1話 地球最後の日
俺は小さい頃から月を見るのが好きだった。
真っ暗な夜でも、月だけは俺たちを見守ってくれる。
俺はいつの間にか、こう思うようになっていた。
「───僕もいつか、暗闇のなかでもみんなを照らすような存在になりたい。」
しかしあの時、その夢は細い糸のように切れてしまった。
『ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、』
「行ってきます」
今日は12月25日、日曜日、クリスマスだ。
しかし、俺はいつもと同じ通学路を歩き、学校へ行く。
世間はクリスマスやらプレゼントやらでかなり賑わっている様だ。
が、俺は今までに一度もプレゼントなんか貰ったことないし、彼女なんてつくったこともない。
つまり、今日は俺にとっていつもと変わらない、なんてことのない日々の一日に過ぎない。
と、思っているわけでもない。
三ヶ月前、 小惑星が月へ衝突するということがあった。
その時は地球への被害はなかったものの、お偉いさんたちの計算によると、あと三ヶ月程で月が地球へ衝突するという結果が出たらしい。付け加えに、『衝突を防ごうにも術がないので──』、とも。
というわけで、俺たちは今日死ぬ。
周りが騒がしいのは、そのせいもあるかもしれない。
俺は雪が降るなか、一人で学校へ向かう。
学校へ行く理由は、「死に場所くらい自分で選んでいいんじゃね」という軽い気持ちがあったからだ。
学校に着いたが、勿論人一人居ない。
門は閉じているし、玄関の鍵も掛かっている。
が、地球最後の日にそんなこと気にしていてはキリがないので、とりあえず玄関のガラスを粉砕して中に入った。
教室に着いた。
が、勿論鍵が掛かっているのでドアを破壊し、中に入る。
「──────」
椅子に腰を掛け、周りを見渡す。
次々と頭に思い浮かぶクラスメイトの姿。
離れ離れになると思うと、流石に涙が出てきそうなものだ。
あぁ、出てきた。
そして俺は最後に屋上へ行くことにした。
勿論、鉄製のドアは鍵がかかっていたので壁ごと破壊した。
月がこんなにも近くに見える。
実際、結構、かなり、すごく近い。
が、今はそんなことより、静かに街を見た。
俺には一つだけ、心残りがある。
「みんなを照らす存在、か──」
まさか自分が憧れていたものに滅ぼされることになるとは、予想外も予想外だ。
「次はちゃんと楽しい生活が送れて、彼女が作れて、愛してもらえるような人になりたい。あ、それから、俺の夢を叶えてみたい。」
どれも叶うことのない夢。
まぁ、最後くらいいいだろう。
悪くない人生だった。
地が大きく揺れ、その後地球は滅んだ。
冷たい。
苦しい。
まるで水の中にいるような感覚。
必死に藻掻くが無駄だ。
それに目が開かない。
何も見えない。
あれから、かなり時間が経った。
瞼の外から微かに光が見える。
暖かい。
まるで優しさに包まれているような感覚。
俺は深く呼吸をし、目を開く。
そこには、新緑色に染まった草原が広がっていた。