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十七話 寄生怪獣キドノコ

「私が寄生怪獣? 私はこの色彩(カラー)学園の食堂職員のフクオト。色彩学園の男子生徒を魅了する、魔性の女よ」


 そう言い、その魔性の女は投げキッスをした。三十間近で女として完成されており、大抵の男は落とせるであろう黒髪ロングのスタイルの良い女にアンデは反応しない。

 それはアンデが宇宙人だからではなく、目の前の人間は怪獣に寄生された存在だからだ。


「……ではこの話を聞いて頂く。先日の色彩学園内での爆弾騒ぎの時に貴女はデートで帰ると言った時、ヤイツに『怪獣探し頑張って』と言った。何故、怪獣退治じゃなくて怪獣探しなのか? チームアンデは怪獣退治の為のチームであって怪獣探しのチームではない。あの時怪獣探しをしてるのを伝えてはいない」


「それは何か探してたから怪獣探しと言っただけよ。爆弾事件の怪獣だって隠れてたから探してたじゃない。爆弾探し中とはいえ人の会話までしっかり通信で聞いてるなんて、仲間を信用してないの?」


「仲間は全て信用します。そして、その仲間に近寄るのは全てを敵と思えですよ。怪獣戦とは、もう単純な戦いだけでは終わらなくなっているんです」


 ソファーに倒れるように眠るツルコの横にアンデは座る。相変わらずヤイツもメカハルも気絶するよう眠ったままだ。互いの発する事で空気が重くなる部室内でヒーローの少年は続ける。


「まぁ、確かに今の話だけだと大分強引ですよね。そこで僕は爆弾犯として疑った事により、軍を動かして貴女を監視させたのです」


「……最低ねアンデ君。それで?」


 明らかに目線が鋭くなり、その目は微かに闇を纏うように黒さを感じさせる。


「この都市で働く人間の義務として恋人や友人とどこかに行く時は事前にスマホで届け出る義務がある。それは怪獣に巻き込まれて死亡した時に行方不明になるから。それはデート相手でも変わりはしない。そして、軍に調べてもらった所、ここ最近は貴女に恋人と思わしき人物もデートをした事実も見当たらない」


「他人のプライベートまで調べていい権限が貴方みたいなヒーローにはあるのかしら? ヒーローなら何をしても許されると? どこから来たかわからない宇宙人だけど随分、傲慢なヒーローなのね」


「決定的なのはそれじゃないです。唐揚げさ」


 パーティーテーブルの上に置かれる唐揚げを見つめたアンデは言う。眉を細め今の話が理解出来ないフクオトは聞く。


「唐揚げ? 唐揚げの揚げ方は完璧だったでしょ? いつも、貴方好みにしてあげてるわよ? 何が問題なのよ?」


「唐揚げの揚げ方は完璧だったよ。でも、盛り付け方が甘い。僕の望む唐揚げの並べ方は六個の中心に一つの陣形。この形が美しいのです。お皿の唐揚げは適当に配置してるようで、そうじゃないんだ。食欲にも影響するんですよ。他人に寄生するしか脳が無いのに、そんな事も気付かないのか?」


「も、盛り付け方……? そんな事で……」


「そして、さっき殴った時に本体の黒蛇の影が見えた。証拠を出して欲しければ、その身体のまま始末してもいいんだよ?」


 すると、全ての証拠を曝け出すかのようにフクオトが倒れると、金のツノを生やした黒蛇怪獣が姿を現わす。これは間違い無く、自爆怪獣ダブチジ戦の時にダブチジがデータを渡した怪獣そのものだった。


「……あの時データを受け取ってた黒蛇怪獣。殴られた時に早く出てくれば良かったんだよ。寄生は寄生でしかないから、本人にはなれない。プライド高いね?」


「プライドが無い怪獣では始祖とは言えない。小生は第五始祖・寄生怪獣キドノコ。貴方が先程、唐揚げの中から見つけたこのラムネは麻薬でね。飲むか気化させ吸うかで人間の血肉になると人のトラウマを呼び起こす。つまり、寄生しやすくなるのさ。キャキャ」


「色彩都市の夢遊病者の問題はやはり貴様のせいか。外道め」


 雨によって気化した特殊な麻薬で色彩都市全体の人間が影響を受けていると憤る。


「外道キャキャキャ。言ってしまえばあの雨霧怪獣に雨を降らせ続け、このマジックラムネを溶かし気化させ人間達を寄生しやすくしたのは我が野望の為。野望の核になるコクーンへの侵入と人間達への寄生が安易になれば宴の主役になるのは小生になるのだ」


「ま、待てっ!」


 窓ガラスに飛んで破る寄生怪獣は逃げ出す。カラーアンデに変身するアンデはその後を追った。






 霧が多く出ている富士山方面に逃げた寄生怪獣キドノコを追い、カラーアンデは富士山の森の中を捜索していた。その最中、段々と深さを増す霧は熱源などを探索するレーダー機器が使えなくなる特殊な霧という事に気付いた。すると、少し先に右手に青い結晶を持った寄生怪獣を発見した。


「……カラーゲートを使い、どこかの惑星へ逃げるつもりか?」


「逃げませんよ。少しカラアゲインを補充しようとね。貴方と戦うならエネルギーが必要ですしね」


「日本の富士山周辺にしか現れないエネルギー結晶であるカラアゲインに即効性のエネルギー回復効果は無い。時間をかけて回復する前に貴様は倒される」


「残念ながら倒れるのは貴方だ。ここはすでに霧に閉ざされた結界となった。ここで起きている出来事は誰にも知られる事は無いのです」


「ミストジャマーか。粋な事をするな」


 カラーアンデは濃霧となる周囲の霧が、自分達を隠して世界から隔離する特殊な結界だと感じた。


「クフフフ。散布したミストジャマーはこの富士山周辺のレーダー全てを狂わせる。怪獣警報は鳴らない。だから小生は君を倒した後、彼等の警戒心を刺激する事無く寄生が出来るのです。これは美味ですよ。美味ぃ」


「この色彩都市には進化怪獣アーエもいるぞ? 奴も利用していたのか?」


「アーエは予想より早く復活してしまった。やはりアレは進化怪獣だから予想が付かない点が厄介だ。私が出てくるタイミングで復活する予定が狂ったが、君が倒さなかったおかげで使える駒になった」


「そのせいで雨霧怪獣が犠牲になったのか。雨を利用するなんて、人間社会に余程適応してないと出来ない作戦だよ。始祖の中でも貴様は一番厄介かも知れないな」


 赤く長い舌をシュルルと出す寄生怪獣は嬉しいのかわからないが、かなり興奮している。自分に酔いヨダレさえ垂れている事に気付かないのか、その黒蛇は自分の人間愛を語り出す。

 

「小生は人間を理解し過ぎている。つまり、人間とは管理されたい生き物なのだ。だからこそ小生が愛する人間達を管理をしてやるんでしょうがよ。愛する人間のエゴを怪獣の私が管理をする事で真怪獣国家を生み出すのです」


「人間達は怪獣は認めないだろう。人間は自分達と姿形が同じ人間でさえも、差別と区別で戦争をする種族だ」


 キャキャキャ! と金のツノを光らせ奇声を発するように狂い笑うキドノコは、


「人間達には私の姿は見せない。人間は異形のモノは全て怪獣と見なし攻撃する。ならば小生も人間社会に溶け込み、人間として生活すれば怪獣としては見られる事は無い。蛇の毒ようにジックリと人間を変革してみせるのよ。この小生がね。クフフフ」


 ズズズズ……とキドノコは蛇から形態変化し、人型のバトルモードになった。肉弾戦を好むのか、素早く両手両足を繰り出すとファイティグポーズを取った。その金ツノの黒い怪獣は鋭利な口元を笑わせて言った。


「始祖怪獣達のマザーである怪獣神にいずれなるのは小生なのです! 行くぞカラーアンデ!」


 濃霧に包まれる富士山の森で、第五始祖・寄生怪獣キドノコとの決戦が始まる。

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