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五話 兄弟怪獣ダブチジ

『兄弟怪獣ダブチジ……』


 兄弟怪獣ダブチジとして名乗りを上げる姿にチームアンデ達は各々の反応を見せる。まさか二体の怪獣が合体した姿だとは思わず、確かにこの怪獣ならば今までの行動やエネルギー総量の違和感などの説明がついた。


「……確かにその可能性は否定出来ない。まぁ、コーラグミの味ほどの驚きは無いわね」


 ただ一人冷静なデータサポートのメカハルは現状の事実を続けて言う。


「怪獣予測データが出たわ。あれは元々二体が合体してる兄弟怪獣だったのよ。赤の盾が兄で、青の盾が弟かな? 私のコーラグミを合体させても……変わらないけど」


「だから背後の奇襲にも動じないのか。兄貴がアタッカーで弟がサポートか。一人二役じゃ、やや不利か――っ!」


 ツルコはメカハルとの交信に夢中になってしまい、兄弟怪獣の兄貴と思わしき右側に意識を向けられていなかった。目の前には投げられた岩石が迫っている。攻撃が機体の先端に当たる赤いアゲーファイターは1は推力が安定せず、ツルコはパラシュートで離脱した。


「アタシは問題無い! 頭サッパリしたんだから後は頼んだわよカラーアンデ!」


 落下するアゲーファイター1は兄弟怪獣の中央で地面に串刺しになった。ニヤリと笑う兄弟怪獣ダブチジの二体は、もう一度合体して決着をつけようとする。


「弟よ、合体して仕止めるぞ」


「兄よ、それで行こう」


 アゲーファイターが互いの中央にある為、前に出る兄弟怪獣は合体行動に移行した。この状況においても、戦闘が最終局面でサポートとしてやる事の無いメカハルは残る二つのコーラグミで遊んでいる。


「コーラグミ二つを合体出来ないから、楊枝で合体させる。それは美しく無い造形よね」


 そして怪獣兄弟の怪獣合体が始まってしまう。カラーアンデはメカハルのサポート音声を聞きつつ、目の前の合体する兄弟怪獣に一つの共通点を見つけた。


「そうか! 変わらないなら変えてしまえばいい! ――ダブルカラー!」


 それを危険と察知した兄弟怪獣は同時に後退する。両手から放たれた赤と青のエネルギーは兄弟怪獣に着弾した。しかし、色が着色されただけで変化は無い。それを見た合体最中の弟は呟く。


「何だこれは? ペイント弾?」


「そのようだ。もうエネルギー切れで技も撃てないんだろ。このまま合体する」


「応!」


 そして、兄弟怪獣は元の姿に戻ってしまう。そのまま必殺技を放つ動きにはいるが、カラーアンデも残り一分に賭ける為に胸元のカラースターの唐揚げを揚げ、カプセルから解放して食べた。


「カラアゲターイム!」


 これを食べると、カラーアンデは残り一分しか戦えないのである! アンノウン♪ アンノウン♪ という音が鳴り、胸元のカラースターが点滅をする。


「最後のイタチっ屁かカラーアンデ! いずれ終わるこの地球の守り人として俺の次に強かったと覚えておこう。勝利のドゥドゥパワーだ!」


 合体する兄弟怪獣ダブチジは自身の残るパワーを全開にした。しかし、予想以上にエネルギーが溜まらない事に違和感を覚える。それを知るカラーアンデは言った。


「自分の姿をよく見るといい兄弟怪獣」


『――まさか合体してない?』


 チームアンデの全員の呟きで兄弟怪獣も気付いた。自分達の合体は中央にある墜落したアゲーファイター1に邪魔されていたのだ。


「あの時のペイント弾は合体のミスを誘う為か! この戦闘機が邪魔で合体が完璧じゃないからエネルギー伝達が出来ない!? こ、このままでは――」


「兄よ無理だ! この戦闘機のせいで無防備なまま攻撃を――」


 そうして、アゲーファイターに合体を邪魔された状態の兄弟怪獣ダブチジはカラーカッターに真っ二つにされてしまった。地面に横たわる瀕死の兄弟亀は最後の会話をしている。


「ジュテーム……あの怪獣の次に強い俺達が負けるとは……やってられんな弟よ」


「モナムール……でもいいさ兄よ。二番目に強い俺達が二つの必殺技を出させたんだ。トロワの怪獣が仇を取るだろう」


 兄弟亀の最後を見守るカラーアンデに兄弟怪獣ダブチジは同時に呟いた。


『アデュー』


 爆散した兄弟怪獣ダブチジを倒したカラーアンデは夕日をバックにチュワッス! と胸元のカラースターを目立たせるよう横向きダブルピースをして決めポーズをした後、カラーアンデはどこかに飛び立つ事も無く、地味にそのまま色彩学園の校庭までジャンプして戻り膝立の状態でしゃがむ。


 今日は大人気アニメ・カラアゲリアンの日なのでアンデは急いで色彩学園寮まで戻ろうとする。そこに突っ込んで来るように、誰かがアンデに自転車で現れる。茶髪ワンレンのスケバンスタイルの少女であった。


「……急ぎだろ。の、乗ってけよ」


「ありがとうツルコ! 君はいつも優しくて素敵だよ!」


「ハッ! たりめーだよ! アタシはこの色彩学園の最強スケバン! ツルコ様だからなぁ!」


 天に召される顔をして最高に気分が上がるツルコは、少しヨダレが垂れている事すら忘れペダルを踏む。

 時速百キロを超えるスピードでツルコはアンデの寮まで急いだ。ヤイツから借りた自転車はツルコのパワーに耐えきれず廃車となった。


「よ……酔った。アゲ、アゲェェェ……」


 リアルタイムのアニメには間に合ったが、自転車酔いをしたアンデはカラアゲリアンを翌日に録画で見る事になったのである。

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