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短編大作選

ポニーテール × ポニーテール

作者: 高嶋友常
掲載日:2021/07/14

『01 ポニーテールという鎖に繋がれて』


私の長いポニーテールは、あなたが私を操るために伸ばさせたものだ。


犬のリードのように、あなたは私のポニーテールを掴んで、私のことを操作する。


ポニーテールが好きだという、あなたの為なのだから、別にいい。


地肌に感じる強い刺激も、最近は好きになってきた。


付き合いたての頃に、私がはしゃぎすぎて、はぐれてしまったのが、このポニーテールの始まりだ。


全部、私がイケないんだ。


今は、嫌だという気持ちが、少しは薄まってきた。


駄目な私への、愛情から生まれたのだから、しょうがない。


ボーッとして、車道にはみ出したときに、ポニーテールを引っ張って、助けてくれたこともあった。




今日は、久々の一人だから、思う存分、羽を伸ばしたいと思う。


あなたが、一人の時間をくれるなんて、珍しい。


ついつい、スキップが見え隠れしてしまう。


でも、不安たちが次々と、この胸に生まれてくる。


心に、寂しさがたくさんいる。


あなたがいなくなって、初めてこんな不安を感じた。


安心は、あなたが与えてくれていたんだ。




電車のホームに来たけど、混みすぎていて、息が詰まる。


どこか、自然溢れる場所に、逃げたいと思っていた。


なのに、慣れた場所から遠退くほどに、苦しくなっていく。


ホームに、電車がやって来た。


この電車は、通過する電車だ。


ホームの端の、黄色い線ギリギリの場所に立ち、次の電車を待っていた。


すると突然、後ろから何者かに押され、前のめりになった。


目線の先には線路があり、すぐ右には赤い電車が迫っていた。


もう、終わりだと思った。


ここで閉幕だと思った。


線路に落ちて轢かれる想像を、脳がリアルにこなしてしまっていた。


突然、頭に激痛が走り、引き戻され、黄色い線上で仰向けに倒れた。


下に落ちずに済んだ。


「大丈夫か?」


上には、あなたの覗き込む無表情の顔が、アップで存在していた。








『02 あなたのポニーテールは命綱』


人がすごくすごく怖いんだ。


誰も信じられないんだ。


信じると裏切られるからね。


でも、信じてくれたら信じる。


本当に信用してくれていると感じたら、信用する。


僕の行動は鏡みたいなものだ。




まだ、信用した人は少ない。


信用した人は、まだ一人しかいない。


あとにも先にも、一人だけだろう。


一人だけ、心から信じられる人がいる。


まだ出会って日は浅いが、濃い内容の言葉をくれた。


あなたの中には、ぎっしりと優しさが詰まっている。


しっかりとしたポニーテールを持ち、そのポニーテールのように強い。


女性にしかない、芯のある強さがある。


あなたのポニーテールを掴んでいれば、落ち着いて、何も気にならなくなる。


あなたのポニーテールを掴んでいれば、一生穏やかな気持ちで生きていける。


そう、確信していた。


あなたのポニーテールは命綱なんだ。


あなたのポニーテールが、間違いのない日々に、連れていってくれるんだ。





あなたのポニーテールが、突然無くなっていた。


美容室で、切ってしまったらしい。


間違えて切られたのではなく、自らの意向で切ったのだという。


会社の規則で、しょうがなかったらしい。




僕は、かなりかなり落ち込んだ。


あなたのポニーテールに、導かれて生きてきたから。


あなたのポニーテールに、落ち着かされて生きてきたから。


あなたのポニーテールを触らないと、ダメになってしまう。


ポニーテールが恋しい。


ポニーテールがないと、生きていけない。


もう、他のポニーテールを探すしかないだろう。




一人で歩いた。


一人で外を歩いた。


久し振りの一人での外出だ。


不安しかない。


不安に押し潰されそうだった。


途中、道端に座り込んで、動けなくなった。


少しの時間が流れたとき、優しそうな声が聞こえた。


『大丈夫ですか?』


パッと顔を上げると、優しそうなポニーテールの美女がこちらを見ていた。


不安は、スッと顔を隠してゆく。


胸がキュンと、締め付けられるようだった。








『03 ポニーテールは触角なり』


ポニーテールは私の命。


ポニーテールが整わないと、気分が晴れない。


家にいるときも、ずっとポニーテール。


寝ているときも、ずっとポニーテール。


毎日、ポニーテール姿でいる。




誰かとの距離や、何かの感触だったりが、触らずに分かる。


あなたの香りも、あなたの熱も、触らずに分かる。


このポニーテールで、全てが感じ取れるのだ。


この感覚が無いと、不安になる。


無いと、たぶん、誰とも接することが出来なくなる。


あなたの私への気持ちも、ポニーテールで分かる。




あなたを好きなライバルは多い。


だから、あなたと楽しく喋っていると、攻撃される。




教室で普通に、本を読みながら座っていた。


そこに、嫌な感じの女子が現れて、私のポニーテールが切られた。


もう、何も感じられなくなった。


無気力が、これから続くのだろう。


私からポニーテールを取ったら、何も残らない。




ただひとつ、あなたを好きという気持ちだけは、残った。


もしかしたら、ポニーテールよりも、あなたの方が、大事なのかもしれない。

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