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二十四話 勝利怪獣ウインナー

「アモール! 聞けよ地球人共! 我は勝利怪獣ウインナー! 絶対的勝利にて我はこの地球から宇宙を支配する王となるのだ!」


 勝利怪獣ウインナーは富士山を背景に持つ色彩(カラー)学園近くの森から、周辺に広がる色彩都市全体に向けて叫ぶ。人間を誘き寄せるよう、勝利と書かれた赤いカポーテを揺らして暴れた。すると、遠くからジャンプしつつ白い巨人が闘牛士のような怪獣めがけて迫っている。


「カラァ! デカい声で叫ぶな。十分に遠くにいても聞こえているさ」


 カラーアンデがウインナーの目の前に現れた。その白い巨人は闘牛士のような怪獣に対して何か思う事があったようだ。


「額にある赤いウインナーのようなV字のツノ。全身は黄色い闘牛士のような姿で、手には赤いカポーテに勝利と描かれている。宇宙にいた頃、勝利怪獣と言えば厄介だから関わり合うなと言われた事があったな」


「そうか。我は他者に敗北を与える天使だからな。嫌われるのは仕方ないさ」


「貴様の目的は私に勝つ事かウインナーよ?」


「そうだ。しかし、我は地球人達に言っているのだ。観客がいてこその勝利者だからな。この勝利に注目してくれれば、無駄な敵も減るからな」


「無駄な敵が減る? 自分の強さを提示して、無駄な争いを避けようという魂胆か?」


「いかにも。我は先祖代々、様々な惑星を旅して色々な怪獣や異星人に勝ってきた。そして地球には無敗を誇る絶滅種のアーゲ星人がいると聞き襲来した」


 そのウインナーの言葉にカラーアンデは黙り込む。そして、少しの間を置いてからその事について語る。


「アーゲは伝説の初代抹殺怪獣だ。アーゲとはその抹殺怪獣の生まれた星の名でも有り、もう存在しない。つまりアーゲ星人もアーゲ怪獣なども存在しないんだ」


「そうか。宇宙は広いから間違っている情報も有る。正確な事は後で調べるとするよカラーアンデ」


 勝利怪獣ウインナーは左右を見渡すと、森の中や川などで自分を撮影している人間達を確認する。それは全て違法に戦闘区域に集結している一般人だ。見つかれば死罪の可能性がある懲役刑になるのをわかっていても盗撮魔は減らない。


「予定通り、カメラを持っている観客はいるな。そのまま撮影を続けたまえ。そちらまでは被害はいかない。絶対に撮影は止めるなよ。配信を続けるんだ。こうなりたく無ければな」


 勝利と描かれた赤いカポーテの裏からレイピアを取り出し、その先端からビームが発生した。その赤い光は待機していた怪獣討伐サポート軍達を一網打尽にするよう爆発する。それを見たカラーアンデは激昂した。


「貴様! 攻撃するなら私だけにしろ!」


「何を言うか。この戦闘区域に入り、貴公を援護する軍人であろう。軍人が死を覚悟して職務に邁進するのは当たり前の事だ。人間に弱みでも握られているのか貴公は?」


「私は私の正義の元に戦っている。私は宇宙人として地球人と共存しているのだ」


「アモール。それは素晴らしい関係だ。ならばまずは絶望を与えよう。貴公の必殺技を叩き込んでみろ!」


 いきなり自分の必殺技を叩き込んでみろと言うウインナーの言葉の意味がわからない。わざわざ敵の必殺技をくらうメリットなど、どんな怪獣にも無いはずだ。戸惑うカラーアンデを急かすようにウインナーは続けた。


「小手先の応酬など無駄。体力の全開な時に必殺技を放ってみたまえよ。宣言し、約束する。我は絶対に回避しないと」


「……」


「勝利をする為に映像記録にも残して貰う。だからこそ、これで勝てば絶対的勝利なのだよ!」


 そう高々と盗撮魔達のカメラの先にいる視聴者達に宣言した。カメラは違うがその視聴者のメンバーであるチームアンデの面々は部室でその光景を見守っている。メインモニターに映る二体の巨人を見てツルコは言う。


「あの怪獣、カラーアンデが絶対に必殺技を撃つように仕向けてやがる。そして絶対に避けない覚悟もある。ここは乗るべきか……」


「今、あの区域には援護目的で行けないわ。軍も一部隊が壊滅してるし、野次馬が増えてしまってる。わざわざ自分を撮影しろと叫ぶ怪獣なんてとんだ迷惑者だわ」


 軍の一部隊が壊滅し摘発出来ないので、増え出す盗撮魔をカメラの切り替えで追うメカハルは答える。父親の軍がイマイチ動けていないのを歯痒く思うヤイツは、自分が一般人を戦闘区域から遠ざける案を言うがツルコに一蹴された。


「あの勝利怪獣は自分の勝利の為なら人質でも使うだろ。ヤイツの父親は怪獣討伐サポート軍隊長だ。行くならアタシが行く。富士山はアタシの庭みたいなもんだからな」


「悪いなツルコ。俺は部室でサポートさせて貰うぜ」


 外に向かうツルコに言葉をかけ、ヤイツは戦況を見守る。カラーアンデの心中を察するメカハルは単純明快なようで単純明快では無い敵に呆れる。


「あの怪獣は防御に絶対の自信があるようには見えない。けど死なない自信はある。普段通り攻めて行けばいいと思うけど、ここまで流れを作られたら中々厳しいでしょうね」


 眉間にシワを寄せるメカハルがコーラグミを食べると、地球のヒーローである白い巨人は動いた。


「……ならば答えてやる。この私の必殺技をくらったら全て終わりと言う事をあの世で知れ!」


 ニヤリという顔のウインナーは赤いカポーテを揺らし、敵を挑発する。牛の扱いになるカラーアンデは手をVサインにして、腕をクロスさせエネルギーを収束させた。両手を開いて全身のエネルギーを解放し、そのVサインをした両手を横向きにして胸元の左右で構えた。カッ! とその目に唐揚げを映し出すと同時にカラーアンデは叫ぶ。


「カラーゲイザーーーッ!」


 胸元のカラースターから直線的な紫色のエネルギーが放たれ勝利怪獣ウインナーに直撃した。


『……』


 この森にいる一般人達はその衝撃によりひっくり返ってはいるが、何とかカメラを白い巨人に向けていた。その相手である勝利怪獣は砂煙のせいで姿が見えない。チームアンデの部室の男女は近くに設置してある無数のカメラから敵の状況を確認する為に最高のアングルを探す。

 すると、ヤイツが砂煙の奥にいる大きな物体が一番見えるカメラを見つけ、メインモニターに映し出した。それはカラーアンデにも見え出した光景だった。


『……』


 敵を誘う赤いカポーテは地面に落ち、右半身を失っているウインナーは半死半生ではあるが生きていた。もう死が近いその怪獣はブツブツと何かを言い出した。


「……必殺技のカラーゲイザーに対して死ななければいい。この痛みをしっかり覚えておけば、もうカラーゲイザーでは我は殺せないぞ。ウィナーウインナーよ、我に力を」


 額にある赤いV字のツノであるウィナーウインナーを食う。すると、勝利怪獣の身体はみるみる内に再生をした。その全てのダメージを記憶した身体は、もうその技は通用しなくなるのだ。


「貴公の必殺技はこの身体が記憶し、もう通用はしない。これから絶対勝利の宴と行こうではないか! アモール!」


 決め手を封じされた状態になったカラーアンデに、勝利怪獣ウインナーは猛烈なレイピアを繰り出した。

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