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九話 色彩学園地下・神の繭コクーン

 コクーン内部での自爆怪獣との決闘が始まろうとしている――。


 始祖怪獣達が神の繭と呼ぶ「コクーン」とは色彩学園地下に広がる巨大な空洞の空間。全長五キロ、高さ一キロのエリアであり、その大半の地面は森林で埋め尽くされており、一部を怪獣対策避難エリアとして建造物があるだけである。非常用のエリアとしてはコクーンの開発は全く進んでいないと言うのが現状だ。


 理由としては怪獣討伐サポート軍がこのエリアにまで回す予算も人員も無いからである。怪獣は地上で倒すのが基本だから、このコクーンに対しての設備は防備は後回しになっていた。


 そのコクーンの大地に立つ巨人の一人、迷彩柄の自爆怪獣は片手に人質を掴んだまま狂喜していた。


「流石は神の繭と呼ばれるコクーン……怪獣としての本能が呼び覚まされ、全ての細胞が活性化し、自分という存在が溶け込むような安心感さえ感じられるな。還る場所……とでも言うのか」


 迷彩柄の自爆怪獣ソーイはコクーン全体の空気を吸い、この巨大な空間を味わうかのように言う。その反応に冷ややかな白い巨人・カラーアンデは、


「コクーンを堪能したなら、ツルコは返してもらおうか?」


「そうだな。ここまで来れば問題無い。女は返す。受け取れ」


「? やけに気前がいいな。そのツルコは爆弾というオチじゃないだろうな?」


「そこまで卑劣では無いさ。俺はまだ色彩学園の生徒一人も傷つけていない」


「それはどうかな?」


 感情の無い声でカラーアンデは答えた。意識を失っているツルコは地面に置かれ、警戒しつつもカラーアンデは受け取る。そして近くの避難施設の入口に置いてソーイの元へ戻る。


「隙はあったが攻撃しないとは。やはり人類を滅亡させるだけの目的が無い怪獣は一味違うか」


「始祖としての本能でもある。君は人間社会に溶け込み過ぎて、本来宇宙人であるのに人間としての考え方が染み付き過ぎているんだ。そもそも、怪獣とは単純な生き物で有り、あまり狡猾な事はしない存在だ。身体的に強い怪獣や宇宙人としての感覚を無くすと、身体的に弱い人間のヒーローになるのか。好物を与えられ、好きなアニメを見せられ、堕落した宇宙人と違い、俺はクリーンに仕事をしている」


 癇に障る言い方をされ、それを当たり前に受けてしまう事に目の前の自爆怪獣の言う通りだと思い恥じるカラーアンデは乱れる心を振り払うよう言う。


「貴様が傷つけてないのは身体では無く、心の問題だよ。怪獣にはわからないか」


「小賢しい事を。カラーアンデよ。自分とて今はヒーローだが、もし侵略行為をしていたら怪獣扱いだろうに。人間側に立っているからと言って、人間になれたと思うなよ」


 言うなり、自爆怪獣ソーイは爆弾を投げる。森林が爆弾で弾け飛び、カラーアンデはツルコのいる場所から離れるよう逃げつつ応戦する。速射型のVサインビームであるカラービームを撃ちつつ、肉弾戦を仕掛けようと迫る。


「ソーイ! 始祖怪獣の一人である貴様の目的は何だ!? このコクーンで何かを起こそうと言うのか!?」


「そうだ。退屈だろう? 今のこの世界は」


「退屈……だと?」


「世界は退屈だよ。怪獣は地球より遠い惑星において争いが続いているが、実際はもう惑星ごとの支配者は決まっている。まだ支配者が安定しない惑星は支配者になれる可能性があるが、無理して支配者になっても長続きせず次の支配者に殺されてしまう。なので長い目で見れば、宇宙はかなりの長い間膠着状態なのだ」


「!? 後ろに!?」


 目の前の爆弾の群れに気を取られていたカラーアンデは森林と同じ迷彩色に目が慣れていた為、背後に回り込むソーイの抱きつきを許してしまう。そのまま一気にエネルギーを蓄え、ソーイは自爆した。


「ボンボボボンポ?」


「カ、カラァ――」


 コクーン内に大きな爆発が起こり、赤い炎が上空へと舞い上がる。その爆発の余波をくらうツルコは目覚め、フラフラッとよろけつつも立ち上がる。大きなクレーターが生まれる中央で両手を上げるソーイは立ちすくんでいた。


「ちょっと自爆のタイミングをずらされた。やはり一撃では倒せないか。本気の自爆って結構痛いんで、次で死んでくれると助かるよ。ボン」


「自分の技を否定するよな事を言うのか。不思議な奴め」


 自爆によるダメージを受けつつもカラーアンデは爆心地から離れた場所で立っていた。爆発で黒くなる身体は致命傷ではないが、それでもエネルギーの限界が近づいており、アンノウン♪ アンノウン♪ という胸のカラースターから限界稼働時間が近い警告音が鳴り、カラースターの星を現す唐揚げがカプセル内でジャワっと揚げられ出す。


「死が近いかカラーアンデ。死ぬ前の音としては悪くない音だ。その音色の色彩のようにかつては色々な怪獣が宇宙にもおり、怪獣戦国時代でもあった。あの頃は色々な怪獣がおり、数は少ないが抹殺怪獣と呼ばれる怪獣抹殺種族が恐れられ、憧れを抱かれていた」


「……」


「俺はそんな怪獣が怪獣に憧れるような怪獣戦国時代が起きて欲しい。その為には始祖を生み出した親の復活を果たされなばならないのです」


「始祖の親……まさか『怪獣神』をか!?」


「始祖の怪獣が目指す事は自分の祖先である始祖が受けた恩恵をしっかり返す事です。始祖の思いに殉じるのですよ」


「怪獣神は破壊の神そのものだ! 宇宙そのものの神にでもなると言うのか? ふざけた事を!」


 すると、自爆怪獣の元へ手榴弾のような形の飛行物体が到着し、頭上にドッキングした。全身が震えているソーイの中にそのデータが流れ込む。


「いいデータだ。俺の中に素晴らしいデータが流れ込むぞ。俺が自爆しか出来ない単細胞ではない事に恐怖せよ」


「その額の手榴弾がいつの間にか無いと思いきや、まさかその手榴弾はデータを集めるドローンなのか? あの自爆怪獣コピーの怪獣爆弾達も、その手榴弾が生み出した兵器だとでも言うのか!?」


「……そうだ。俺の能力のマザーコンピューターはこの額のマザー手榴弾なんだ。よし、コクーン内における情報はおよそ得られた。あまり長くなると君の仲間がウロチョロし出す。話が長くなってしまったな。そろそろ死んで頂きたい。ボンボボボン!」

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