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同胞は先住民

それから、3時間ほど歩いただろうか。私たちは無事にネクロコリスにたどり着く。

「何度か来た事があるけど、奇妙な場所よね。」

ネクロコリスは、ザムアの言う通り奇妙な造形をしている。丘の周囲にある森の木が、何かの意思があるかのように丘全体を飲み込んでいた。

そして、丘は全体が見上げるような高さの崖になってて、その上に登るには木を伝うしかない。

でも、その崖のいたるところに人が通れそうな穴が開いていて、あからさまに何かがありそうな雰囲気だ。

「丘と言うより、何らかの遺跡だよな。」

同じことを考えていた私は、シャウの言葉を聞いて何度も頷いていた。

「ザムア、来た事があるなら、中の構造も判ってるのか?」

「多分、変わってないと思うから、大丈夫だと思うわ。」

そう言いながら、ザムアが入り口と思われる洞穴に近づき、その場にしゃがみ込んだ。

「これは、動物の足跡かしらね。それ以外にも・・・。」

シャウがザムアの側に近づいて、同じように足跡を調べる。私は念のため2人の背後に立ち、周囲に目を向ける。

「この足跡は、人か?ここまではっきりと残ってると言う事は、盗賊ではないようだな。」

2人が見ているのは、地面に付いている靴の痕だ。

「そうみたいね。」

しゃがんでいたザムアが立ち上がり、改めて洞穴の奥を覗き込む。

「この奥に、この足跡の主が居るのかしらね。」

「出ていく足跡が無いからな。多分いるんだろう。生きてるかどうかは分からないがな。」

シャウも立ち上がり、ザムアと同じように洞穴の奥を覗き込んだ。

「まあ、中からは人間の匂いはしないな。」

そう言って、シャウが私とザムアに問いかける。

「さぁ、この先どうする?」

「そうね、途中までシャウが索敵で、私が明かりを管理するわ。」

2人の役割がすぐに決まった。・・・え?あれ?私は何をするの?

「さて、行きましょう。」

ザムアが洞穴を指さし、ネクロコリスに入ろうとする。いやいや、ちょっと待って、私は何するの?そう思って、私は2人の肩を叩いて、私の存在をアピールする。

「大丈夫、ハールの事は忘れてないわよ。ただ、ここにはハールの敵は居なさそうなのよね。」

「そうだな。まあ、この2日間頑張ってくれたんだ。ここは俺に任せてくれ。」

ザムアは指を口に当てて空を見上げながら、シャウは自分の胸をポンと叩いて私に答えた。

まあ、ここなら特に何も起こらないだろうし、そう言うなら私は2人の背中を守りましょうか。

そう考えた私は、2人に対して頷いて答え、2人の背中を軽くたたいた。

「ハールなら安心だな。」

「そうね、後ろは任せるわ。じゃあ、改めて行きましょう。」

ザムアが掛け声に合わせて右手を差し出す。私とシャウもザムアの右手の上に右手を乗せ勝鬨を上げ、意気揚々とネクロコリスに突入した。

ネクロコリスの内部に入った私達。入り口からの光が途切れた所で、ザムアが少し呪文を唱え、暗闇に指で円を描く。

すると、円を描いた場所に周囲を明るく照らす3つの玉が現れた。

ザムアはそれらを手に取り、私とシャウに手渡す。この光のおかげで、私たちの周りは罠を見抜ける程度に明るくなる。

そして、その明かりはネクロコリスの様子を照らし出した。

ネクロコリスは、周囲の木が内部まで浸食しており、そのせいか少し湿気が強い。

木の間には、本来の壁が見えていて、木と壁の間からはわずかに光が差し込んでいる。

しかし、わずかな光は闇をさらに深くする効果しかない。これだけでは、地面はおろか、目の前の仲間の姿すら見えないだろう。

私は、ザムアの出してくれた光に感謝しながら、ネクロコリスの壁に手を触れる。

内部の壁はかなりボロボロになっているが、木がその補強をしているため、見かけよりは強度がありそうだ。

だが、地面にも天井にも所々穴が開いている。落ちたら面倒な事になりそうな感じね。

「天然のトラップが満載だな。」

その穴を見たシャウが、思わず感想を述べる。

「落ちたら、私たちの仲間入りだから、気を付けなさいよね。」

そう言いながら、ザムアが人一人がすっぽり入る大きさの穴を覗き込む。

そこには、かなり前にこの罠にかかってしまったのであろう、哀れな冒険者がその身を晒していた。

「ああはなりたくないものだな。」

穴の深さは、3mも無いだろうが、周囲の明かり無しで落ちた場合は、大怪我は免れないだろう。

「打ち所が悪かったのかしらね。」

既に性別が判らない程に白骨化が進んでおり、この冒険者がいつからここに居るのかが窺い知れる。

「少し小遣い稼ぎするか。」

そう言いながら、シャウは壁の付近に落ちている石壁の塊を持ち上げ、冒険者が居る場所へ落とす。

塊は、地面に落ちてそのまま転がっていった。

「地面は大丈夫そうだな。」

「いけるの?」

「流石に、下に降りたら何か考えないと登ってこれないかもしれないな・・・。」

そんな時、シャウは私を見つめてきた。そして、ゆっくりと近づいてくる。

私は、少し首をひねりながらシャウの行動を見守る。

「ハール、その剣を貸してくれないか?」

シャウが私の腰に携えている二振りの剣を指さす。

そのお願いに、私は少し動きが止まる。そして、私がシャウの指さした剣を鞘ごと腰から取り外し、シャウに確認する。

シャウは私の行動に、首を縦に振ってそれが正解だと言う事を教えてくれた。

私が、シャウに剣を手渡す。それは、昨晩私達を襲ってきた盗賊の持っていた大きな剣だ。

シャウがその剣を受け取り、剣の柄にロープを結びつけ、少し長めにしたロープの先を、剣の鞘に結び付けた。

その鞘を、近くに空いていた穴に入れて、鞘をひっかける。

「これで良し。じゃあ、行ってくるよ。」

剣を地面に投げ落とし、ロープの張りを確認するシャウ。そして、するするとロープを伝って下のフロアに降りた。

そして、シャウは冒険者の元で膝をつき、冥福を祈る。その後、冒険者の指にはめられていた冒険者ギルドの指輪を取り外した。

「お疲れさん、ゆっくり休めよ。」

そう言って、シャウはもう一度、冒険者の冥福を祈り、剣に結び付けたロープを掴み、ゆっくりと上り切った。

「シャウ、お疲れ様。」

「あぁ。」

シャウの取ってきた指輪をザムアが受け取る。

「ハール、助かったよ。」

私は、シャウから剣と鞘を受け取り、それを再び腰に備えた。

私たちの行為は、一見死体漁りのようだけど、私達冒険者の役目でもあるの。

本来、ギルドの支給した指輪は、装着者が命を落とした場合、指輪から情報を送り、その装着者の最期の場所をギルドに伝える。

それを受け取ったギルドが、定期的に捜索隊を出すんだけど、こんな場所だとまず捜索隊は来ない。

そんな不憫な場所で生を終えた冒険者の遺品と指輪を回収するのが、同業の冒険者の仕事の1つ。

何で指輪なのかって?指輪には、その冒険者が生きた証が刻まれてるからね。これをギルドに見せれば、報酬がもらえるという訳。

「ザムア、指輪の処理は任せるよ。」

「分かったわ。」

なお、ギルドに渡す以外にも、売りさばくっていう処分方法がある。ギルドの指輪は、高性能であるがゆえに、古物業界では高値で取引される。

もちろん、ギルドに渡すよりもはるかに高値だが、売り払った指輪の使い道を考えると、そこに売るのもどうかと思うのよね。

「さて、これは悪用されないようにギルドに返しましょうか。」

そう言いながら、ザムアは道具袋に指輪を入れる。

「じゃあ、改めていきましょう。これよりも大きな稼ぎになるのですからね。」

ザムアの言葉に、私たちは頷く。そして、私たちはネクロコリスの奥に足を進めた。

奥に進むにつれ、周囲にあった木はなくなっていき、ネクロコリスの本来の姿が現れる。

シャウが物珍しそうに周囲に光を向ける。

「この場所は、本当に奇妙だな。表もそうだが、内部の通路がしっかりしている。」

「ここ、昔は誰かが住んでたのかしらね。」

「だろうな、相当の人数が住んでたと思うぞ。」

私は、道沿いの部屋を覗き込む。そこには、白骨死体がそこら中に転がっている。

「ほとんどが動物ね。まぁ、こんな所に人は滅多に来ることはないわね。」

部屋の中には色々棚やロッカーはあるのだが、中身は全て無い様だ。

「まだ、俺が居ても問題はなさそうだが、ネクロピースはどこにあるんだ?」

「そうね、まだもう少し先ね。その場所の前に、大広間があるから、そこで待ってもらってもいいわね。」

「そんな場所があるのか。」

「ええ、そこまでは安全かと思うわよ。」

そう言って、ザムアは大広間の方向を指さした。

「まあ、行って確認してみるか。」

「ハール!行くわよ!」

ザムアに声を掛けられて、部屋を覗き込んでいた私は急いで2人の後についた。

そして、ネクロコリス内をしばらく歩き、鉄の扉の前に立つ。鉄の扉の上には、何か文字の書かれた板が張り付いている。

「ここか?」

「そうね、ここよ。あれに見覚えがあるもの。」

そう言って、文字の書かれた板を指さすザムア。

「なんて書いてあるんだ?」

「さぁ?大広間って書いてあるんじゃない?」

適当なザムアの答えに、シャウが苦笑いを返す。

「まあ、場所さえあってればそれでいいさ。」

扉には鍵は掛かって無さそう。シャウが扉のノブに手をかけ、ゆっくりと回して引き開ける。

「ここは・・・?」

「あら、前来た時とはずいぶんと変わってる感じ。」

扉の奥は、かなり広い空間になっていて、その壁面と中央部には鉄の置物がずらりと並んでいる。

それよりも目を引くのが、暗がりに何か動く物体だ。シャウは手にした光の玉を地面に転がす。

光の玉は中央の鉄の置物に当たって止まるが、その周囲の光景を照らし出す。

「あ゛あ゛あ゛・・・」

その光の玉に、動く物体が近づく。うん、あれはザムアのお友達かな?

「これは、冒険者の成れの果てか?」

「成れの果てだなんて、失礼しちゃうわ。まだこの人たちは生まれたばかりの子供なのよ。」

私と同じようなスケルトンも居るが、それはこちらを警戒しているのか、剣を携えてゆっくりとこちらに近づいてきている。

「あれはハールの友達か?」

私はそのスケルトンを見て、ゆっくりと首を横に振る。そして、腰の爪に手をかけているシャウの手を握り、前に出る。

「そうね、ここは私たちの出番かしら。」

私と同じ考えだったザムア。うん、今は友達じゃなくても、仲間なら友達になってくれるかしら。

「一応、シャウは後ろに居てね。何が来るか分からないから。」

ザムアの言葉に、シャウが扉を開けたまま、部屋の外まで下がる。

「皆、驚かせてごめんなさい。私はザムア、あなた達と同じよ。こっちはハール、この子も同じよ。」

私とザムアは、シャウの転がした光の玉まで足を進める。あまりにも意外な客人に、原住民も戸惑っている様子だ。

「私達、危害を加えるつもりはないの。ただ、この遺跡の奥にあるネクロピースが欲しいだけだから。」

その時だ、部屋の奥にあった鉄の置物の中から、突然人影が現れる。

その人影は、どこかの王様のような冠とマントを羽織り、手には王笏を持っていて、いかにもこの場所で一番偉い人と言う感じだ。

それが、私たちの前に来て動きを止め、私達をじっくりと見つめる。

「・・・我らの平穏を乱す者ではないようだな。」

人影が王笏を一振りすると、周囲にザムアの出したような光の玉がいくつも現れて、部屋全体を照らす。

「そこにいる生者よ、気にする事はない。この者達の仲間なら、危害は加えない。」

シャウの事に気付いていた人影は、扉の方を見ながら言葉を放つ。

「なんだか、変な感じだな。頭の中に直接話しかけられてる感じがする。」

照らし出された部屋の中には、数十体のゾンビとスケルトンが動き回っている。

「お前たちも出てきていいぞ。」

人影がそう言うと、鉄の置物の中から一回り小さい人影がいくつも姿を見せる。

そして、その人影は王笏を持った人影に寄り添うように集まる。

間違いない、この人影たちは、ファントム。霊体と呼ばれるものね。

「前に来た時は、あなた達は居なかったと記憶してるんだけど、あなた達はここで何してるの?」

「見ての通り、ここで平穏な日々を送らせてもらっている。ここは、人も不用意に近づかないからな。」

「たまに、仲間が増えるしね。」

ザムアの言葉に、思わずファントムも笑みがこぼれる。

「その通りだ。まだ目覚めていない者も多数いる。言うなれば、ここは我らアンデッドの楽園と言ったところだ。」

そう言って、ファントムは両手を広げて笑顔を見せる。

「いい楽園ね。それじゃあ、改めて自己紹介するわ。私はザムア、こっちがハール。それと・・・。」

「シャウだ。よろしく。」

私は、ファントムに一礼して、周囲のスケルトンにも礼をする。すると、周囲のスケルトンは武器を収め、そのまま何事もなかったかのようにそれぞれの場所に戻っていく。

顔と名前を確認したファントムは、王笏を突き、私達に告げる。

「私の名前は、とうの昔に消えてしまった。だが、ここの者達は私をファントムロードと呼ぶ。楽園へようこそ。」

「よろしく、ファントムロード。」

ザムアがファントムロードに手を伸ばす。ファントムロードはそれに同じく手を伸ばして答える。

実際には、手を握ることは出来ないのだけど、信頼関係は結べたようで、私はホッとした。

「さて、そろそろ本題いいかしら?」

「あぁ、ネクロピースの事だな。ここを出て、さらに奥に行けばネクロピースの鉱床だ。だが、ここから先は生あるものは入ることが出来ないだろう。」

「そうね。じゃあ、シャウ。ここでお留守番お願いできる?」

「襲われないなら、ここで構わない。待ってるよ。」

そう言って、シャウは広間の空いた場所に荷物を下ろす。そして、その荷物からネクロピースを保管する筒を取り出し、私に差し出す。

「よろしくな。」

私はそれを受け取って、頷いて答える。とりあえずの役目が終わったシャウは、そこに座り込む。

すると、シャウの周辺に小柄なファントム達が集まって来る。その姿をよく見ると、どうやら幼い子供たちのファントムのようだ。

「ん?どうした?遊んで欲しいのか?」

シャウがファントムに話しかけている。周囲のファントムは、嬉しそうにシャウの周りをぐるぐると回り始める。

そのファントム達に、手持ちの道具袋から小さな瓶を数個取り出し、持ち前の器用さを活かしてジャグリングを始める。

それを見た子供のファントムはシャウに釘付けになっていた。

「うん、シャウは問題なさそうね。」

ザムアがそう呟き、私も同じ思いだと頷いた。その光景を見送りながら、私とザムアは大広間を後にした。


ファントムロードに教えられた通り、大広間を出てさらに奥に進む。

しばらく進むと、先ほどの大広間の扉よりも大きい両開きの鉄の扉が目の前に現れる。

その扉には、何か不思議な印があるが、それが何を意味するものなのかは私達には分からない。どうせ、命の危険とかその辺りだろうし、私達には関係ないわね。

ザムアも同じようで、全く気にする様子もなくその扉を押し開ける。扉の隙間から周囲とはまた違った空気がこちら側に流れ込んでくる。

「前と同じね。ここからは随分と空気が変わるわ。静かと言うか、何というか・・・。」

ザムアが言いたいことは何となくわかる。生きているものが一切居ない空間と言うのは、違和感と共に厳かと言うか、触れてはいけない聖域のような印象を受ける。

扉の奥は、少しの通路と、左右には何かの部屋、そして奥には目的地の地下に降りる階段がある。

私達は、目的地に行く前に、少し左右の部屋を覗いてみる。

「この辺りは、やっぱり誰も来てないようね。」

右の部屋の中は、埃を被った白い服が吊り下げられているロッカーと、何に使うのかわからない長い鞭のようなもの、そして、人だったであろう長靴と白い服を着た骸骨が落ちている。

左の部屋は、机と椅子が並んでいて、壁には開かない棚にボタンが付いた変な置物が並んでいる。椅子には数名の白い服を着た骸骨が机に突っ伏している。

「シャウの言う通り、荒らされてないと言う事は、そう言う事なのかしらね。」

そこらには、荒らされた様子が一切ない事から、この辺りはもうすでに命あるものには危険な場所であると言う事だろう。

私は、机に突っ伏している骸骨の指を見る。しかし、そこには冒険者の証であるギルドの指輪はない。周囲に落ちていると言う事でもなさそうだ。

「謎が多い場所よね。さて、さっさと仕事を終わらせて、またゆったりと旅をしましょう。」

ザムアがそう言って、部屋の外へ出て奥の階段へ向かう。私も、ザムアの隣に立つように付いて行った。

地下は雨水が溜まっているようで、私とザムアの足首辺りまで水が溜まっている。

この水自体にも、何かしらの毒が混ざってるのでしょうね。戻った時には、靴は廃棄した方がいいかしら。シャウも居るし。

そう思いながら、私はザムアの隣を歩く。しばらくすると、水もなくなり、再び地面が顔を出す。

「この先だったわね。」

そう言いながら、ザムアが光の玉を暗がりにかざす。その光は、暗がりにあるつるはしとバケツを照らし出した。

「これも、まだ残ってたのね。」

このつるはしとバケツは、前に私達が持ち込んだものだ。かなり役に立ったし、置いておこうって二人で決めてそのままって事は、本当に誰もここに来なかったのね。

これは、ファントムロードがここを楽園と言うのも頷ける話ね。

「はい、これお願いね。」

つるはしを両手で持つザムアが、私にそれを持つようようにせがむ。私はそれを片手で受け取り、肩に担ぐ。

「私はこれね。」

そう言って、バケツを手に取り、私たちはもう少し奥にある鉱床に向かった。

「さて、この辺りかしら?」

ザムアがそう言いながら足を止める。ここは、前回私達が採掘した場所。壁の前に、天井から落ちてきたような大きな石の塊があって、その中に結構な量のネクロピースがあったのよね。

幸い、その石はまだまだ残ってるから、これを砕けば出てくるでしょ。

私は、さっそく担いだつるはしをその石に振り下ろして、採掘を始める。石は脆く、つるはしは簡単に欠片を産出していく。

「鑑定は私がやるわね。」

ザムアが砕けた石の欠片をバケツの中に入れていく。ある程度集まった所で、私もバケツの中身を覗く。バケツの中は、薄らと青い光が放たれている。

「うん、これなら今回もこの一杯で十分な量ありそうね。」

ザムアがそう言いながら、中の石を拾い上げて確認していく。石の中にネクロピースが埋まっていそうなときは、私に手渡してくる。私はそれをつるはしで割り、中からは、青く透明な塊が出てくる。

これが、ネクロピース・・・生きた人間が直接触る事なんてまず出来ない。呪われた鉱物。それを、ザムアに渡す。

それを受け取ったザムアは、嬉しそうに格納容器にネクロピースを詰めていく。どんなに小さな塊でも、いい稼ぎになるのだから、顔もほころぶわね。

私は、次々に渡される石を手際よく割り、ザムアに返す。バケツいっぱいの石は、あっという間に持ってきた3つの格納容器の中に納まり、後はこれを持って帰るだけとなった。

「さて、戻るだけなんだけど、これはまたここに置いておきましょうかね。」

バケツを少し持ち上げ、残りの手で私のつるはしを指さす。私は、その提案を頷いて肯定した。

私たちはつるはしとバケツを元あった場所へ戻し、意気揚々と戻る。

その途中、左右の部屋がある通路に戻って来た私たちは、奇妙な違和感を感じた。

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