いとでも言うのかな?」

段々と悲しい気持ちが憤りの気持ちに変わっていく。なんでここまで差別をしていくのか不思議で仕方なかった。

大きくため息を吐く。その時だった。

「おい。君大丈夫か?」

とても低い男の人の声で話しかけられた。声のする方へ振り向くと、そこに居たのは高身長で黒い短髪をかっこよくセットした若い男性だった。顔もすごくかっこよかった。

一瞬僕に話しかけているのか分からなかったので咄嗟に自分に指さして確認すると、男性は頷いた。

「すみません。大丈夫です」

僕はその場から逃げるように離れようとしたが、腕を掴まれてしまう。

「大丈夫じゃないだろ?」

どうやら僕が平気では無いことを男性は見抜いていたようだ。腕を振りほどきたかったが、男性の方が倍以上の力があるようでビクともしない。

「とりあえず、離してください。痛いです」

「あ、すまん」

痛いことを訴えると男性は慌てて手を離した。

(今だ!)

離してもらって直ぐに僕は来た道を戻るように京都駅に逃げていく。後ろから「おい!」と言われたが、無視して京都駅に向かった。

流石に高身長イケメンでも知らない相手だから逃げるに限る。心配してもらったことに対しては感謝をしつつ、近鉄線の駅の改札口を通った。

そして偶然来た自分の家の最寄り駅に向かう電車に乗って帰った。





今日から1週間またつまらない学校に行く日々が始まる。

「昨日はごめんな! 次はちゃんと体調整えるようにするよ!」

教室に入り、席に着くやいなや、昨日遊ぶ約束をしていた友達である知也が謝りに来た。

「大丈夫だよ。でも次は気をつけてね」

僕はいつも通りの態度で接した。知也はお礼を言い、昨日のことを報告してくれた。

彼は昨日体調不良だったのでずっと寝ていたとのこと。体調が優れない時ってよく眠ってしまうよね。食事も消化に良いものしか食べれなかったから今回は少し大変だったらしい。

知也はそんな簡単に体調を崩すほどヤワな体はしていないから珍しいなと思う。

「おーい。HR始めるから席に着け」

そう言いながら教室に入って来たのは担任の先生だ。そして先生の後ろにはスーツの上からでも分かるくらい大きい体をした男性が入ってきた。そして僕は驚愕する。その男性に見覚えがあったからだ。

「えー。今日から特別講師として来た鈴木雅貴先生だ」

先生に自己紹介を促され、鈴木と呼ばれた講師は黒板に自分の名前を書いて僕達生徒全員に向かい合う。

「初めまして。しばらくこのクラスでお世話になります。鈴木と申します。期間の間よろしくお願いします」

自己紹介をして一礼をした鈴木先生に生徒から拍手が送られた。しかし、その中で僕は驚きのあまり拍手を忘れてしまっていた。

生徒達を見回した鈴木先生の視線が僕で止まる。そして彼も驚いたように目を見張ったが、他の生徒達に気づかれないように視線を外した。





午前の授業が終わって、お昼休みになった。僕は今のところ授業の内容がまともに入っていない。ため息を吐きつつ、お弁当の準備をして知也の席に行こうとして思い出す。

『そういえば知也今日生徒会か……」

知也は生徒会の会計をしているらしく、今日は会議だと言っていた。そんな時は一人で落ち着いて食べられるとっておきの場所へ行くと決めている。

教室を出てすぐの階段を降りていき、しばらく廊下を歩いていった先に体育館裏がある。そこは意外と人が来ないため、一人でいたい時はピッタリの場所。のはずだった……。

そこに待っていたのはあの鈴木先生だった。

「あ、君は」

僕は踵を返すように逃げようとしたが、あっさりと腕を掴まれて捕まってしまう。今そこで座っていたのになんて速さだ。

「待ってよ。この前のことで言いたいことがあるんだ」

「……なんでしょうか?」

逃げることは出来ないと観念した僕はとりあえず話を聞くことにした。すると、鈴木先生が腕を離したかと思ったら、突然頭を下げてきた。

「昨日は怖がらせてごめん!」

突然の謝罪に僕は戸惑ってしまう。なんて言葉をかけたら良いのか分からなかった。なので。

「いえ、大丈夫です。この間のことはお互いに忘れましょ」

とりあえず、謝罪に対しての答えを口にして無かったことにすることにした。その方がお互いに良い。

「それは出来ない」

予想外の回答に頭にはてなが浮かんだ。なんでダメなのか。その方が楽だというのに。

「どうしてですか? 忘れた方がお互いに楽でしょう?」

僕は思ったことを率直に言った。鈴木先生の顔を見ることが出来なかった。怒っているのか。呆れているのか。どちらにせよ理由が分からない。

「無かったことにしたら辛いという君の気持ちも無かったことになるよ」

一瞬何を言われたのか分からなかったが、その意味に気づくのに時間はかからなかった。鈴木先生の言いたいことが分かったのだ。

あの時、僕は同性愛のことについて辛くなっていた。苦しくて痛いものが確かにあった。それを無かったことにするということは自分の感情を見捨てるということだ。

「君は。自分の気持ちを見捨てたくないはずだよ。それが大事だということも……」

「うるさいです!」

鈴木先生の言葉を僕の言葉が遮った。それを聞くのが嫌だった。自分自身でも分かっていることだ。

この先生が今までどんな講師として教えてきたのかは分からないが、まだきちんと話して数分しか経っていない人から分かったような口を聞いて欲しくない。

僕はこれ以上この場にいたくなくて逃げるように走って教室へと戻って行った。

昼休みの教室は友達同士で話し込んでいるクラスメイトが多かったので、僕が戻ってきても誰も反応しなかった。

昼休みの時間もそろそろ終わりを迎えていたので、急いでお弁当のご飯とおかずをかきこんだ。





午後の授業はとてつもなく眠たかったが、なんとか耐えて授業の内容を聞くことが出来た。

放課後。帰りの準備をしていると知也が話しかけて来た。

「竜輝。今日俺帰れるから一緒に帰ろ」

嬉しい申し出に僕は頷いて了承する。そして電車の駅まで一緒に歩いて帰って行く。知也は高校に近いので自転車通学だ。

「竜輝。なんか元気ねえよな?」

駅の近くまで来た時に突然知也が僕の顔を覗き込みながら言ってきた。

「えっ? なんで」

「昼休みの前と後で全然顔色が違うからさ」

よく見てるなと思ったが、どうにか誤魔化そうとしたが、知也の視線がそれを許してくれなかった。仕方なく、白状することにしよう。

「僕、自分の辛いことを捨てたいはずなのに、それをすれば自分の大事なものも捨ててしまう気がして。どうしたらいいのか分からない……」

全てを言い切って知也の方を見てみると彼は何か考え込んでいる。余計なことを言ってしまったかもしれない。どう言ったものかと悩んでしまい、僕も黙ってしまう。

「辛いことと大事なものって見分けつかないよな……」

しばらく僕と知也の間に沈黙があったが、それを打ち破るかのように知也が話し出した。

「何がそんなふうに思わせているか分からないけど、自分が思ったことを行動に移せばいいんじゃね? 悪いことはダメだけどな」

とても軽い口調だが、言っていることはとても重要だと感じたし、僕はその言葉が少しだが嬉しく思った。正直、すべきことが分かったわけではないが、それを考えることで大分違うと感じた。




知也と駅で別れ、家の最寄り駅に到着して、家へ帰ってきた。

「ただいま」

「おかえり」

僕が帰宅の挨拶を口にすると元気で明るいお母さんの返事が帰ってきた。台所の方から声が聞こえてきたので晩御飯の準備中だということが分かった。お肉と調味料の絶妙なバランスの香りが鼻に流れ込んできて、それだけでも食欲をそそってくる。

「夕飯、もう少しで出来るからテレビでも見てて」

「手洗ったら手伝うよ」

お母さんが待っているように伝えたが、全部任せっきりにするわけもなく、洗面所で手をよく洗ってうがいをして、部屋で着替えを済ませて台所へ向かった。

「いつもありがとう。助かるわ」

「いいよ。いつも作ってくれてるし。そういえばチビは?」

僕がまだ作られていない味噌汁の準備をながら、我が家の飼い猫であるチビのことをお母さんに聞いてみた。

「チビならそこのキャットタワーのハンモックで寝てるわよ」

チビの居場所を指し示しながらメイン料理を作っていくお母さん。キャットタワーがある窓の方を見てみると、そのハンモックに収まりながら寝ているチビの姿があった。

よく眠っており、無邪気な寝顔が可愛らしい。チビはまだ産まれて十ヶ月なのでまだ子供だ。育ち盛りでヤンチャなのでよく噛み付いたりもするが、それだけ元気だということだ。

「今日学校はどうだった?」

「今日もいつも通りだよ」

いつもと変わらない会話をしながら料理をしていると、ついてあったテレビから音が聞こえてきた。

「本日、小嶋秘書官のLGBTQに関する差別発言によって問題となっております」

内容がまた僕の気持ちを暗くする内容だった。胸が痛い。頭が痛い。苦しい。差別発言のことを聞いただけでも気分が悪くなるのに、その発言に乗っかる人達がいるという事実も突きつけられてきた。更に苦しくなったが、お母さんに気づかれないように取り繕った。それだけでも心臓が張り裂けそうだ。

「あらま、こんなことがあったのね」

お母さんがテレビを見てそう呟いた。正直怖い。なんて言われるのか、どう思っているのか、知りたい気持ちと知りたくない気持ちが混同している。

「お、お母さんはどう思うの?」

「そうね……」

聞かずにはいられなかったのか、自分でも知らないうちに声から出てきてた。しまったと思い、思わず歯ぎしりをしてしまう。

「お母さん的には、この秘書官の発言は酷いと思うわね」

思いがけない言葉が出てきたのでバッとお母さんを見つめてしまった。

「LGBTQがどういうものなのか分からないけど、人が自分らしく生きていくだけで差別するのは良くないと思うの」

その言葉はとても暖かく優しい感じがした。この言葉だけで救われるなんて我ながら呆れるほど単純だ。

「それにこの乗っかってる人達、SNSで言ってるでしょ? 言うなら正面から言った方が良いと思うわ」

お母さんが冗談っぽく言ったが、僕もそう思う。

「お母さん。実は僕、同性愛者なんだ……」

LGBTQに対して否定的な話ではなかったからかもしれないが、お母さんがちゃんと自分の気持ちを話してくれたのだから僕も覚悟を決めることにした。

僕がカミングアウトをして、恐る恐るお母さんの顔を見てみると、彼女はフフっと笑っている。

「そうだと思った。お父さんもそうじゃないかと言っていたわ。話してくれてありがとう」

「失望しない?」

「何で? あなたがどんな人を好きになろうと、竜輝は優しい竜輝でしょ?」

その言葉で僕は涙が流れてきた。せっかく作った味噌汁に入らないように顔を背けて、涙を押さえ込みように両手で覆った。

「辛かったね。よく頑張りました」

お母さんが僕の背中をさすってくれている。それだけでも段々と落ち着いてきた。

「手伝ってくれたからご飯が早く出来るわ! 食べましょ」

お母さんはそう言いながらお皿などを取り出しておかずなどをよそっていく。僕もそれを手伝い、お盆におかず、お米、味噌汁が乗った器をお盆に乗せて机に運んで行った。今日もお父さんは仕事で遅くなってしまうので先に食べることになった。

その日の晩御飯はいつも以上に美味しく感じた。

晩御飯を食べ終わるとお母さんと他愛ない話をしていたが、勉強しようと部屋へと向かい、本などが積まれている机の前に辿り着く。

今日は数学の勉強をすることにしているが、その前に少し片付けようと机に積まれている本を持ち上げた時に一枚の紙が落ちてきた。それを拾ってみると、何かの手紙だった。

宛名のところに僕の名前で送り主はお父さんだった。

(お父さんから?)

何かと思い、ドキドキしながら開封して、手紙を広げてみるととても綺麗な字で書いてあった。お父さんの字だ。

『竜輝へ

最近仕事が忙しくてなかなか話せないからこうして手紙を書いてみた。驚かせてごめんな。最近体調が良くないように見えるが大丈夫か? 父さんと母さんで良かったら話聞くから頼ってくれ。父さんたちはお前がどうであろうと味方だからな。

父さんより』

「相変わらず、ただの手紙で大袈裟だね」

ただのやり取りにしては大袈裟だと思うが、お父さんの心遣いが伝わって来てとても暖かい気持ちになった。

「奇跡が起きた……」

今回のことで自分は恵まれていると分かってしまった。僕はたまたまこの暖かい環境にいられていることに対して感謝の気持ちを忘れてはいけないのだ。

今まで知られるかもしれないという恐怖をよく知っている。たまたまカミングアウト出来る環境にいられる、それだけでも幸せに感じれるのだから。

お父さんからの手紙を宝箱の中にしまって勉強するための気合いを入れた。




翌日はいつもより早起きが出来たので、とても気持ちの良い朝だ。ちょうどよく今日は日直をしないといけないので早めに学校へ行くことにした。

学校にたどり着くと、職員室に日誌を取りに行き、その後は教室に向かった。その途中にある人物と出会う。

「加茂……」

鈴木先生だった。昨日のことで少し気まずいが、ちゃんと面向かって話す良い機会だ。

「おはようございます。鈴木先生」

僕の挨拶に先生はぎこちなく挨拶を返した。

「昨日は……その……」

「先生。昨日と前はすみませんでした。そしてありがとうございました!」

鈴木先生に今伝えるべきことを話した。先生はキョトンとしていたが、すぐに表情が柔らかくなり、ハハと笑った。

「こちらこそありがとう……何か良いことでもあったか?」

鈴木先生が恐る恐る僕に聞いてきたが、その目は純粋に気になっているという目だ。その顔は失礼だが面白く感じたので、僕は満面の笑みで答えることにした。

「いえ、何も!」

そう言って僕は鈴木先生に一礼して教室へと向かっていった。その時の僕の足はとても軽やかだった。

この度この短編小説を読んで頂きありがとうございました!最近LGBTQ+に関するニュースなどがあります。その中で様々な意見があると思いますが、少なくともこのような人がいると知っていただければ幸いです!

改めまして、最後まで読んで頂き誠にありがとうございました!

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