ヤマグドの洞くつにて
よろしくお願いします
「到着っと。」
時間にして1秒足らず。3㎞離れたヤマグドの洞くつ前に到着していた。ちなみに『転移』という魔法は一度行ったことのある場所にしか移動できない。つまり今の転移で俺がゲームで行ったことのある場所には一瞬で行けることが判明した。・・・チーとすぎん?
ガイ一行が店を出てからすでに10分近く経過していたのできっと彼らはもう中にいるだろう。
「...行くか。」
洞窟の前まで来て俺は呪文を唱える。
「中級魔法 探知」
脳内に洞窟内の様子が鮮明に映し出される。
「見つけた!」
オーガの姿をとらえた俺は全速力で駆けだした。
ー3分前ー
『グォオオオオオオ!!!!!!!!!!!』
「お出ましか。行くぞお前ら!」
この町の連中にはちと厳しいが、俺らは上級ダンジョンにも潜り込むほどの実力者。巷じゃ疾風のガイなんて言われてる。オーガ1匹片付けて名声が得られるなら安いもんだぜ!
「きゃあああああああ!!!!!!」
ガイより後ろにいる騎士リリィの悲鳴が鳴り響いた。
「どうした!!!リリィ!」
振り向くとそこには噛み千切ったリリィの腕をむしゃむしゃと食べあさる黒いオーガの姿があった。
「な、、黒い、オーガだと、、、一体どこから現れやがった!!」
片手直剣を振りかざし一気に距離を詰める。しかし、
『グォオオオオオ!!!!』
オーガの咆哮だけであっけなくガイの体は弾き飛ばされる。
「わ、わかった。人が食いたいんだろう?だったら昨日臨時魔法使いとしてうちのパーティに入ったミミをやるから!な?許してくれ?」
ガイとその連れはミミと呼ばれるネコの亜人をオーガに差し出した。
「そ、そんにゃ!ひどいにゃ!助けてにゃ!」
「へ...悪いな。お前には俺たちの生贄になってもr...」
オーガはこぶしをひと振るいしてガイたちをグチョグチョにしてミミを連れて抜け穴へと入っていった。
「誰か!助けてにゃ!!!!!!」
洞窟に入ると生臭いにおいが漂っていた。
「くせぇ、、、とにかく急がないと。」
-...れか!...すけてにゃ!!!!!!ー
今のは、、!
探知したポイントに着くと無残な死体がいくつも転がっていた。
「ウェエエッ!」
初めて見る死体のグロテスクさに吐き気が催される。
この青い甲冑は、、、くそ、、、間に合わなかったか。。。
ー誰か!助けてにゃ!!!!ー
っ!!まだだれか生きてる!
こっちか!
抜け穴へ飛び込むと奥に何やら動くモノが見えた。
「初級魔法 聖なる光」
洞窟がパッと明るくなり、猫の亜人を今にも食べようとする黒いオーガの姿が見えた。
「させるか!!初級魔法 火の矢!!!」
俺が唱えた火の矢という技は子供でも使えるような初級魔法である。だが、あまりに巨大なその矢はもはや柱と形容したほうが正しいような、そんな風貌である。
火の柱は猛スピードで黒オーガへと迫り、そしてその体に柱の大きさの風穴を開けた。
「...へ???」
あっけにとられた様子の猫の亜人に駆け寄る。
「大丈夫!?怪我はない??」
「は、はいにゃ。大丈夫にゃ。」
猫の亜人はまだ何が起きたのか理解できない様子で目をぱちくりさせている。
「すまない。君の仲間を助けられなかった。」
俺がもっと早く気づいていれば、、、
「あ、謝らないでほしいにゃ。たすけてくれてありがとにゃ。そ、その凄かったにゃ。」
「とりあえず、出ようか。」
へたり込む猫の亜人を抱え上げる。
「んにゃっ!?」
そして出口までゆっくりと歩き出した。
「そうか。そんなことが。。。」
洞窟を出たところで一休みしながら、ミミからあった出来事を聞いていた。ひと悶着あったらしいがそれでも尊い命を犠牲にしてしまった事実が代わるわけではない。
「いったん町に戻ろうか。」
俺たちは酒場に戻って事の顛末を伝えることにした。
「お前がガイを殺したんだろう!!!」
浴びせられる罵声。仕方ないよな。俺が殺してしまったも同然だから。
「だまれにゃ!!!ユウイチは精一杯助けてくれたにゃ!!」
ミミが精いっぱいかばってくれるが、焼け石に水だ。
「いいよミミ。ありがとう。悪いのは俺だ。俺はこの町から出てくよ。」
「ユウイチが出ていくならミミもついていくにゃ!」
「え、でも君は、、、」
「もう決めたにゃ!一緒にいくにゃ!」
この世界に来てからずっと独りだった。寂しくてつらかった。だが今俺とともに来てくれるという仲間ができた。俺はこぼれそうになる涙をこらえながらミミとともに町を出た。
ありがとうございました。