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二話 不死身の怪獣 進化怪獣アーデ

「カラァ!」


 紫の目を輝かせ叫び声を上げる暴走気味の白い巨人・カラーアンデはチョップ、キック、パンチと連撃を浴びせる。紫のタヌキ顔の怪獣アーエは両腕の爪を折られ、火炎放射やアイビームを撃つエネルギーすら無くなっていた。


 色彩(カラー)学園の屋上では三人の男女がカラーアンデの活躍を観察していた。茶髪ワンレンヘアのスケバンスタイルの改造セーラー服少女は串刺し唐揚げを食いながら戦況を見ている。


「……怪獣は全て抹殺するっていつもなら言ってるが、今日はスゲーなカラーアンデ。いつもよりキレてる戦いだ。どうだメカハル。あのパクリ怪獣との戦いは余裕で勝つな」


「その可能性は否定出来ない。けど、メンタルがレッドゾーンに突入しても問題無いね。問題があるとすればこのお昼時に襲ってくるあのパクリ怪獣のせい。グミ揚げ定食の日なのに」


 内巻きの毛先が触手のような黒髪ボブの少女のタブレットにはカラーアンデのアタック・ディフェンス・スキル・メンタルなどの各種ゲージが表示されており、怪獣との戦いをサポートしている。

 パックのチーズ牛乳をストローで飲んでいる金髪マッシュヘアのヤイツ少年はだるそうに語る。


「そんなに心配する怪獣じゃないだろツルコさんよぉ。怪獣アーエはこの一年の間にもう何度も戦ってるけど死なないだけで最強に弱いじゃん。わざわざチームアンデがサポートしなくても……」


「……あ?」


 凄まじい怒りの顔を見せたツルコに学ランを第二ボタンまで開けたヤイツは何故か第一ボタンまで閉めて直立で敬礼した。

 うねうねと触覚のように動くボブヘアの毛先にデコピンしつつ、アンデのデータを確認するメカハルはコーラグミを食べつつ言う。


「何かカラーアンデはだいぶお怒りのようだったけど冷静になってるし、問題無く勝てるよ。怪獣オタクとしてはもうアーエのデータはいいのよ。フィギュアにしても稼げなさそうだし。早くグミ揚げ定食食べに行きたい」


「待てよ。ちゃんとカラーアンデが勝てるようにアタシ達チームアンデは最後まで見守るのさ……なぁヤイツ?」


「は、はいぃぃぃ……」


 隙を見て食堂に向かおうとしていたヤイツはツルコの殺気で足を止めた。タブレットの映像に映るカラーアンデとアーエを見つめるメカハルは言う。


「……確かにヤイツの言う通り死なないだけの弱い怪獣。でも少しずつパワーアップしてるから進化怪獣とでも言うのかな。だが所詮はパクリ。能力を使いこなせてないからもうガス欠。アンデもガス欠。私もガス欠だからコーラグミ食べよ」


「アンデもガス欠……そうか! 昼飯食って戦って無いからだ! だから暴走的な動きの割に決定的なダメージを与えられなかったんだ!


 全ての謎が解けた! と拳を掌に叩きつけてツルコは微笑む。同時にぐうぅ〜という音が屋上に響いた。無反応のメカハルとは違い、これ見よがしにヤイツは両手を広げて話し出す。


「ぱっふーん! ツルコリーダーも腹の音鳴ったな?」


「そうだなぁ。お前には絶望の音を聴かせてもらいたいぜ。なぁヤイツ?」


「ひいぃぃぃぃ!」


 金髪マッシュヘアを乱れないように守るヤイツの絶望の音が鳴る。同じタイミングで大好きなアニメであるカラアゲリアンをパクられた怒りが、自身の空腹により冷静さを取り戻していた。カラーアンデの瞳は、雲一つ無き大空の青さに戻っている。


「本当にこれで終わりだ。行くぞ怪獣アーエ! ラスト一分に懸ける――カラアゲターイム!」


 胸元のカラースターが輝き、カプセル内の唐揚げが高温の油で揚げられた。するとカプセル内から今揚げられた唐揚げげが出現し、そしてカラーアンデはそれを食べた。これを食べると、カラーアンデは一分しか戦えないのである!


 呆気に取られつつも高笑いをする怪獣アーエは何がカラアゲタイムだと思った。この周囲には踏み切りの警報のようなカラーアンデのエネルギーが無くなる警報が流れているのだ。


「ヌハハッ! カラーアンデ! とうとうお前を追い詰めたぞ! このアンノウン♪ アンノウン♪ という音が貴様の断末魔だ!」


「……そもそも、今昼時なんだからエネルギーも無くなるだろう? その辺の空気読まないで現れて調子に乗られても私は困るさ。というわけで、揚げ揚げでトドメと行く。カラァ!」


 その圧倒的なエネルギーに怪獣アーエは恐怖し、特攻をかける。学園屋上にいるチームアンデの面々は各々で興奮していた。最後の必殺技を放つカラーアンデはVサインをしながら両腕を胸元でクロスさせエネルギーを収束させた。


「カラー……」


 という呟きの後、両手を開いて全身のエネルギーを解放し、両手をVサインのまま胸元の左右に構える。カッ! とその目に唐揚げを映し出すと同時にカラーアンデは叫ぶ。


「――ゲイザーーーーッ!」


 胸元のカラースターから直線的な紫のエネルギーが放たれ進化怪獣アーエに直撃した。ヤッター! という学園屋上の歓喜に沸くチームアンデ達とは対照的な怪獣の思いが吐露される。


「くっ! ま、また復活してやるからなーっ! カラーアンデ! 揚げちゃダメだーーーっ!」


 誰も聞いて無い断末魔を残し、進化怪獣アーエは揚げられて爆発した。チュワッス! と胸元のカラースターを目立たせるよう左右から横向きダブルピースで決めポーズをした後、カラーアンデはどこかに飛び立つ事も無く、地味にそのまま色彩学園の校庭までジャンプして戻り膝立の状態でしゃがむ。


「……」


 ズズズ……とヒーローサイズから人間サイズへと小さくなり、冬でも素足にサンダルの足を地面でトントンとして色彩学園の校庭からダッシュで食堂に向かう。人間姿だと本人は認めないが小太りであり、動きも変身してる時のようにスタイリッシュでは無い。どちらかというとえ 駅の階段を必死に登るオッサンのようにダサい。ちなみに、カラーアンデは人間姿の学生だとアンデと呼ばれている。


「アンデ戻って来ましたチュワッス! ってもう人がいないか」


 そこでは食事を終えた学生達が教室へ戻った後でガラガラだった。


「怪獣討伐おめでとーアンデ君!」


 黒髪ロングの食堂のアイドルお姉さんがアンデに手を振っている。アンデの好きなアニメ・カラアゲリアンのゲリアンパープルのエプロンをしており、スタイルが良く、男子生徒を悩殺するこのフクオト調理師はいつもアンデの唐揚げを揚げてくれる人だ。赤いルージュが似合う魅惑的な女は甘い声でアンデに唐揚げ定食を差し出す。


「はいアンデ君。怪獣倒すタイミング見てたから揚げたてよん♪」


「うむ。ありがとうフクオトさん! あの怪獣のせいで昼休み終わってるし、やっと昼ごはん食べられるよ。僕はこの地球で唐揚げ食べてアニメ見て安穏と過ごしたいだけなんだ。カラァ!」


 これが、唐揚げとアニメ命のアンデ少年の日課だ。

 暇さえあれば唐揚げ食べてアニメを見ている色彩(カラー)学園中等部ニ年生アンデ少年。その実態は唐揚げ食べて、アニメ見て、安穏と暮らしていたい宇宙人だが、怪獣から地球を守るヒーローなのである!

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