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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺にとっての喜び

作者: ゆきさ

つまらない。

それが俺の思考の中心。だからこそ、些細な事でも楽しみを見つけると、それを貪欲に求める。

俺にとって娯楽とは、生きるうえで必要なモノだ。それが無ければ、きっと生きてはいられないから。

そんな俺に、最近楽しみができた。

それは今、俺の目の前に居る。


「ねぇるっちゃん聞いてる?」

「……」

「あそぼーよぉー。ねぇー」

「……」

「……るっちゃんるっちゃんるるるるっちゃんちゃんちゃん」

「だあああああああああうっぜええええええ!!」


いい加減鬱陶しかったのか、ガンッ! と頭を殴られる。が、一応手加減をしているのか全然痛くない。

ただ単に俺が石頭なだけかもしれない。現にるっちゃんは痛そうに拳をさすっている。

え、何? 痛いの? ぶっふぉ、ナニソレウケる。

そう口に出すと、るっちゃんはこめかみに青筋をビキビキたてながら、その喧嘩買った。と凶悪な顔を晒している。


「え? やるの? やっちゃう?」

「殺ってやんよ」

「やだるっちゃんそんな教室でヤるだなんて破廉恥。視姦プレイは難易度高いなぁ」

「は? …………はああああああ!!? もうなんなんオマエ!!」


こうして頭を抱えつつなんだかんだ相手をしてくれるるっちゃんこと磯川 泪(いそがわ

るい)は、クラスメートであり、学校一恐ろしい不良……らしい。確かに高身長で目付きも悪く、金色に染めた髪や着崩した制服など、総合的に見て不良なのは間違いない。喧嘩もするし授業もサボるし。

だが、とあるきっかけで(一方的に)絡むようになってからは、遠目じゃ分からないるっちゃんの人柄が見えてきた。

るっちゃんのいいとこその一、俺の絡みにマジギレしない。不良のくせに我慢する。殴ってこない。

その二、どんな絡みにも反応してくれる(無視はされるがそのうち折れる)。

その三、めっちゃ動物好き。猫やら犬やらよくガン見しているうえに隙があれば撫でている姿をよく見かけた。動物に優しく出来る人間に悪い奴はそうそう居ない。持論です。

まだまだあるが、根本的に良い奴なのだと思う。そんなるっちゃんを休み時間毎にからかう事が、俺の最近の楽しみなのだ。


「ねえるっちゃん」

「……んだよ河原尊(かはら みこと)。俺はお前に構ってやるほどひまじゃねーの」

「友達居ないのに何で忙しいの? あ、右手が忙しいの? 若いね」

「~~っっ」


るっちゃんは頭を抱えて唸り始めた。こんな奴にキレたら負けな気がするとかなんとか考えているのだろう。あとなんで毎回フルネームで呼ぶの。

周りのクラスメートはもうこの光景に慣れたらしく、怖々とこちらを伺ってくる事は大分減った。最初の頃はドン引いてたのに。主に俺に。

やがて諦めたようにため息をついたるっちゃんは、呆れた目を俺に向けながら口を開いた。


「お前楽しいの?」


その問い。少し前までの俺だったら即答はできなかっただろう。でも、今ならできる。

それはーー。


「るっちゃんが居るからたのしーよ?」


それを聞いたるっちゃんは見事にポカンと間抜けな表情で固まった後、ボッと顔を真っ赤に染め、ゆるゆると机に突っ伏した。


「マジなんなのおまえ……」

「人間だけどどしたのるっちゃん」


その後はどんなにちょっかいをかけても顔を上げてくれなかった。

ちょっと寂しくなった俺は最後の嫌がらせの為に黒板にるっちゃんは童貞。と書いて素知らぬ振りで自分の席に座った。

その後、気がついたるっちゃんに全力で怒られたのは言うまでもない。

続くかもしれないし続かないかもしれません。

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