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二十九話 カラーアンデの精神世界

「数日以内にカラーアンデをサポートする少年少女集団。チームアンデを解散させます」


 部室内でその対象である三人は呆れた顔でテレビのニュースを見ていた。


「ありゃ親父じゃないな。親父はしっかりしてるように見えて抜けてる。そもそも、チームアンデが解散したら軍の負担が増える。今更軍のメンツとか言ってるような人間じゃないし、あの親父は間違い無くコピーされてるぜ」


 自分の父親を良く見ているヤイツはすぐにこれは複製怪獣デラーヤが複製したデラーヤ自身だと気付いた。


「親父も結構抜けてるからな。コピーされても仕方ないかも。本人はどこかで生きてるだろ。アンデも言ってたけど、確かに人間に対しての対応は甘い面があるから」


「そうだといいがな。家族なら気付けるって事はコピーは少し甘いって事だ。いくら複製怪獣でもコピーするのも限度があるだろ。あの感じだと人間をコピーする余裕は一人しかないな。オメーの親父が単純で助かったな」


 そう言うツルコにヤイツは救われた気がした。そしてメカハルは部室のメインモニターに映るニュースを見続けている。


 ニュースの解説者は子供に戦わせている現状がおかしいとカラーアンデも気付いたやら、子供がヒーローのサポートをしていては軍のメンツが保てないからだの色々とスタジオ内でも意見が飛び交っていた。ボブヘアの毛先の触覚でコーラグミを突き刺すメカハルはその二つをヤイツに差し出す。


「敵は生徒会長の立場から一気に怪獣討伐サポート軍の隊長にまで昇り詰めた。どうするのヤイツ?」


「それでもチームアンデを解体させる件はカラーアンデからの言葉って事になるからな。選ばれた存在の子供とは言え、たかだか子供が怪獣と戦ってたら軍のメンツが保てないってのは一般の人間からしたら普通の意見。このまま流されたら俺達の立場も危うい。複製怪獣との決戦は今日にでも行うしか無いぜ」


「ハッ! あのニセアンデは余計な事をしてくれてるな。人間が怪獣を倒せないと思ったら大間違いだぜ」


 敵の宣戦布告を上等だ! と一蹴したツルコは言った。こんな偽りのヒーローの偽りの平和が続くのは真っ平ごめんとしてチームアンデは動き出す。


「今の姿が生徒会長じゃなく俺の親父なら居場所からして普通に会える可能性は減る。そして、本体となるニセカラーアンデの状態で倒す必要がある。けど、それにはカラーアンデ復活の何かキッカケを与えてから倒さないとならない……問題は相変わらずこの点だな。不完全な作戦だけど、俺の親父を拉致するか?」


「拉致してもカラーアンデと精神世界で接触する何をしてくれないとね。あの生徒会長の姿の時に動いておくべきだったわね……失敗。不完全燃焼で倒れます」


 二つのコーラグミをぶつけ合い混乱するメカハルは床に倒れた。ふと、ツルコが深刻な顔で言った。


「不完全……ヤサムゥの言ってた不完全ってのはこういう事か……。あのヤイツパパが完全にコピー出来てるのに、カラーアンデは完全にはコピー出来て無い。必殺技などはコピー出来たけど、姿形はニセカラーアンデじゃない……つまり――」


『カラーアンデは完全にコピーされていない』


 すぐにヤイツは父親の秘書に連絡した。


「親父の秘書に連絡したら軍病院の特秘エリアに親父が入った。そして、アンデのいるエリアは何人たりとも入れない特区になったらしい。つまり……」


 ニタァと笑う三人の男女は拳を突き合わせて気合いを入れた。大事な事に気付いたチームアンデはアンデの眠る軍の病室に急いだ。





 色彩都市軍病院・特秘ブロック。

 その特別な人間しか入れないエリアの最奥の病室では怪獣討伐サポート軍の隊長であるヤイツの父親がアンデの部屋にいた。

 それは複製怪獣デラーヤであり、人間の姿は色彩学園生徒会長のカイヒロだ。しかし、複製怪獣とは他者に依存する姿になるので今はカイヒロであろうが、ヤイツパパであろうがどうでもいいのだ。


 その複製怪獣はカラーアンデの力を完璧に引き出す為の儀式をしようとしていた。


「これより『パーフェクトカラーアンデ計画』を始動させる」


 両手を眠るアンデの方に向けて念動力を放つ。すると、自分の意識がアンデの精神世界へと誘われた。真っ暗な空間に様々な心の宇宙が点在している。それは様々な色彩をした惑星のようでもあった。


「……精神へのリンク問題無し。この精神のリンクは互いを知る良いキッカケになる。そうだろうカラーアンデ?」


「……」


「無理に答えなくてもいい。自分の精神だが、今は眠ったままだ。この世界を見る限り、過去に色々あったのだろう。精神が常に混濁している。まともな神経では発狂して死んでいるし、他人を守ろうとする精神には絶対にならない状態だ」


「……」


「その精神状態が崩れた。だからこそ、カラーアンデは現実世界で眠ったままの腑抜けになったのだ」


 早くアンデの核心に迫りたいデラーヤはハートの形をした唐揚げの流星に手を伸ばす。ここからアンデの深層心理にダイレクトに入り込む。闇と血に染まっているその深層心理はかつてない程に暗く、寒く、恐ろしい。

 生物としての心を無くしたかのような異様な精神空間にデラーヤは気分が悪くなる。


「こんな光景は見た事が無い。この宇宙人……過去にいい事が一つも無かったとでも言うのか? 殺戮しかしてない闇の存在そのものじゃないか……」


 血の匂いが強くなる精神世界の奥に、カラーアンデの心を見つけた。ハート型のクリスタルの結晶である。それはカラーアンデの全てで有り、これをいじられたらカラーアンデそのものが消滅してしまう代物だ。それは何故か二つ並べられていた。この有り得ない光景にデラーヤは自分の作戦はミスだったのではないか? と混乱し出す。


「おかしいぞ……カラーアンデは二人いるのか? 一つの身体に二つの精神など……こ、これは――!?」


 その時、チームアンデの面々はアンデの病室まで来ていた。


「くそっ! あの複製怪獣デラーヤはヤイツパパの姿で病院にいるアンデ君の所まで来てやがったのか。ヤイツ! 親父の顔が変形するが気にすんなよ!」


「あー……ヤイ! ヤイ! ヤイツ!」


 親父ごめん……という思いでヤイツは返事をした。そしてツルコはデラーヤとなるヤイツの父親の顔を殴った。精神世界から引き戻されるデラーヤは、目の前に現れた三人の学生に驚きを隠せない。


「貴様等……どうしてここに? ここはセキュリティもあるし、面会謝絶として警備員も配置しておいたんだぞ? どうやってここまで来た?」


『力と技と魔法だよ』


 ツルコのパワー、ヤイツの人脈、メカハルのハッキングテクニックにより全ての障害を排除してここまで来た。残る障害は一つである。チームアンデのリーダーであるツルコは堂々と目の前の怪獣に向かって言った。


「チームアンデが複製怪獣デラーヤを倒す。アンデ君から任されてんだ。負けるわけにはいかないな。な、アンデ君?」


《よくやってくれたチームアンデ。ここから複製怪獣デラーヤを倒す最後の決戦と行こうか》


 精神世界からアンデはツルコに答えた。このままではマズイと逃げたデラーヤを全員で追う。そして病院の屋上に複製怪獣デラーヤを追い詰めた。


「貴様等愚民はこの私に従っていればいいのだ。このデラーヤこそがヒーローなのだ!」


《ならば勝負だ複製怪獣デラーヤ――》


 その場の全員の心の中にまたカラーアンデの声がする。もう逃げられ無いのを悟るデラーヤはここが本物のヒーローを始末し、自分が真のヒーローになる正念場だと覚悟した。


「いいだろうカラーアンデ。ここからは精神世界の戦い。私の心に食い潰されろ古き英雄が!」


 シュパァ! という光が発生しデラーヤは病院の屋上で変身した。チームアンデ達はここまでの作戦は完璧だと、互いの顔を見て微笑んだ。軍病院の敷地内にカラーアンデとニセカラーアンデが現れる。


『……』


 その白と黒の巨人は無言のまま対峙していた。

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