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十五話 雨霧怪獣テーギとの決戦

 横殴りの雨が白い巨人と水色の幽霊のような怪獣の身体を襲っている。それをものともしない二人の巨体は激突を繰り返す。

 色彩(カラー)都市のビル群はカラーアンデとテーギを衆人環視する兵隊のように感じられた。その兵隊達は、二体の攻撃で崩れ、倒れ、崩壊する。幽霊のような足の無い浮遊形態であるテーギのスピードにカラーアンデは四苦八苦していた。


「両手のハサミの切れ味もそうだが、想像以上に早いなテーギよ。その浮遊する身体と雨の力の相互作用か?」


「そうさ。オラは雨霧怪獣なんでな。この雨霧を利用して自分に有利な状況で戦おうとしているだけさ。この霧の中で活きるオラのスピードには勝てねぇよ。なぁ?」


「勝負はまだ終わっていないぞ。貴様が寄生怪獣に協力する理由は怪獣神の宴の神主になる為に他の始祖怪獣を倒したいだけなのか?」


「それもあるが一番は仕事だよ。だって怪獣だって食ってかなきゃならないんだなぁ!」


「まだスピードが上がるのか――」


 直線的に攻められるなら反応出来るはずが、全く反応出来ずに首を刺された。しかし、テーギはハサミで切る事を得意としている為に刃を閉じての一撃の為に致命傷にはならない。左右から目まぐるしく繰り出されるハサミにカラーアンデははたき、蹴り上げ、殴りつける。


「この地球は銀河の中でも辺境だけど他の怪獣に支配されて無い。こういう安定した惑星は多くは無いから、ここは始祖怪獣同士だろうが協力するのが一番なんだなぁーっ!」


「なら私一番のハサミを見せてやる――カラーカッター!」


 後方にジャンプしつつ頭髪を硬質化させた光のカッターでテーギの左腕のハサミが切り落とされた。そしてアゲーファイターで出撃しようとしてるツルコとヤイツに通信を送る。


「テーギは早すぎてアゲーファイターでもどうにもならん! 部室でサポートに徹してくれ!」


 カラーアンデから指示が出て、色彩学園の部室にいるツルコとヤイツは出撃を辞めた。そして大雨で滑ってしまう白い巨人はビルを破壊しつつ仰向けで倒れた。それを待っていたと言わんばかりに上から覆いかぶさるよう、右腕の死のハサミを突き出す雨霧怪獣が迫る。


『カラーアンデ!』


 チームアンデの面々が部室で叫ぶ中、チュワッス! と青の両眼は輝き、まだ全てを諦めてはいなかった。


(これなら油断を誘えるし、テーギも回避不能。ここで渾身の一撃を――)


 わざと倒れて真上から攻撃させ、後の先を狙うカウンター技を仕掛ける事にした。カラースターの弱点である胸元のカラースターにテーギのハサミが触れらる――同時にそのカラースターが光り輝き、から揚げの流星から紫のエネルギーの本流が放たれる。

 よっしゃ! とチームアンデの仲間はガッツポーズをした。


「……」


 大雨は止む事無く降り続け、ゆっくりと立ち上がるカラーアンデは立ち尽くす。部室で戦況を見守る仲間達も声を失っている。戦いに参加する者達は目の前の異様な光景を目の当たりにした。


「なああああーーーーっ!」


 雄叫びを上げ、その怪獣は大雨を喜ぶ。まるでダメージを受けていない雨霧怪獣テーギはそこに存在しているのであった。しかも、左腕が再生している。後ずさる白い巨人はごく単純な質問をする。


「き、貴様は何故ダメージを受けていない? カラーゲイザーのダメージも無いし、カラーカッターで失った左腕はどうした……?」


「なぁ? 致命的な攻撃は雨霧化すれば全て無意味。だからオラの左腕も再生ではなく、元々失ってないのさ。さっきまで雨で滑って無い奴がいきなり倒れるという事は狙ったという事だ。それを知ってたら攻撃するフリして雨霧化をするのは当たり前だなぁ? どうするんだカラーアンデ?」


 必殺の一撃さえ雨霧化により当たらない状況を考えると、この目の前の雨霧怪獣はカラーアンデにとって天敵という程の強さを持っていた。


(ふ、ふざけている! これは今までの怪獣……始祖を含めた中で一番強い! 始めは会話で手玉にとったつもりが、戦闘では手玉に取られてる。敵の得意なこの雨の中では――)


 自分が始めに情報を引き出し、優位に立っていたと勘違いしたカラーアンデは雨霧怪獣テーギの強さに絶句した。


 この戦況をチームアンデの部室で大画面モニターを通して眺めているメカハルは、


「この状況だとサポートもままならないわね。単純にスピードがあれだけあると、もう戦術もクソも無いわ」


「ハッ! あの雨霧怪獣のスピードはヤバいな。どこのモニターを見ていいのかわからなくなる……チッ」


 カルピス原液缶を片手で潰すツルコは、凄いスピードで動くマネをして転んで股間をイスにぶつけるヤイツに怒る。


「オメー自爆してんなよ。転んでチンコ打つとかアホの極みだぜ」


「いや、あの動きマネしてれば何か解決策あると思ってよ。チンコは痛いけどな。ん?」


 ふと、真横に立つメカハルを見上げるとその足が股間を踏もうと襲い掛かる。全力で横に転がるように避けた金髪マッシュヘアの少年は乱れる髪が気にならない程に焦りを感じる。ニチャア……とコーラグミを噛むその瞳は闇の胎動を感じさせてヤイツだけでなく、ツルコの肝も冷えた。そしてその少女はカラーアンデに作戦指示を出す。


「……それね。自爆しろカラーアンデ」


「――自爆? どういう事だ?」


 カラーアンデの通信が部室に響くと、理解してないツルコも首をひねり、何故かヤイツは納得した。


「あー……それか。ぱっふーん」


 その作戦内容を理解したヤイツは雨霧怪獣に勝つ秘策を発言した。


「そうだぞカラーアンデ。自爆するしかない。結構痛いけど、それしかない。肉を切らせて骨を断つんだ」


 ヤイツは股間を抑えたままカラーアンデに勝つ為の作戦を伝えた。

 そして、雨霧怪獣は絶体絶命のカラーアンデを見下すよう、両手のハサミをカチカチさせてゆっくりと迫る。


「なぁ? 実戦経験豊富だなカラーアンデ。致命傷になる攻撃だけはギリギリで防御してる。その胸のカラースターだけは攻撃させてくれねぇなぁ?」


「貴様はこのカラースターのから揚げを食べる資格は無いという事だ。そして、揚げる時間は訪れた」


 正義の流星カラースターの唐揚げがカプセル内で揚げられた。その揚げられた唐揚げを食べるカラーアンデのカラースターはアンノウン♪ アンノウン♪ と体力のレッドランプで警告する。残るタイムリミットは一分である。


「仕上げだなカラーアンデ! オラがお前を切り刻んでやるさ! なぁ!」


「実態が無いなら、実体化した瞬間を狙うのみ」


「何故真下を見ている? タイムリミットが近づいて気でも触れたかぁ!?」


 敵の特効すら視界に入れず、真下を見る白い巨人は残るエネルギーの全てをカラーゲイザーとして真下に技を放ち爆発させた。





 白い巨人と水色の怪獣は互いにボロボロになりながら大雨に打たれている。アンノウン♪ という音も小さくなり、もう三十秒ほどで変身は解除されるであろう。その瀕死の敵よりも自分のダメージに絶望する雨霧怪獣は少しでもここから離れようと地面を這いずるようもがいている。


「こ、こんな事をする奴はオラ見た事無いぞ……なぁ? 狂ってるぞ……」


「雨霧化の弱点は粒子である自分自身が衝撃で吹き飛んでしまう事。だから貴様は高速移動は雨霧化をせずに実体化していた。賭けに成功して良かった……」


「か、賭けか。それに高速移動中の実体化まで気付いてるとはなぁ。それをあの猛攻で気付く奴は今までいなかったなぁ……」


「その雨霧の中を移動するスピードを捉えるのは不可能。なら、目を閉じていれば余計な情報に惑わされない。そしてそのハサミが攻撃手段な以上は、攻撃の瞬間は必ず近くにいるという事だ」


 完敗だ……と雨霧怪獣はもう動く事すら諦めた。両腕と右胸。そして顔半分が再生出来ていないこの怪獣に残る時間はほぼ無い。


「どうやら爆発の時に中途半端に雨霧化をしてしまったようで、粒子として吹っ飛んだ身体の再生が出来ない。一発目のカラーゲイザーは予想してたから身体の粒子が消滅する事も無かったのだが……。ダ、ダメージもデカいし、どうやらオラの最後も近いな……」


「強かったぞ雨霧怪獣テーギ。そして貴様の素直さは結構好きだったぞ」


「なぁ? 死を司るはずの第四始祖のオラが敵から褒められるとはなぁ。終わったなぁ……」


 互いに倒れ、天から降り続く雨に語りかけるように話している。そして、最後の刻は訪れる。


「最後に教えてやる。寄生怪獣の寄生している人間は誰かはわからない。協力依頼をして来るメッセンジャーは毎回変わる。そいつは操られているだけだから本心は何を企んでいるかまではわからない。わかるのは、野心が人一倍強い強欲な怪獣って事だけさぁ」


「感謝する」


「オラもだ。おそらく五番目の始祖は寄生怪獣だ。次の戦いは正念場ってヤツだな。オラも怪獣神の復活する宴に参加したかったぜぃ……だがこの戦いは楽しかったなぁ、なぁ、なぁーーーっ!」


 雨霧怪獣テーギは爆発した。

 そして、色彩都市を濡らす激しい雨の日々は終わりを告げた。

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