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いつもずるいずるいと私のものをとりあげる腹違いの妹に婚約者も盗まれ、婚約破棄されたので、呪いのエキスパートに弟子入りして呪い殺してあげることにしました。

作者: 三日月

「何を言っているんだ、頭おかしいのかお前?」


 私は呪いを専門にしている人にこのように言われてしまいましたわ。

 

「頭がおかしくなんてないですわ。私は妹の裏切りにあって、婚約者をとられ、妹いじめの罪とやらで婚約破棄されたのは腹が立つから、呪い殺そうと……」


「直接殺せよ!」


「それじゃあ私は警吏につかまりますわ! 完全犯罪を!」


「呪いはするが、俺は殺しはしない!」


「それじゃあ呪いの意味ありませんわ!」


 私は目の前にいる呪術師にそれ存在価値ないですわと返してしまいました。

 私がどうして呪い屋になどにきたのか…それはとても泣けるお話だったのです。



『オリビア・マクスウェル! お前は妹をいじめ、彼女の大切なものを取り上げるそうだな。その罪により婚約破棄する!』


 私は妹がお姉さまがいじめますのと泣いているのをあっけにとられ見てました。

 情けない話ですが、私、これまで妹をいじめているなんてことを婚約者に吹き込んでいるとは全く想像もしてませんでしたの。


 しかしどれだけ否定しても、王太子殿下はお前の性格が悪いのは聞いているというばかり。

 ええ、私は婚約破棄され、妹の温情とやらで実家に返品されるだけですんだのです。


 ええ、私はいつも妹にずるいずるいといわれて、大切なお母さまの形見のペンダントや、ドレスをとりあげられることなどはあっても、妹のものをとりあげたことはありませんわ!


 妹とは母違いでした。母が亡くなり、後妻に来た義母とは相性が悪く、生まれてきた妹はわがまま。

 父は家庭をかえりみず、最悪の家でしたわ。


 殿下の婚約者に選ばれ、やっと脱出できると喜びましたのよ。


 だがしかし、あんな嘘で婚約破棄されるなんて……。

 私考えましたの、お前がそのつもりなら、私も復讐をしてあげると!



「いや、ならさあ直接殺せよ」


「それはいやですわ!」


「なら違う方法考えろ、呪いといってもな、けがをさせるだけとかちょっと病気にさせるだけとかしかしてない良心的な呪術師なんだ俺は!」


「それ、良心的とは言わないと思われます」


 呪い屋に入り、弟子にしてくれと土下座したのは私です。

 師匠と呼ぶとやめろと怒りましたが、話だけは聞いてくれましたわ。

 私より2歳ほど年上なだけの青年、珍しい黒髪黒目をしていました。


「……病気でも怪我でもいいですわ。弟子に!」


「……土下座するなあああ!」


 このやりとりの末、やっと弟子にしてもらえましたが……。


「地味ですわ」


「地味言うな!」


 呪いの人形を作り、怪我をさせたい部位に針を刺す。毎夜毎夜、そして一か月、怪我って……飛んできたボールにあたって、少し赤くなっただけって。

 いえ、呪いの成就を見るための手段もあるといわれたので、無理やり師匠にやってもらいましたの。


「……お前の憎しみが足りない……」


「いやそんなこと言われても」


「もっと憎め!」


 私は今度は病気にさせることにしました。

 泥水に人形を毎夜つけて、病気になれ病気になれと唱えて……二週間後に妹は風邪をひきました。

 数日で治りましたわ。


「いや、ただの風邪って」


「憎しみが足りないんだよ!」


 でも師匠の仕事を見ていても、物貰いにさせるとか、出来物ができたりとかだけで、大した効果はありません。依頼人が怒って帰っていくことも多い。


「よく商売が成り立ちますわね」


「……かつかつなんだよ実は、だからお前を養うのも大変なの!」


 私は師匠がため息をつくのを見ます。二か月ほどお世話になってますが、きちんと家事などは手伝ってますわ。


 そうこうするうちに婚約式が決まり、さすがに出ろと両親に言われてしまいましたわ。


「もっとすごい呪いはないかしら」


 私は師匠が教えてくれる呪いがじみすぎて、もっとすごい呪いを求めて師匠の本を盗み読みして、すごい呪いを発見して、それを実行しようとしましたの。


「……へえ神殿の裏庭で、呪いの人形を釘で打つだけでいいのね」


 簡単だわと思い、実行しましたが、でも婚約式は明日です。どうなるのでしょう……。



「ここに婚約を!」


 殿下の宣誓の途中で、妹が顔を抑えてうずくまりましたわ。呪いがと思ったのですが……顔が、魔物のように恐ろしい顔に変化してました。

 みなうわあと驚きの声を上げて逃げまどいます。

 あげく、火を吹いて……。


「危ない!」


 師匠があっけにとられる私を抱え、急いでとびます。火は私をかすめましたが、けが人などはいないようです。髪が少しだけ焦げましたが。


「お前、あの呪いを実行したな。あれは人の本性を前面にだす呪いだぞ!」


「え? ひどい病気にさせると……」


「違う、バカ!」


 私はどうしようと妹を見ます。火を吐き続ける魔物になってしまいましたわ。

 仕方ないと師匠が呪文を唱えると、光が現れ、妹の姿が元に戻り……あら気絶したようです。


「反作用がないように今からお前を守る。ほら帰るぞ!」


「反作用?」


「あれだけの呪いだ、下手をすればお前死ぬぞ」


「え?」


「だから簡単なのしか教えなかったんだ!」


 私は師匠に連れ戻され、潔斎だといわれ、白い服に着替えさせられ、師匠が書いた魔法陣の上に座らされ、丸一日そこから動くなと命令されました。

 いえ、動くなって寝るときとかそのお……。


 それくらいはなんとかするっていわれましたけど。思い出したくないですわ。


「これで大丈夫だ。しかし…もうあんなことするな」


「もうこりごりですわ……」


 私は師匠に頭をぽんぽんと叩かれ、命は大事ですからと頷きます。

 師匠はどうしようもないやつだが見捨てられないなあと笑いました。

 なんというか少しときめいてしまいましたわ。


 あ、魔物になった妹は、あんな化け物とは婚約できないといわれ、婚約を破棄され、辺境送りになりましたわ。

 実家も連座でした。

 あんな騒ぎを起こしたのと化け物を婚約者にしようとしたと殿下が笑いものになったからですの。


 そして笑いものになった殿下は陛下に、化け物と婚約しようとするとはと怒られ、謹慎しています。


 私は相変わらず、地味な呪いをかける師匠と、その弟子として呪い屋をしています。

 結構楽しい日々ですわ。

お読みいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 結局自分の名誉は一切回復してない上に『だから簡単なのしか教えなかったんだ!』とか一番危険なことを最初に教えてないの意味わからんすぎる
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