表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉がヒロインで何がわるい。  作者: 星空 隼
6/8

第五話 休日(昼)

 俺たちは昼から映画を見るために、ショッピングモールに来ていた。

 このショッピングモールは映画館が隣接されているため、映画が始まるまでの時間をつぶすことができる。

 とりあえず昼食をとるために、俺たちはフードコートに向かった。


 休日の昼間だからか、フードコートには多くの人がいる。なぜだかわからないが、カップルばかりが目に入り、無性に腹が立つ。

 俺たちみたいに、男女でいるがカップルじゃない人もいたかもしれない。その人たちは完全なとばっちりなわけだが、リア充はむかつく。


 俺の中では、リア充とは男女交際しているやつらのことを指している。

 リア充という言葉の意味的には、学生では、学校などでいろんな人と関わっていて友達が多い、周りから見て楽しそうに学校生活を送っている人を指すのだろう。

 そういう意味でリア充という言葉を使うと、俺はリア充側の人間であるといえなくもない。

 だから、俺はリア充イコール男女交際をしている人間と定義している。

 こう定義することで、俺はリア充を非難でき、彼女がいない自分を慰められる。結局は一時的な自己満足でしかないが。

 まあ、自分が持ってないものを持っている人間が羨ましく見えるのが当然であるように、リア充が非リアに憎まれるのは自然の摂理であり、必然であるわけだ。


 しかし、雪穂姉の前で、蘭丸といる時みたいにリア充を非難するわけにもいかないので、心の中で

「ちっ、見せつけてんじゃねえぞ、人前でいちゃつくなよくそが」

「リア充爆発しろ、不幸になれ」

 とまあ、こんなかんじに繰り返し罵っていると、

「真は何食べたい?」

 と聞かれる。


 リア充を非難することしか考えてなかったため、すぐに思考を変えることができず言葉に詰まってしまう。

「あっ、ええっと、・・・」

「すぐに決めなくてもいいよ。まずは席取らなきゃだし。けど人が多いから、同じ店のものなら真に席取るのまかせて、私が買いに行こうかと思ってね。」

「ごめん。ちなみに雪穂姉は何にするの?」


 俺がそう尋ねると、雪穂姉はすぐに返答した。


「私はうどんにしようと思ってる。この後映画館でいろいろ食べることも考えて、少し軽めにしようと思って。」

「たしかに、映画見るときって何か食べるな。なら俺もうどんにするよ。さっきサンドウィッチ食べたばっかだし。雪穂姉と同じのでいいよ。」

「わかった。じゃあ、席取りよろしく。」


 そう言って、雪穂姉はうどんの店の列に並びに行った。

 俺も二人で座れる席を探す。

 しかしこれが、全然ない。そこで、一人席の方を見ると、まあまあ空いていた。

 なので、一人席に座り、隣の席に荷物を置いて席を確保する。


 雪穂姉が席に来てから三分くらいで、机に置いていた呼び出しの機械が鳴り、二人で店に注文した料理を取りに行く。

 映画の開始時間まで思ったより時間がなかったせいで、早食いして映画館に向かう。


 あらかじめチケットは購入していたので、ポップコーンやジュースなどを買いシアターに入る。

 シアターにはすでに多くの客が入っていた。

 しかし、シアターの最後列から五列目と、かなり後ろの席だったので、俺の隣にも雪穂姉の隣にも人はいなかった。

 二人ともが席についてすぐにシアター内が暗くなり、映画の予告などが流れ始める。

 そして、映画が始まった。

 俺たちが見に来たのは、恋愛もののオリジナルアニメ映画だ。


 話は進んでいき、クライマックスと思われるあたりで、雪穂姉が手を握ってきた。

 こんなシチュエーションは初めてでどうしたらいいのかわからない。

 ラノベとかだと手を握り返すのだろうが、姉だし、現実ではどうするのが正解なのか俺は知らない。

 だが、男としてここで逃げるわけにはいかない。

 だから、ぎこちなくはあったかもしれないが、俺は雪穂姉の手を、そっと握り返した。

 そしてその時、主人公がヒロインに告白し始めた。


「好きだ明日香。僕は・・・きっと何度生まれ変わろうと君を好きになる。そして、何度でも君を幸せにしてみせる。だからこれからは、ずっと僕のそばにいてくれないか?」

「うん。いるよ。これからは何があっても、ずっとハルのそばにいる。だって、私はハルのこと愛してるから。」

「ありがとう、明日香。僕も愛してるよ。」

 

 主人公がそう言うと、二人は顔を近づけていき、ゆっくりと長いキスをした。

 俺はこの時たぶん、顔が真っ赤になっていたと思う。なにせ、耳まで熱くなっていたのだから。

 しかし、なんてタイミングで告白しやがる。

 俺が手を握り返したタイミングでそんなこと言われたら、雪穂姉に勘違いされるかもしれないだろ。


 姉弟だからそんなことはない。


 そう思いたいが、俺が姉に恋してるから言い切れないんだよなぁ。

 といろいろなことを考えているうちに、映画は主題歌と共にエンドロールが流れていた。

 そして、その後まもなく映画は終わった。


 シアターを出て、ポップコーンなどのごみを片付けて映画館を出る。

 そして、ショッピングモールのベンチに腰を下ろす。

 映画を見た後なのだ。やはり、映画の話になる。


「けっこうおもしろかったね。」

「うん。そうだね。」

「いやぁ、ハルと明日香が一緒に死んだときは、ほんとにびっくりしたよ。」


 ん?

 なんか今、雪穂姉とんでもないこと言わなかったか。

 主人公とヒロインが死んだとかなんとか。

 俺の聞き間違えか?


「へぇー、雪穂姉はそのシーンが一番心に残ったってこと?」

「うーーん。一番心に残ってるシーンは告白のとこか、最後の、二人が生まれ変わってまた出会うところかな。」

「そっか。俺は告白のシーンかな。」


 一応普通に会話を続けているが、心の中ではめちゃくちゃ驚いている。

 主人公とヒロインは一度死んだらしい。

 そして、生まれ変わったらしい。

 機会があればもう一度ちゃんと見よう。


 ベンチで映画のことを一通り話した後、ゲーセンで一時間ほど遊び、俺たちは帰路についた。

 ちなみに、ゲーセンに一時間しかいなかったのは、雪穂姉がフィギュアやぬいぐるみなどを乱獲して追い出されたからである。

 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ