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姉がヒロインで何がわるい。  作者: 星空 隼
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第四話 休日(朝)


  明日は、新学期始まって初の一日休みだ。

 これまで、休日に部活が休みだったことが無かったため、一日中家で好きなことしながらゴロゴロしていたい。


 しかし明日は、今俺と雪穂姉もはまっている大人気バトルファンタジー「新魔術師の神道(ゴッドロード)」の新刊発売日である。発売日の明日の朝から並ばないと、店舗特典は手に入らないだろう。

 俺と雪穂姉は、このラノベが出版された時から読んでいた。もともと評価は高かったが、はじめは人気がなかった。

 けれど、徐々に人気が出ていき、アニメが始まってから人気が爆発しており、今は原作・コミック共に、発売後即売り切れするだろう。


 明日は、忙しくなりそうだ。



 翌日の早朝。

「起きて真。早く起きて!]


 強く体を揺すられ目が覚める。


「おはよう雪穂姉。ありがと、起こしてくれて。」

「そんなのいいから早く準備して。」

「はいはい、わかってるって。」


 そんな会話をしながら着替えを済ませ、昨日の夜用意していた荷物を手に取って雪穂姉と一緒に家を出る。

 両親も星華もまだ寝ていて見送りは誰もいない。

 

 まあそれも当然か。なんせ現在時刻は五時十分だからね。


 駅に着くと、人は一人もいなかった。普段の人が多い状態しか知らないせいか、すごく広く、寂しい感じがした。

 それに、到着した電車も人はほとんどおらず、ガラガラだった。座れたのはよかったけど。


 目的地に着くと、そこは朝早いにもかかわらず、多くの人で賑わっていた。

 その場にいる全員が同じものを買いに来ているので、自然とその話になる。


「カップルでこんな時間から並ぶとは、二人とも新魔術師のファンなんですね。」

「いや、僕たちはカップルじゃなくて姉弟です。まあ、二人とも原作の初期からのファンなんですけどね。」

「姉弟だったんですか、これは失礼。けど、姉弟だろうが何だろうが、身近な人と好きなものについて語り合えるのはいいですよね。」

「そうですね。そちらは、いつごろから読み始めたんですか?」

「原作の三巻が出たころからですね。」


 と、列の前の人と話し込んでいるとあっという間に開店時間になった。

 知らない人でも、同じものが好きだと話は盛り上がるし、楽しい。こういうのが、ネットではなく、店で買う醍醐味だったりする。

 店では、目当てのものと今読んでいる作品の続きなどを購入した。二人とも頻繁に来るわけではないので、結構買い込んでしまった。


 荷物持ちは俺だとわかっていたのに。


 店を出て、休憩がてら近くにあったカフェに入る。

 俺は朝ごはんを食べてなっかったので、サンドウィッチとコーヒーを注文する。ちなみに、雪穂姉はコーヒーを注文した。

 俺がサンドウィッチを食べていると、コーヒーを飲みながら今日買った本を読んでいた雪穂姉が急に話しかけてきた。


「ねえ真、それ一口ちょうだい。」

「まあいいけど。」

 そう言って、食べかけのサンドウィッチを二つに分けようとすると、

「わざわざ分けなくていいよ。それに、私本読んでて手汚したくないから、そのまま食べさせて。」

 と言ってきた。


 姉弟(義理)とはいえ、美人の雪穂姉にあーんとかハードルが高い。

 しかし、ここで逃げるわけにはいかない。

 義理の姉である雪穂姉にできなければ、星華にあーんするなど夢のまた夢。今後星華と距離を縮めた時のためにも、雪穂姉にあーんをしなければ。

 

 などと俺が葛藤してる間に、雪穂姉は顔を近づけてくる。

 顔の正面に垂れてきた髪を耳にかける。

 そして、

「はやくちょうだい。」

 と言って、口を開ける。


 雪穂姉の顔が目の前に来てドキッとしてしまう。

 姉弟だから、意識してじっくり見たことはなかった。

 そのせいか、普段より美人に見える。いや、これが本当の雪穂なんだろう。よく見ると、星華とは違ったかわいさがある。


「ねえ、まだ?」


 雪穂姉に急かされて、俺は覚悟を決める。

 ごくりと唾を飲み込み、意を決してサンドウィッチを雪穂姉の開かれた口に近づけていく。


「あーーん」

 俺がそう言うと、雪穂姉はサンドウィッチをはむっ、と一口食べる。

 すると、

「真、もう一口もらってもいい?これすごくおいしかったから。」

 と言ってきた。


 心臓はバクバクと激しく鳴り、頭は恥ずかしさでいっぱいだったのに、「うん。」といってしまった。やっぱダメとも言えず、もう一度雪穂姉にあーんすることになってしまった。


 今度は俺の方から雪穂姉に近づいていく。

「はい、あーーん。」

 おれの言葉に合わせて雪穂姉は口を開けてサンドウィッチを食べる。

「んー。やっぱりおいしっ。」

 と、のんきであーんのことなど気にもしてない雪穂姉とは裏腹に、さっきとは違ったあーんをして、俺の頭は照れと恥ずかしさでパンクしていた。



 そして、この後はとくに何事もなく進み、休日の午前は終わった。

 



 


 

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