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十二話 雨霧に遊ぶ進化怪獣アーエ

「カラァ! ……カラァ!」


 豪雨の中、カラーアンデは色彩都市周辺を調査するが敵の怪獣が見当たらない。雨霧の中、白い巨人は街の中を我が物顔で歩き回るが、ただ雨の音が響くのみで肝心の怪獣の姿が無い。


 街の住民などは地下シェルターに非難しており、ほぼ無人となる雨晒しの街で首を振り怪獣の警戒をするカラーアンデのみが動きまわっている。


(どこだ……どこに怪獣がいる? この雨の中という事は、まさかこの水そのものが怪獣じゃ無いだろうな?)


 雨霧で視界が悪くなる都市内で身構えつつ、前後左右を警戒するカラーアンデは考えた。雨の音でかき消されているが、何やらイビキのような音が聞こえたのでこの方面へ飛ぶ。そして路地を曲がると、何かに足を引っ掛け躓きそうになる。紫の大きな物体を見るカラーアンデは驚愕した。


「……んあ? ヌハハッ! もう復活したのか。お、お前はカラーアンデじゃないか!?」


 そこに寝転がっていたタヌキ顔の怪獣は倒しても倒しても復活する進化怪獣アーエであった。ロボットチックになった紫の身体の変化に進化を感じるカラーアンデはあえてアダ名を口にした。


「き、貴様はパクリ怪獣アーエ? 怪獣の反応は貴様だったのか?」


「お前達のレーダーの事などは知らん。知ってるのは復活した俺様は強いという事だ! 勝負だカラーアンデ!」


「貴様如きに付き合っている暇は無い。消えろ!」


「消えて欲しいのはこの雨だ! 俺様が復活しようとしてるのに寒すぎなんだよ! 小さくなって人間の家で雨宿りしてたんだぞ!」


「怪獣が雨に文句を言うな!」


 雨粒を弾き飛ばし飛び上がる白い巨人は、身体の紫の稲妻模様のような電光石火の蹴りを繰り出す。そしてそのまましゃがみ込み、敵の真下から強烈なアッパーをかます。打ち上げられるアーエより先に空中に舞うカラーアンデから両拳を合わせた一撃がトールハンマーのように叩き込まれた――。


「……ふぅぅ。やるなアーエ。まさか今のコンボを全て防ぐとはな」


 一気にトドメを刺そうと仕掛けるカラーアンデのコンボ技は全て防がれた。進化怪獣として本当に進化していると感じる白い巨人は、雨に打たれる紫の機械装甲の怪獣に不快感を示す。


「今の俺様は進化怪獣として本当の進化をしたのだ! ジャンプキック、しゃがみアッパー、そこから両手の拳を合わせて叩きつける。それはアニメで見た事のあるコンボだ。まさか人間の見てるアニメで役に立つ事があるとは」


「ア、アニメだと? 何故貴様がアニメを見る……それにその身体はどう見ても……一体貴様は何の進化を……」


「お前に勝つ為に俺様は進化する。だから復活するまでカラアゲリアンというアニメ見てたぞ。世界を革命する唐揚げを求める怪獣達が現れ、それを倒して行き、人間達の様々な思惑が進む中、世界の謎に迫る展開が揚げ! なアニメで面白いな。これでまた進化した。ヌハハッ!」


 瞬間、色彩(カラー)都市に落雷が落ちる。


「……」


 驚愕の事実を知るカラーアンデは気を失いそうになる。まさか怪獣が地球のアニメを見ているとは思わず、しかもそれはカラーアンデの好きなカラアゲリアンだったのが衝撃的であった。無理にでもアゲーファイターのサポートを頼めば良かったと思う白い巨人は笑うアーエに聞く。


「アーエよ。貴様は進化でもパクリでも無く、不死身ではないのか? 一体、今まで何回復活してるんだ?」


「俺様に数を数える生き方は無い! あるのはお前を倒す……それのみよ!」


「そうか。一つ聞くが、この辺で怪獣を見てないよな?」


「怪獣? それは見てないな。そもそもこの雨の中に現れる怪獣は水中怪獣とかじゃないか。街の中には海が無いからお前の気のせいだろう。あ! そう言えば、怪しい蛇には噛まれたな。あの蛇のおかげてびっくりして早く復活してしまった。雨だからもう少しカラアゲインを集めて回復して、人間の家に忍び込んでゆっくりしていたかったんだが」


「泥棒か貴様は? いや、待て蛇だと? それは黒蛇の金ツノ怪獣か?」


「ん? そうだが、お前の友達か?」


「そんなワケがあるか!」


 ツッコミを入れるようにカラーアンデは攻撃を繰り出す。互いの攻防は続くが、機械装甲がある為に内部にダメージが中々通らない。

 すると、臨時ニュースを伝えるビルのモニターが目にとまり、近くの川の氾濫が起きているのがわかった。どうやら急な豪雨で色彩都市全体の地下水路のキャパオーバーになっており、街が水没する危険性があるらしい。


(くっ、アーエだけではなく色彩都市もどうにかしないとな――黒蛇怪獣はまだ色彩都市にいるならアーエは利用すべきか?)


 ふと、目の前の進化怪獣アーエは第三勢力として利用価値があると考えた。カラアゲリアンという共通点が生まれた事なのか、それによりカラーアンデが混乱したかはわからない。色彩都市などどうでもいいアーエは暴れ続けた。


「そういえば、その黒蛇怪獣曰く、この俺様は始祖怪獣の一番らしいな。つまり、一番強いって事だ! ヌハハッ!」


「なら何故こうも敗北している? 貴様が怪獣神の遺伝子の恩恵を受けてるのは、不死身なのか?」


 まだ余裕だと言わんばかりに左右の膝を突き出すルンルンステップをする仕草をするアーエは答える。


「そんものは知らん! そもそも始祖とか、怪獣神とかも知らん! 俺様にあるのはカラーアンデ! 貴様を倒す事のみ!」


「まともに相手したのがバカだった。とっとと終わらせるぞ!」


 イライラが頂点に達すると同時に胸元のカラースターが鳴り出し時間切れが迫る白い巨人は、両手でVサインをしてカラービームを放つ。それを防御されるが、瞬時に硬質化した髪を放つカラーカッターで機械装甲をズタズタに引き裂き、防御の要を全て破壊した。そして意識を失って地面に倒れる進化怪獣アーエに必殺の一撃を放つ。


「ようやく貴様の進化は危険と判断したぞ。完全に消滅させる。カラーゲイザーをくらえ! カラー……」


 紫のエネルギーがカラーアンデの胸元のカラースターに溜められる。両手をVサインのポーズにして胸元の左右に持って行く時――カッ! と目を見開いたアーエは右の膝を繰り出した。


「ニースピンナーだ!」


「!?」


 この膝から伸びるドリルの奇襲をくらえばカラーアンデもタダでは済まないダメージを受ける。その凄まじい螺旋を描くドリルはカラーアンデの脇腹に直進した。


『……』


 互いの時が一瞬止まり、腰が引ける白い巨人と紫の進化怪獣は優劣別れた顔をした。その顔は逆の展開となり、アーエはニースピンナーが直撃せずに抱えられている事に気付く。


「ア……エ?」


「アン……デ」


 股間を足で踏みつけ、ニースピンナーのドリルを脇で抱える白い巨人は紫の両目を光らせた。


「膝を曲げているなら、膝から技を出すというのが丸わかりだ。バカな奴だ……? まさか……今の技は先週のゲリアンパープルの?」


「そうさ! あのロボットの技の一つ。隠し技だからバレないかと思ったが、お前には通用しなかった。この姿もゲリアンパープルをパクったのさ! ヌハハッ!」


「……先週までのカラアゲリアンをしっかり見たのは評価してやる。貴様はそこの川の氾濫を抑える堤防として存在していろ。そうすれば雨上がりに戦ってやるさ。カラアゲリアンが好きなら、来週も見たいだろ? なら決着はそれからでいいさ」


「お、おう。でも水が多いぞ? こりゃどうにもならんだろ」


「なら飲め。飲めば進化する」


「お、おう。そうだな。でもこんな多くの水飲んで下痢しないかな……」


 一抹の不安を感じつつもアーエはカラーアンデの言う事を聞いた。

 そして、色彩都市の警戒レベルはレッドからグリーンになり、地下シェルターから出てきた人間達が街で普段の生活を再開させた。


 色彩都市の横を流れる大きな川の急流を堰き止め、時に飲みつつ流れをコントロールしている紫の怪獣はその場でただ立ち尽くしている。その光景を通り過ぎる一般人は眺めていた。


「ママ。あの怪獣。良い怪獣だね」


「しっ! また暴れられたら困るから余計な事は言わないの!」


 母親に叱られた児童は手を引かれどこかへ消えた。

 報道で豪雨対策の怪獣としてカラーアンデが協力させていると伝えられ、何故か進化怪獣アーエは良い怪獣では? という噂が出回った。下痢をしているが、水の中だからバレないと思うアーエは心の中で思う。


(良い気になりやがって人間共め……。来週のカラアゲリアンは見たいから、すぐには戦わなくてもいいかな。にしても、下痢がバレたらシャレにならんぞ。ヌハハッ!)


 無の感情になり雨の槍を降らす大空を見上げた。茶色い川の流れは微かに青く染まっていた。これも、夜のニュースとして水質異常ではなくアーエの下痢として色彩都市に放送された。雨はただ色彩都市を覆うように降り続く――。

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