十九話 策士策に溺れる
富士山中腹――レーダー無効化のミストジャマーの霧の中に威風堂々と現れたチームアンデと進化怪獣アーエ。現状、まともな方法ではこの地に来れない状況で、わざわざ川を遡って来た連中の蛮族感に寄生怪獣キドノコは吐き気と怒りに満ちる。
色彩都市全体がマジックラムネによる影響で人々が意識混濁の状態にあるのは、この進化怪獣アーエが大きな原因だ。体内をマジックラムネにされてしまっている事に危険を感じるカラーアンデは助けに来た仲間に感謝してから、ヤル気に満ちる紫のタヌキ顔の怪獣に聞く。
「……皆、助けに来てくれた事は感謝する。知ってるか知らんが、アーエの身体はマジックラムネの製造工場になっている。その吐く息は意識混濁の息とキドノコが言っていたぞ?」
「それならコーラグミ食って何とか凌いでる。このメカハルという女から貰ったアイテムだ。よくわからん食い物だ」
「そ、そうか。人間や生物に影響が無いなら問題無い」
そのコーラグミの効能はわからないが、特に問題無いならそれでいいとカラーアンデは納得した。
「俺様はチームアンデじゃないが、寄生怪獣にいいようにされたままじゃ気が済まん。だからこのチームアンデに協力したんだ。カラアゲリアンのフィギュアくれるって約束したし」
腕組みをするスケバン少女は寄生怪獣を威嚇する目つきをしつつ言う。
「つーわけだカラーアンデ。アタシ達もプランBで加勢するぜ。この近くにある軍基地からミサイルで援護する。ヤイツ知る基地への抜け道へ向かうぞ!」
『おう!』
「ってオメーは怪獣なんだからカラーアンデと一緒に戦えよアーエ!」
「そ、そうだな。俺様も慣れない事をすると間違ってしまうぜ。まさかカラーアンデと共闘する日が来ようとは……これもゲリアンパープルのフィギュアの為だ! ヌハハッ!」
その話をじっくりと聞いていたキドノコは両手を広げ、円を描くように手を回し出す。
「このミストジャマーは二つの怪獣の細胞を元に作った試作品。雨霧怪獣のアメーコロイドの隠密性に、小生の寄生能力、そしてこの富士山で採取されるエネルギー結晶・カラアゲインを合成するとレーダー無効化のミストジャマーになる。意図的にミストジャマーを発生させる事が出来れば、対怪獣戦でも優位になる」
「長ったらしい説明はいい! 俺様を利用した罪は万死に値するぞキドノコ!」
「残念ながらアーエは眠るのです。ミストジャマーの幻覚に踊れ」
各種レーダーを無効化するミストジャマーを利用した幻覚効果でアーエの身体は停止した。その技に焦るチームアンデは周囲の霧に異様な雰囲気を感じ出す。
「このようにアーエは操る事が出来る。その為のマジックラムネですよ。クフフフ。隙有り」
アーエの動きは停止した事により、駆けていたツルコ、ヤイツ、メカハルはキドノコの手に掴まれてしまった。
「しまった! くそっ!」
「迂闊ですねカラーアンデ。仲間がわざわざこんな霧の出た山まで人質になりにわざわざ来るとは。仲間の絆とは利用価値しかありませんね。いくら対策をしてても直接的な精神支配なら防げない」
迂闊に手を出せないカラーアンデを警戒しつつ、キドノコは三人の少年少女に精神支配を与える。ゆっくりとその三人は抵抗する力が失せてガクリとうなだれた。
『……』
白と黒の二人の巨人は言葉も無く対峙している。絶対的勝利を確信するキドノコは言葉を発する前に、自分の手の中にある乱れた前髪を整える金髪の少年の声を聞いた。
「……バカだなキドノコ。俺達が何で部室から目覚めてここまで来たと思ってんだ」
「アタシ達はそれぞれ、十分ぐらい後に目覚めるよう口の中に仕込んでおいたもんがあるんだよ。そう、どんな事があっても絶対に目覚める自分にとって最悪なモンをなぁ。ここまでがプランBだボケが!」
そのツルコの苦しげな言葉に納得するメカハルも続ける。
「もう二度と嫌だわ。甘くもなり、苦くもなる人によって安定しない味のコーヒーは怖い……」
黒歴史、レッドカルピス、コーヒーグミ――。
三者三様の覚醒の仕方で寄生怪獣からの精神支配から抜け出した。すぐさまカラーアンデは指示を出す。
「無理をしたがプランB成功だな。そしたらメカハル! カラアゲリアンの映像を流せ!」
「ほい来た」
精神支配を受けるアーエに復活までの暇潰しに見ていた人気アニメ・カラアゲリアンを見せる。すると、いとも簡単にアーエは目覚めた。その勢いのまま、手持ちの武器であるヒートカッターでキドノコ自慢の金ツノを切り落とした。
「キャキャキャ! し、小生の自慢の金ツノが!? しかもアーエだと? 何故小生の精神支配から脱却したんだ!?」
「カラアゲリアン見せられたキッカケを利用して目覚めた。このタイミングで体内のマジックラムネを進化させて爆弾にするのも成功したぜ。おいカラーアンデ! 寄生怪獣キドノコを真っ二つにして爆発させろ!」
「わかった! 感謝するぞアーエ!」
素早く必殺の一撃を放つ為にカラーカッターを放つ構えに出た。全ての計画が狂ったキドノコは、あまりに単純なこの面々の精神構造に唖然とし、白い巨人が必殺技を放たない事に意外性を感じた。
そう、進化怪獣アーエはキドノコの背後にしがみついていたのだ。そのため、頭部のカラーカッターで両断しようと構えたカラーアンデは躊躇している。そして胸元のカラースターがアンノウン♪ アンノウン♪ という音と点滅が始まり、カラーアンデの限界稼働時間を知らせる。
「モタモタするな! 俺様ごとやれーーっ!」
その進化怪獣アーエの意志にチームアンデ全員の魂が震え、燃え上がる。逃げられない死を覚悟したキドノコは最後の最後まで足掻こうと抵抗する。
「覚えておけ! 始祖怪獣は死なんぞ! キャキャキャキャキャキャーーーッ!」
胸元のカラースターのエネルギーがカラーカッターへ注ぎ込まれ、二体の怪獣をカラーカッターで真っ二つにした。そして進化怪獣アーエの体内の爆弾が爆発し、第五始祖・寄生怪獣キドノコを撃破した。




