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十八話 怪獣神計画

 黒い蛇のような顔の金ツノを生やした怪獣は、白い巨人と肉弾戦を繰り広げる。富士山の中腹はミストジャマーの濃霧に包まれ、レーダーすら通じずに誰とも連絡は取れない。チームアンデも寄生怪獣の罠ですでに部室内で意識を失って眠らされており、軍関係も同じ罠で何も出来ない状態にある。この戦闘事態が誰にも知られる事の無い戦いになっていた。山の斜面の川に、二つの巨人が戦う余波から土や木々が流され続ける。

 

「自分の手を汚さずに動くから光線技などの遠距離が得意かと思いきや、肉弾戦が得意か」


「光線技は苦手でしてね」


「色々暗躍してるだけあって大した怪獣だな。しかし、この富士山が貴様の敗北の地になるのだ」


「富士山はエネルギー結晶のカラアゲインが発掘される良い場所です。今は人間世界のエネルギー源になっているが、怪獣のエネルギーとして使う為にここの調査もしなくてはいけない。人間をこき使ってね。そして、色彩都市全体はもう小生の手中にある。ここでは誰も助けは来ない。小生の怪獣神計画はここまで順調なのです。これから襲来する残る始祖共を始末するので、いつまでも貴方を相手にしているわけにはいかないのですよ」


「学園の地下エリアのコクーンのデータも取れたから、後は始祖怪獣を倒して自分が宴を開く神主になるだけか。策士め」


「知っての通り、侵入が厳しかった地下エリアのコクーンのデータも取れている。人間にはただの広い空間だが、あそこは怪獣神復活における宴の子宮。怪獣にとっては神聖な儀式の場なのです」


「怪獣神計画など、この私に勝ってから語れ!」


 両手でガードしたパンチを捕まえ、そのままキドノコを投げ飛ばそうとした。しかし、空中で半円を描く途中で舌が飛び出してカラーアンデの腕を傷付ける。そのまま空中で足踏みを連打し、白い巨人は両腕でガードして地面に足が沈みつつも耐えた。そして蹴った反動で後退し、そこから足が地面に固定されるカラーアンデと決着をつける気迫で飛びかかる。


「――!?」


 瞬間、キドノコは舌で地面を突き刺し、そのままカラーアンデの上空を越えるようジャンプした。


「……私の次の手がバレてたか」


 特攻のカウンターとして、カラーゲイザーで一気に始末しようとエネルギーをカラースターに溜めていたのである。それを察知したキドノコは一心不乱にエネルギーの直線上から逃げる為に飛んだのだ。戦闘センスは悪くないと感じるカラーアンデは、


「貴様は怪獣神になると言っていたが、アーエを今後協力者として利用するのか?」


「アーエを早く復活させようと仕組んだのも小生ですし当然です。復活途中でウロウロしてたアーエに噛みついて復活エネルギーを注ぐと同時に、マジックラムネを体内に仕込んだ。小生の美味を実感する道具とする為にね」


「アーエをマジックラムネとして? まさかアーエそのものを――」


「理解が早いですね。アーエはマジックラムネを作る生産怪獣にしたのです。あのアーエの中にはマジックラムネが詰まってる。つまり、アーエの呼吸は人間達のトラウマに影響する死の吐息となるのですよ。貴方を倒した後、小生の精神支配で人間達をコントロールするのです」


「ふざけたマネを!」


「怪獣をあんな人間のいる場所にとどめた自分の判断の甘さを棚上げするなよ!」


 素早くカラーチョップが繰り出され、キドノコの首を叩く。二体が戦うこの間にも、アーエの呼吸から色彩都市にマジックラムネの効果は蔓延し、人々は意識が混濁して倒れ出していた。ここでカラーアンデが敗北すれば、色彩都市から一気に世界中へ寄生怪獣は侵攻して行くだろう。

 すでにチェックメイトだ……とほくそ笑むキドノコは宇宙人としておかしな白い巨人に戦いつつ言う。


「君の正義は人間の正義。宇宙人や怪獣の正義とはかけ離れている」


「そうだろう。宇宙から来る怪獣を倒しているんだからそうなる。それが、私の正義であり、人間の正義なのだ」


 ビュ! と槍のように赤い舌を突き出したキドノコは間合いを取り、右手で霧を払うように振る。


「同じ志の正義だから協力してるとでも言うのか? この各種データを見てみろ。ネットのSNSや各種掲示板。映像媒体の大半はお前への書き込みだ。賞賛する者もいれば否定的な者もいる。それは今や、ただ自分の小銭稼ぎに利用されているだけだ」


 怒気をはらむ声のキドノコは自分の集めたデータをタブレット端末のように空中に映し出した。それは、カラーアンデに対する世間からの評価のデータで有り、それは賞賛もあれば非難も有り、意図的に記事の作成者が利益を得る為に誘導する物もある。それを一年前から当然知っている白い巨人は、新しく見る記事や動画を閲覧する。その青い瞳を見つめる寄生怪獣は、


「君が守る人間は寛容さなどは無く、自己顕示欲の化け物共だ」


「……」


「もし怪獣がいなくなれば、お前はもう人間達に注目を浴びる事は無いだろう。お前が人間を殺戮して自己顕示欲を満たさない限りは」


「怪獣である貴様がこの人間達を導いていけるとでも言うのか!?」


「行けるさ! 行けちゃうのさこれが! 私は寄生怪獣だ。人間の中に入り、人間になり切るなど焼いたパンにバターを塗るぐらい簡単な事さ」


「減らず口を!」


 連続してカラービームがVサインから注がれるが素早く回避された。霧の奥に存在していた大きな大木が川に流れ、カラーアンデはそれを足場にして飛びかかる。ガッ! と勢いよく組み付いたまま怪獣神計画の無謀さを解く。


「怪獣神計画など無謀だ。怪獣神になるなら、人間は滅びる事になる。怪獣神の誕生は惑星を生贄にしての誕生だろうに?」


「地球が生贄になるなら、小生はその前に人間を他の惑星へ移住させる。人間は環境適応能力が高いからな。そこで小生は人間を使い、数多の兵器で他の惑星にいる怪獣などを抹殺する尖兵にするのだ。惑星を滅ぼす怪獣神になれば小回りは利かなくなるから、その方法がベスト」


「何? 全ての怪獣が現代兵器で倒せると思ってるのか?」


「なら核や化学兵器を使えば良いだけさ。多少、惑星の一部が汚染されても惑星そのものが汚染されなければ良い。これは人間の合理的考え方の一つだろう?」


「貴様は全てが間違っている! 怪獣と人間の悪の考えを体現する化身だ! 全宇宙の為にここで倒す!」


「貴方の正義は本当に正しいのか? ここからは力の時間ですねぇ。パラサイトフラフープ!」


 突如、真上から舞い降りる黒い輪がカラーアンデの身体を拘束する。後退した寄生怪獣は身動きの取れないカラーアンデを長い舌で唇を舐めつつ嘲笑う。


「組み付かれる前に技を発動してエネルギーを溜めていたのです。この霧では真上に何かがあっても気付かないでしょう」


「光線技は苦手じゃなかったのか?」


「苦手ですよ。だって多くのエネルギーを消費してしまいますから。クフフフ」


 そして、周囲のミストジャマーに混ぜていたマジックラムネの気化した効果の確認をする。パラサイトフラフープに拘束されるカラーアンデの意識が朦朧としてるのがわかった。


「少し勢いが無くなったなカラーアンデ。早く小生を受け入れた方が身の為だぞ。小生の精神支配は人間を愛するお前なら受け入れられるだろう」


「き、貴様に乗っ取られるぐらいなら――」


「自害はさせん。貴様は利用価値がある」


「自害なんてするものか!」


 何かの衝撃を受けた白い巨人はパラサイトフラフープからすぐに脱出する。その方法が理解出来ないキドノコは霧の中に佇むカラーアンデの奥に何かがいると感じた。


「何故パラサイトフラフープから脱出が出来た!? そもそも色彩都市が死んだように眠っている状況でこの場所に来れる存在など……」


『いるんだな。これが! それがチームアンデ!!!』


 進化怪獣アーエの頭に乗っかる三人の男女が叫んだ。色彩都市の川を富士山方面にひたすら登り、アーエとチームアンデが現れたのである。

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