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トロッコの街へ

よろしくお願いします。

町を出て半日、俺たちは森の中で一夜を明かすことにした。

 「そういえば、俺たちどこに向かってるんだ?」

ミミに言われるがままにここまで歩いてきたがどこに向かっているのかはまだ知らない。

 「帝都アルセロだにゃ。ミミは元々アルセロにある帝国魔導士養成学校に入学するつもりで旅をしてたにゃ!あの町では旅費稼ぎをしていただけだったのにゃ。」

 帝都アルセロ。ギーカス帝国の帝都である。ギーカス帝国はこの世界に七つある大陸のうち2番目に大きな大陸の実に半分を領土とする大帝国だ。国民の多くは人間種で構成されており、世界でも随一といわれるその魔法力を背景に隣接する国々にも圧力をかけている。『ユートピア』内ではこのギーカス帝国が主な舞台となっており、中でも帝都アルセロは特別なイベントの際にしか足を踏み入れることのできない聖地のようなものであった。

 「じゃあ、転移は使えないってわけか。」

イベント専用マップは転移の対象ではなかったので転移でアルセロに直行することはできない。

 「そうにゃ!ユウイチも一緒に学校に入学したらいいにゃ!ユウイチの実力なら楽々合格にゃ!」

ミミが耳と尻尾を揺らしながら嬉しそうにこちらを見上げている。確かに魔法学校はゲーム内では入学できるものではなかったしその考えはありかもしれないな。

 「そうだな。俺もミミと一緒に学校に入ってみることにするよ。」

この世界で生きていくうえでも学校で知識を得ることは必ずプラスに働くはずだ。

 「決まりにゃ!そうと決まったら明日からは急いで向かうにゃ!」

俺はアルセロ手前の街まで転移していくことをミミに提案しかけたが、ミミの楽しそうな輝く目を見て言葉をのどにひっこめた。

 「じゃあ、今日はもう寝て明日に備えようか。」

空はもうすっかり暗くなり森にはフクロウのような鳥の鳴き声と風に揺れる木の声だけが響く。この世界に来てから1週間。今日は一段と疲れた。目を閉じればあの無残な光景が思い出されそうでなかなか目を閉じれなかったが、疲れには勝てず隣ですやすやと寝息を立てるミミにつられて俺も気が付いたら眠りについていた。



         -翌朝-

 「ユウイチ!起きるにゃ!朝にゃ!」

先に目が覚めたミミに起こされて眠い目をこする。いまだに起きた瞬間はこの世界に戸惑うがそれもじきに薄れるだろう。

 「よし!行くか!」

軽く伸びをして立ち上がり空に向かって声を放った。

 「行くにゃ!まずはトロッコの街だにゃ!」

トロッコの街までは歩いて半日といったところである。トロッコの街まで着けばそこからはトロッコを乗り継ぎして帝都まで行くことができるらしい。もちろんそんな面倒な方法は使ったことないけどね。

 「よっしゃ!行こう!」

俺たちはおー!と声をそろえて動物の声が響き渡る森の中を進んでいった。



 トロッコの街へと出発して早3時間ほどが経過した。たびたびモンスターに襲われたが、このあたりのモンスターのレベルは高くないので俺の出る幕もなくミミが一人で片づけていた。

 「そういえば、ミミってレベルどのくらいなんだ?」

 「最近魔力紙(ステータスシート)をみてないにゃんけど、大体55くらいにゃ。さすがにこの間みたいな化け物を倒せるほど強くはないにゃけど結構鍛えてるにゃんよ!」

この世界では魔力紙(ステータスシート)なるもので個々の魔力やレベルなどのステータスが数値化された状態で確認できる。

 「ゆ、ユウイチ!!」

ミミの驚いたような声が響く。

 「どうした??」

と、ミミのほうに視線をやるとそこにはまるでここから先への侵入を拒むかのように草木の壁が果てしなくどこまでも行く手を遮っていた。

 「これじゃ、トロッコの街に行けないにゃ。。。」

ミミは涙目になって肩を落としている。

 「ミミ、ちょっと下がってて。」

不思議そうに見つめるミミを壁から遠ざけて俺は壁に近づき手を触れた。

 「これは、、魔法の香りがする。」

もちろん自然物でないことは一目瞭然だったが、感じた魔力は人間のものとはどこか異なる異質さをにおわせていた。

 「・・・魔族か。」

もちろん魔法を感じた経験などほとんど0に近い俺だが、魔力の残り香から魔族の痕跡を探知できたのはMAXまであげられた魔力探知スキルのおかげだ。

 「なんにしても、まずはこれをどうにかしなきゃな。」

目を閉じて呼吸を落ち着かせる。まだこの世界に来て日が浅い。魔法を使うときはまだ緊張が取れない。

 「上級魔法 黒焔(こくえん)

指先にともった宇宙のように黒い小さな炎は草木の壁に触れた瞬間何キロも続く壁を焼き尽くした。

 「よし。進もうか!」

いつもなら「行くにゃ!」と元気に返事をしそうなものだがどうしたのだろう。返事がない。

 「ミミ?」

振り返ると放心状態でミミが変な顔になっていた。

 「ゆ、ユウイチって何者にゃ!?この間の時点でおかしいとは思ってたにゃんけど、こんなの、こんなの帝国魔導士級にゃ!さては、ミミを試す帝国のお抱え魔導士だにゃ!!!???」

 「なにをおかしなことを言ってるんだよ。俺はただの放浪人だよ。」

おかしいなあ。これでもだいぶ力を抑えたんだけどなあ。。。今度からはもっと気をつけねば。。。

 「ほら!行くぞ!」

ギャーギャー騒ぐミミを引っ張って俺はトロッコの街へと足を進めた。



        -そのころ-

 「ば、ばかな!?私の植物結界(フォレストウォール)が破られただと!!??」

おかしい...この地域にはあの結界を破れるようなものはいないはず...それにさっき一瞬だけ感じたあの魔力。あれは一体...

 「くそ、、、こうなったら直接行動にでるしかない。。。あの方のために何としてもトロッコの街を封鎖せねば、、、!」

暗闇の中で声の主はなにやらにやりとすると怪しげな果実をほおばった。

 「グ、グァアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

なんて果実だ、、、私の中にある力が何倍にも膨れ上がるのがわかる。。。!!

 暗闇から悶絶するような叫び声が消える。

 「ふ、ふははははははは!!!最高だ。私はもはやだれにも止められない!これでさらにあの方のお役に!」

暗闇に怪しげな光がともる。薄紫の肌に角のようなものが生え、吊り上がった眼と真っ赤な唇がどこか妖艶さを醸し出すその男はあふれる笑いを抑えながら歩き出した。




ありがとうございました。

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