マッチ売りのド畜少女 ~ほぼ2000字で読める酷すぎる原作改変シリーズ~
マッチ一箱《45本入りくらい?》
値段は約150円程みたいです。
その町はある日凍土に包まれた。
「頼む! この通りだ! たった一本で良い! ワシにマッチを一本売ってくれないかね!」
「はあい、いらっしゃい……ませ? あれ?」
「なっ!? 君は!?」
ビュウビュウ! ビュウビュウ!
そんな外で数分棒立ちするだけで人が凍る。
異常な猛吹雪が町を支配していたのであった。
「まさか!? あの時のマッチ売りの子か!」
「やっぱり、去年会ったおじさんだね!」
「もしや……君がここの支配人なのか!?」
だがここまでならば特に問題は無い。
北国、雪国であれば寒いのは当前。
数日猛吹雪が続いた所で珍しくも無い。
「おじさん……去年の大晦日。私をみすぼらしいガキとか言ってぶったよね? ねぇ、覚えてる? 私ね、あの時雪の中に頭をぶつけて、とっても冷たかったんだよ? 死ぬかと思っちゃった」
「そ、それは……」
「……で、幾らまで出せるの?」
だが……。
この物語の真の本題。
その真髄はここから。
「い、一本1万ドル(約百万)でどうだ? 良い金額だろ!? なっ! これで売ってくれ!」
「アハハハハハッ! おじさん面白ぉい!」
「ぐっ!? 笑っている場合じゃないんだぞ! もうウチには代用できる火気が無いんだ! だから早く売ってくれないと――」
「ねぇねぇおじさん? もしかして脳みそ腐ってるの? 今のマッチの市場価値知ってる? 【一本、3万ドル】だよ。さん・まん・ドル。どう考えても全然足りてないよね? ねぇねぇ?」
それは【火の不足】だった。
「なっ!? この前まで2000ドルだった筈――」
「皆も温まるのに必死みたいなの。だから試しに値段を15倍にしたんだけど……それでもみんな欲しいって言うの。ホント馬鹿だよね」
早い話が火を起こせる物がマッチ以外全滅。
信じられない事にガス管は全て凍結・破損。
さらにその災害とも呼べる猛吹雪に町は孤立。
「くそっ! このクソガキ! 御託は良いからとっととマッチを寄越しやがれってんだ! でないと今日俺は寒くて眠る所か死んじまうんだぞ!」
「じゃあ死ねば? おじさんみたいな困っている貧しい人を助けないクズは死んだ方が良いよ」
「なっ!? 言わせておけばこのガキャァ!」
よもやこの状況では救助どころか。
来た救助隊員が遭難する始末という。
「ねぇ、お兄さん達。この馬鹿なおじさんを早く摘み出して。放り出す場所はそうだね、あの冷えた池に捨ててきて! お願い!」
「「ラジャー! マイマスター!」」
「なっ!? 嘘だろ!? 待ってくれ! やっと凍えた体が温まって来たんだ! 頼むから、あの極寒の外には出さないでくれぇぇぇぇぇぇ!」
「こんな奴捨てちゃえ」
「「ラジャー!」」
「嫌ああぁぁぁぁ!」
毎日がそんな状況だったのだ。
―― ―― ―― ―― ―― ――
彼女に容赦は無かった。
しかしそれでも今日もマッチは売れる。
他に火気を起こせる代物が存在せず、需要が跳ねに跳ねあがり絶頂となったその細い棒きれ。
先端を擦れば望みの火が……暖が取れる。
薪にくべれば身を温められるその奇跡を、
「おお、我らが火の聖女様だぞ!」
「聖女様! 今日もどうかお一つ。この哀れで愚かな我々に火のお恵みを! 温もりを!」
対象は無論、この巨大な町の住民共全員。
自分には目もくれなかった連中に向けて。
何の情も抱く事無く、ただ価格を高騰させ、
「はあい、みんな押さないでね。購入制限は一人一ダース(10本入り)までだからね! もし約束を破る欲張りには、この怖いお兄さんが鉛玉を容赦なくぶち込むから、みんな気を付けてねぇ!」
……恵まれない子を見て見ぬふり。
若しくは暴力を振るった輩に、
(……お金持ちで肥えた大人達なんかみんな凍えちゃえばいいんだ。みんな、みーんな。家の中で凍って死んじゃえばいいんだ。アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!)
天罰を下さんと。
彼女は今日もせっせと……。
そのマッチを売るのだった……。
金で肥えた豚どもへ向けて。
餌を媚びる愚者へと……。
―― ―― ―― ―― ――
「あっ、お姉ちゃんだ!」
「ホントだ! マッチ売りのお姉ちゃん!」
「……本当によろしいんですか? いつもこんなに寄付をくださって。それに貴重なマッチも……」
「うん、気にしないでシスターさん。私は亡くなったここの神父さんに恩があるの。だって【去年のあの寒い大晦日の夜】に、あの人がマッチを買い占めてくれなかったら、今頃私死んでたから」
「で、ですが……」
「それに、ここには昔の私と同じで恵まれない子もたくさんいるんだもん。だからこれで美味しくて温かい料理を作ってあげてね。約束だよ」
「はい……分かりました。それが貴方様と私の約束ですものね。神に誓って子供達を守る事をお約束しますわ」
…………但し。
過去に自分から買ってくれた優しい恩人。
及び自分に似た恵まれぬ子供を除いて。
「あと、この事は――」
「秘密ですね。存じ上げておりますとも。それにこの猛吹雪の中です。どちらにせよこんな離れた場所の教会に来る者などおりません。ですからどうかご安心くださいませ」
「それならいいの。じゃあ、さよなら」
「どうかお気を付けて……」
こうして……彼女は明日もマッチを売る。
親も無く貧困で苦しんだ悲しい子達の為に。
持たざる者の為に…………。
これは短編ですが、シリーズと名義した通り。
ただの作者の考えすぎではありますが。
以下の規則に抵触せず書けるならば【他の話】も書きたいと思います。
・童話、古典文学など著作権の保護期間が終了している作品を原作とした小説。に違反した場合。
※一応今回モデルにした【マッチ売りの少女】の原作者、ハンス・クリスチャン・アンデルセン氏は1875年8月4日にて亡くなられており、以降50年以上経過している為、著作権的には大丈夫だと思われます(著作権についてうろ覚え作者)
・こちらのなろう運営社様より不適切と認定されてしまった末、削除依頼があった場合。
とまあ……一応ルールには遵守せねばならぬので。
この重要な規則の二つ(もっとあるかも?)について抵触しなかった場合、連載執筆の手が空いた際にまた書きたいと思ってます(´・ω・`)
では、読者の皆様ありがとうございました!