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二十六話 複製怪獣デラーヤの正義

 ヤサムゥが色彩(カラー)学園に転校して来て一週間が過ぎた。アメリカ帰りの美少女転校生という事も有り、中等部だけではなく離れた敷地の高等部からも人が集まっている。その全ての人間と対応する赤髪ツインテールの美少女は明るく、楽しく学園生活を楽しんでいるようだった。


 そんな事を影ながら知るツルコは昼休みまで学園の屋上でブラブラしてから食堂に向かう。

 ツルコは当たり前のようにチームアンデの部室に来るヤサムゥを疎ましく思っていた。明らかに調子が狂い出しているアンデの事が気がかりなのが一番だが、十年前のヤサムゥとの出来事を思い出して辛いのもある。

 その理由についてアンデに聞くとアンデはこう答えた。


「ヤサムゥが来なくていい理由? 無い。全く無い。僕ちんノーアイデア」


 という訳で、ツルコ自身もどうしていいかわからず、イライラした状態から抜け出せない自分を他人のせいにしようとして、またイライラする悪循環に陥っていた。


(ヤサムゥか……相変わらずアホの取り巻きがゾロゾロしてて目障りだな。近くに来ないだけマシか)


 食堂に入ると、一際目立つ人だかりの中心にいる赤髪ツインテールの女を一瞥したツルコは、久しぶりに唐揚げ定食を頼んだ。調理場に近いチームアンデ専用とも言われる場所に座る。


「おいやめろよヤイツ。僕は辛いの苦手だから。ザッツノットフォー僕」


「カラアゲリアンのモコミは辛いの好き設定じゃね? この前の放送でも激辛麻婆豆腐食べてたし。ちょっとは食えないとダメじゃて?」


「……なら今度少しだけ食べてみようかな」


 一口食べて火を吹くアンデにヤイツとメカハルは爆笑していた。


(ったく、モコミなんてアニメのキャラだろ。そんな存在しない奴にアピールするなんて馬鹿げてるぜ)


 そんな仲間の行動を批判しつつ黙々とツルコは食べ続ける。すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「貴女が唐揚げの天才フクオトさん。確かにこの唐揚げなら毎日食べられるわ。アメリカでもウケるわね」


「そう? 唐揚げの天才かわからないけど、この色彩都市で十年働いている調理の腕は自慢出来るわ。貴女と私が組めば、この学園の全ての男を支配出来そうね」


 黒髪ロングを纏めているスタイルの良い美女は目の前の美少女に興味があるようだ。この色彩学園を裏から支配する同盟者として。


「うーん残念だけど、今から生徒会室に行かないといけないの。アタシの色彩学園の制服を取りに行かないとね。支配の件は考えておくわ。アナタの地盤にアタシの力が加われば、学園を支配するのも夢じゃないでしょう。ねぇ?」


 と、意味深な台詞を発したヤサムゥはツルコの背中を見つめ、食堂から出る。そしてツルコも食べ終わったので食器を片付けてから食堂から出る。一瞬、出口の横に赤い人影が見えたが早歩きでやり過ごそうとした。


「待ちなさいよツルコ」


「待ち伏せか? 取り巻きといなくていーのかよ?」


「アタシにもやる事はあるし、いつまでも構ってられないわ。にしても、相変わらず色彩関係の人間はメガネ多いわね」


「今、メガネの生徒は全員こっちを向いたぜ」


 食堂出入口周辺の生徒達は一瞬、まるでロボットのように二人の少女を見てから歩き出す。舌を出すヤサムゥはツルコに接近した。


「ねぇ、生徒会室を案内してよ。アンタ、そんな格好してたら呼ばれるでしょ? アタシの制服が届いたって会長から呼ばれたのよ」


「制服の件だからアタシを待ち伏せたのか? アタシはチームアンデだから服装に関しては申請をして許可がある。舐めんなよ?」


「うわーそんな許可あるんだ。チームアンデだと色々メリットあるのねぇ」


「メリットがあると言っても何でもは出来ない。怪獣のように強欲じゃない」


「自分が怪獣とわかっていない人間だっているでしょ?」


 その刺すような言葉でツルコは黙る。面倒だと思いつつもスケバン少女は腐れ縁の赤髪の少女を生徒会室まで案外した。




 生徒会室――そこには小柄白髪ポニーテールの中等部生徒会長カイヒロがいた。白を好む少年で、ローファーや鞄も白を好んでいる。白は何にも染まらない正義の色として心棒しているようだ。生徒会長席の後ろの額には「正義」と書道で描かれた文字が鎮座していた。


「やぁ二人共。生徒会室までようこそ。歓迎するよ」


 すると、カイヒロは自身の好むミルク九割ミルクコーヒーを二人に差し出す。それを受け取るツルコは室内から出て行く。


「んじゃ、アタシはここで失礼するよ。アゲーファイター1の機体チェックをするんでな」


 それを見たヤサムゥは残念……と声に出さずに呟いた。そしてカイヒロはヤサムゥの制服の箱を持って来る。


「この制服を着れば、君も色彩学園の完璧な一員だよ。帰宅して試着しておかしな所があれば言ってくれたまえよ。私の正義は君の助けになるはずだ」


「会長さんは正義が好きなんだね。それともカラーアンデが好きなだけなのかな? エェ?」


 その真っ赤な瞳はカイヒロを飲み込むように見つめていた。やけに攻撃的なヤサムゥにカイヒロはアメリカ帰りの女の子だからかな? と流す事にした。


「正義は好きだが怪獣は嫌いだな。正義のヒーローであるカラーアンデには心があるが、怪獣は心も無く暴れているだけだろ? 正義は悪を滅ぼすからこそ美しいのだ」


「怪獣の心も人間の心も大差は無いよ」


 瞬間、ヤサムゥは手に持つ小太刀でカイヒロの心臓を貫いていた。何故か一切の流血は無く、カイヒロは光悦の表情で昇天されていた。その顔と真逆の赤い髪の女は大きく口を開けて言う。


「全ての生物の心はマッカッカ」


 自身の心の心臓である「正義」を刺激させられ、心の奥底にある「怪獣」を目覚めさせられたカイヒロは窓ガラスを割って飛び降りると、色彩学園の中庭で狂ったように叫んだ。


「ほら、アタシの思った通りアンタは怪獣だったんだよ。エエーーーッ!」


 黒い渦を巻いてその怪獣は大きく進化する。台風のような突風に近くの生徒達は地面に座り込んだり、何かに捕まって耐えた。


「残念、残念。ここにいれば、アンタの抹殺するべき怪獣の誕生が見られたのに。ツルコ、アンタは本当に運がない女だわ。同情は出来ないけど」


 すると、色彩学園全体に怪獣警報が発令され生徒達は避難を開始し、チームアンデは出動する。そうして目と鼻の先に存在する黒い怪獣に微笑むヤサムゥは両手を広げて応援する。


「暴れておいで。第七の始祖・複製怪獣デラーヤ」


 色彩学園中等部・生徒会長カイヒロの正体は複製怪獣デラーヤであった。その姿は真っ黒なカラーアンデを思わせる姿だ。決定的に違うのは身体は黒が基調になり、身体の雷のような模様は白く、どことなく邪悪さが感じられる姿であった。


「……これが真の私か。素晴らしい! 私が怪獣になった事で始祖怪獣としての記憶も取り戻した。さぁ、正義の時間を始めるよ」


 そのダークヒーローさながらの瞳は、近くの中庭に現れたアンデに向けられていた。その地球を守るヒーローに対して対抗心があるデラーヤは複製怪獣としての必殺技を放つ。


「コピーコード発動――時計仕掛けの羊は目覚めない――」


 念動力のような投げ輪のエネルギーが発生し、アンデは変身しようと高く掲げた右腕がだらりと下がる。そしてそのまま地面に倒れ込んだ。


「チ、チームアンデの皆! これから僕は眠りについてしまう……だから今回は君達が怪獣を倒すんだ! この怪獣はおそらく人を傷つけない……任せたよチームアンデ……」


 そうして、アンデの右腕のカラーウォッチの機能が停止してアンデは意識を失った。その姿を目撃したツルコ、ヤイツ、メカハルは絶句した。

 ズズズ……と正義が侵食するようデラーヤのカラーアンデのような顔と胸部のカラースターのみが白くなり、色彩都市にダークヒーローが誕生してしまったのである。

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