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二十七話 ニセカラーアンデと世界

 そして、ニセカラーアンデとも言える姿に変身した複製怪獣デラーヤは姿を消して怪獣警報は収まった。意識を失うアンデはツルコの腕で介抱されている。


 ヤイツとメカハルはもう怪獣は出ないと周囲の生徒に指示を出して、気絶から目覚めないアンデの姿を見られないようにしてた。周囲を見回したメカハルは、ツルコとアンデの真後ろに立ち、何かが起こらないか警戒する。

 すると、生徒会の白い腕章をした水色カラーのセミロングの病弱そうな少女がスマホを耳に当てたまま質問して来る。


「チームアンデの皆さま。本当に怪獣が消えたのですか? なら生徒の避難は必要無いのですか?」


「そうだね。もう問題無いよ。さっきの怪獣は去ったんだ」


 周囲を気遣いつつ素早くヤイツが返答する。その生徒会の少女の視線は気絶しているアンデに注がれていた。


「……こちらも生徒会長と連絡がつかないのです。なので他の生徒会メンバーと話して避難活動を継続するか決めます」


「わかった。生徒会は生徒会の活動を頼むよ。俺達チームアンデはチームアンデの仕事をするから」


「ならアンデさんが変身して無い状態で有り、気絶しているのも隠しておきましょう。それでよろしいですか?」


「あ、あぁ。それで頼むよ」


 この状況から早く脱出してアンデの様子を確認しないといけないが、介抱しているツルコも、後ろで立ったまま警戒するメカハルの反応も無い。目の前の生徒会の水色の髪の女だけはその混乱するヤイツの心を更に掻き乱す。


「ヤイツさんは本当にこのまま私が情報統制すると思っているのですか? 私が怪獣の仲間だったらどうするのです?」


「え? いや、そりゃ無いでしょ? ……だよね?」


「そんな優柔不断だと、昔のハッキリしてたヤイツさんの方がマシと言われますよ。女の言う事はあまり信用しない方がいいわ。ね、メカハルさん?」


「キンカ。避難活動は生徒会の仕事よ。怪獣退治専門のチームアンデに聞かれても知らないわ」


 キンカと呼んだ少女に冷たく言い放つメカハルはその場を去る。明確に関与しないという意思表示をしたコーラグミ好きの女の背中を見送るキンカは、


「メカハルさん。可能性は確定しているのです」


 そうして、挨拶をすると水色セミロングのキンカという生徒会書紀もいなくなった。すると、アンデを介抱しているツルコが話しかけて来る。


「おい何だメカハルの奴。あの生徒会書紀と仲悪いのか?」


「おそらく……」


 ふと、ヤイツはその少女の事を思い出した。生徒会書紀のキンカは色彩学園の全てのデータを持つ少女。データから鑑みた先読みで今後の未来を当てる預言者とも言われる。中等部の老朽化した設備や、今後の増改築はこのキンカの意見で動いているとも言われていた。

 面倒な奴らしいな……とヤイツはその水色のセミロングの少女に嫌悪感を抱いた。





 色彩都市の軍病院の特秘ブロックにある病棟にアンデは入院している。複製怪獣デラーヤの精神攻撃のせいなのか、身体的にダメージは無いが精神的なダメージのせいで相変わらず目覚めていない。おまけに、デラーヤにカラーアンデとしての能力をコピーされているので、今後もし怪獣が現れた場合は偽物のカラーアンデと怪獣が戦う事になるのか? という疑心暗鬼に陥る状態にチームアンデはなっていた。


 怪獣討伐サポート軍が頼りになるわけでも無いので、この件はアンデに言われた通りチームアンデの人間が解決する仕事だと覚悟して作戦会議を開いている。アンデの寝姿が見える病室の外から三人は話す。


「俺の親父もかなり心配してるな。トップシークレットとして黙ってくれてるが、軍のトップにいるヤイツ一族としては辛いもんだ。あのニセカラーアンデがいきなり民間人を攻撃したら全てがパーになるからな」


「それでも黙ってもらうしかねーな。カラーアンデがおらず、怪獣がカラーアンデになってますなんて事がバレたら大パニックだ。現状、アンデが気絶したまま起きないのは確実にあの複製怪獣の攻撃によるものなんだよな?」


 頭を抱えるツルコの言葉にメカハルはタブレットに目を落としつつ淡々と答えた。


「その可能性は否定出来ないわ。というより、それしか無いでしょう。そしてこれが気絶する前のアンデからのメッセージよ。敵は複製怪獣デラーヤ。正義を心奉する怪獣のようだわ」


 メカハルのタブレットにアンデは気絶する前に知り得た情報を送っていた。それは敵の名前というだけでデータとしては少ないが、最後の瞬間にチームアンデに任せるというメッセージと、敵の怪獣の名前だけでも送ってくれた事に三人は感謝している。


 今まで始祖怪獣は六体倒して来たが、今度の始祖はヒーローをコピーするとんでもない存在であった。病室の窓ガラスのレールには黒い人形型のグミが置かれている。メカハルはグミで今までの怪獣のデータを参考にフィギュアを作っていたのだ。グミの為、食べられる素材だが誰も食べようとはしないのをメカハルは少し気にしていた。


「でも、まさかアンデから力を奪うような怪獣が現れるなんて……このコーラグミ以上の謎だわ怪獣って。最高の刺激ね。絶対に倒すけど」


「そうだ怪獣オタク。怪獣は抹殺する。それだけなんだよ」


「そうだな。ヤイツ一族としても怪獣はブッ飛ばすだけさ」


 三人の男女はアンデの見える位置で拳をぶつけ合った。そして、眠り続けるアンデを眺めるヤイツは、


「アンデはギリギリの所で怪獣データを寄越したけど、それって複製怪獣を知ってたのかな?」


「アンデが前から複製怪獣を知っていたのか、それとも気絶する前に気が付いたのかはわからない。でもそれを知って尚、私達に怪獣を倒せると任せた事は重要よ」


 そのメカハルの答えにツルコは言う。


「とりあえずアンデ君は色彩病院の特秘ブロックで隔離する。アンデ君はアタシ達に怪獣を任せると言った。だから複製怪獣デラーヤを倒す方法はあるはずなんだ」


 すると、怪獣警報が鳴り響く。すぐにメカハルはタブレットでどこに怪獣が現れたのか軍のデータベースを使い検索した。映像を確認すると、鳥型の怪獣が富士山方面に現れ、地上を口から吐き出すビームで焼き払いながら色彩都市を目指して飛行していた。チッと舌打ちしたツルコはアンデに行ってくると合図してからリーダーとして指示を出す。


「言ってる側から怪獣かよ。ヤイツとアタシはアゲーファイターで出る。メカハルはこの病院からサポート頼んだぜ。シザクラシキブを持ってくから、始末書の代筆よろしくな」


「はぁ? ダメよ! あのミサイルは軍ですら躊躇う威力の切り札。この都市ごと消す気? ちょっとツルコ!」


 驚くメカハルの反応を聞く事無く駆けた。後を追いつつ振り返るヤイツは、


「俺もあの禁断のミサイルを使わせないようサポートするから、メカハルも頼んだぜ!」


「もうっ! アンデが起きたら都市が消えてたなんてシャレにならないわよ!」


 地団駄を踏む黒髪触覚ボブの少女はアンデの顔を見てからタブレットに目を移す。

 そしてアゲーファイター1で出撃したツルコの目に黒く巨大な何かが映った。飛来する鳥型の怪獣を攻撃する黒いヒーロー。それを見た途端、怒りで歯軋りして奥歯が欠け、悔し涙で視界が霞んだ。


「……ハッ! 最悪の展開だぜ皆。黒いカラーアンデが現れやがった」


 無表情な白い顔に筋肉質な黒い身体。その胸元には白いから揚げの流星であるカラースターが存在しており、全体的にややダークさを感じさせるがカラーアンデそのものであった。

 そのニセカラーアンデと知らずにこの戦闘を見ている人間達は、今日は何か違うな程度の認識で各々の場所からモニターを眺めていた。一分後、黒いカラーアンデは敵の怪獣をカラーゲイザーにて撃破した。その光景を援護せずに傍観していた二機の戦闘機の2号の少年ヤイツは鼻から大きく息を吐く。


「ヤイ、ヤイ、ヤイ。何なんだよあのニセカラーアンデは……ダークヒーロー? こりゃ、相当最悪な事態じゃねーか……っておい!」


 ツルコがニセカラーアンデに向かって照準を付けているのがわかった。すぐにアゲーファイター2をその攻撃の射線上に移動させた。


「おいツルコ。帰還するぜ。シザクラシキブはまだ使えない。わかってるな?」


「わかってるさ……これよりアゲーファイター1は帰投する」


 意外にもすぐに攻撃行動を停止したツルコにヤイツは驚く。


「アゲー2も帰投する。メカハル、今の戦闘データを出しておいてくれ。カラーアンデはヒーローだ。ダークヒーロー何かじゃねぇ」


「わかったわ。我々チームアンデの中ではあの黒い巨人は第七始祖・複製怪獣デラーヤ。別名・ニセカラーアンデ。いいわね」


『了解』


 二人のパイロットが答えると、メカハルは怪獣オタクだがこの怪獣には憎悪しか無いとして、タブレットに映るニセカラーアンデを殴った。





 それからもニセカラーアンデの活躍は続いていた。

 鳥型、ゴリラ型、カマキリ型、シカ型などの怪獣達がこの半月程で現れていた。特に苦戦する事も無く、ニセカラーアンデは怪獣達を倒している。


 ネットなどでも色違いのカラーアンデに対して、モードチェンジやイメチェンなどの意見が出るだけで「別人」という意見は皆無だった。ただ、怪獣を弱らせてからいたぶるような戦い方からダークヒーローという言葉も使われ、カラーアンデは正義のヒーローから少しづつ遠ざかっている存在になりつつあった。


「カラーアンデは正義のヒーロー」


 その意見を持つ者は色彩都市におけるはみ出し者の三人。チームアンデの面々のみだ。

 そして、全ての正義を実行している生徒会長カイヒロは生徒会長席で各種ニュースを眺めて黒いカラーアンデについて微笑んでいる。今日も白髪のポニーテールで心を引き締め、白のローファーで自分の足跡を歴史に刻み、特製ミルクコーヒーで身体を潤していた。スッ……と小柄な少年は立ち上がると、窓に手を当て色彩学園から見える富士山を眺めた。


「この世界は既に私というカラーアンデを認めている。第七始祖・複製怪獣デラーヤを正義のヒーローのカラーアンデとして認めているんだ。偽物でも本物なのさ。愚鈍な大衆など自分に影響が無ければ誰が英雄であっても構わないんだ」


 ニセカラーアンデとなる複製怪獣デラーヤは世界を欺いて自分がヒーローに成り上がった。その人間姿である生徒会長カイヒロは自分の「正義」を持ってして、この世界を変える決意をした。高々とミルク九割ミルクコーヒーを掲げ宣言する。


「世界に乾杯」

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