七話 色彩学園の地下・コクーン
それから三日後――。
チームアンデの調査により、学園各所に仕掛けられた爆弾トラップは解除された。それが全ての爆弾かわからない為に警戒を続ける中、その日の放課後に自爆怪獣の足取りが掴めた。
緊急避難所でもある学園地下に向かう列車の定期点検をする業者が、何やら怪しい人影を見たという報告が色彩学園にされた。学園長からその一報を受ける生徒会長カイヒロはすぐにチームアンデに知らせる。
チームアンデの全員は急いで業者の定期点検をした地下列車のあるエリアに駆けた。その先頭を走る二人組であるツルコは横のアンデに問う。
「おいアンデ君。爆弾魔は学園の地下に行こうとしているのか? 色彩学園の地下は何も無い大空洞のコクーンと呼ばれる場所。大半が森林であるコクーンは怪獣対策避難所としてしか利用していない。コクーンをアジトにするつもりなのか……」
「それとも、コクーンに何かがあるのか……」
後方を必死に駆けるヤイツとキックボードを使うメカハルを意識しつつアンデは答えた。そして、ツルコは一つの疑問点を口にした。
「ちょっと待って。本当に怪獣が人間サイズなら、間違えて人間を攻撃してしまう可能性もあるわ。あの怪獣を倒すつもりが、人間を殺してしまうかも知れない」
「高度な知識で暗躍する怪獣。まさか始祖の……」
「シソの? ぐっ――」
疑惑の顔をして呟くアンデに答えようとするツルコはアンデにタックルされ吹き飛ぶ。それを受け止めたヤイツは倒れた。受け身を取って転がるアンデは背後から走って来るメカハルに止まれ! と手で合図した。同時に爆発が全員に衝撃を与える。キックボードを捨てて座り込むメカハルはタブレットを叩き、周囲を索敵する。
『……』
目的地へ向かう通路は爆発による煙で満たされていて、奥が伺えない。まさか自爆怪獣が待ち構えているとは思わず、ツルコは爆発に巻き込まれる寸前だった。すぐに人間サイズに変身するべきか考えるアンデにメカハルは言う。
「……問題無いわよアンデ。熱源、毒ガス、異音、その他全てのレーダーはオールグリーン。次の指示はもう理解して動いているわ」
「そうだメカハル! 怪獣にコクーンに入られるのはマズイ! 地下エリアへの全ルートの隔壁閉鎖! 急げ!」
「学園のシステムはこのメカハルにお任せあれ」
タブレットを叩くメカハルは一気に学園の地下に移動する列車の全てのゲートを封鎖する。そして、その全てのゲート付近の熱源を探った。サードゲートに明らかに人間とは思えない熱源が一つ浮かんでいる。
「人にしてはおかしな熱源を発見したわ。おそらく人間に擬態してる怪獣はサードゲートからコクーンに侵入するようね。アンデはそこのダストを使って。怪獣のいる場所に出られるようルートを作るわ」
「ありがとうメカハル! ヤイツはツルコを頼んだぞ!」
ダストシューターの中で人間サイズへと変身ポーズを取る。そしてカラーアンデに変身し、奇襲をかけようと作戦を練った。
「怪獣が人間に擬態してるだけなら、強い衝撃を与えれば!」
ダストシューターから飛び出すと同時に、カラースカイクロスチョップをくらわした。首元に技が直撃した怪獣は突然の奇襲とダメージによって転がった。地面に立つカラーアンデはファイテングポーズを取りつつ、額に手榴弾があるアーミー柄の吊り目の顔をした軍人風の怪獣に声をかけた。
「やはり学園の生徒を乗っ取ってはいないか。そして、とうとう怪獣の顔が出たな。爆弾を使う怪獣か」
額の手榴弾が異様な雰囲気をかもちだし、身体は人間の軍人のような見た目をしているが、顔は誰がどう見ても怪獣であった。首元を抑えるアーミー柄の怪獣はもう逃げられないと観念したのか自己紹介をする。
「俺は自爆怪獣ソーイ。よくフェイクトラップに惑わされずここまで辿り着いたものだ。話に聞く限り、確かに怪獣にとって最大の障壁になりそうだ」
「貴様のトラップなど全てチームアンデが解除した。学園で何を企んでいたのかは、これからじっくり話してもらうぞ」
「そうは問屋が卸さない。ボーン……」
言うなり両手を広げる自爆怪獣よりも早くカラーアンデはパンチを繰り出そうとしていた。
「ボン!」
拳が顔に届く寸前で、人間に擬態した怪獣は自爆した。カラーエネルギーをフルにして耐えたカラーアンデは爆発の煙を払いつつ、消えた自爆怪獣を探そうとする。
「……そこまでのダメージじゃないから、これは自爆怪獣の技として意図的に自爆して逃げただけだな。だけど、コクーンへのルートは封鎖され警備が強化された以上、自爆怪獣もそう簡単にはここには来れないだろう。人間の行動パターンを考えた周到な作戦。人目をひくよう派手に自爆する癖に、誰にも知られぬよう影のように動き回る。嫌な怪獣が現れたな」
一気に攻める行動に出ず、影からじっくり光を蝕むような謎の行動に出る不気味な怪獣にカラーアンデは寒気を感じた。