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第5話 冒険の始まり

冒険の始まり(始まるとは行ってない)

「いらっしゃいませ。ギルドのご利用は初めてでしょうか」


 地球ではなかなか拝めない美人な受付嬢が聞いて来る。

 ここまでの美人となると、日本では見れない。

 外国でも、いるかいないかの恐ろしい美人具合だ。


 それは置いておいて、今は冒険者登録の続きだ。


「初めてですね」


「ご説明を致しますか? それとも、先にご登録なさいますか?」


「……登録してから、説明を」


「かしこまりました。では、こちらに必要事項をお書きください」


 受付嬢はそう言って紙を渡して来た。その内容は、名前や年齢、その他諸事項がつらつらと書いてあった。



 ――――――――


 名前:ソウマ

 年齢:17

 使用武器、魔法など:剣、盾

 命の危険は自己責任です。ギルドは責任を負いません。よろしいですか?:はい


 ――――――――


 他にも色々と書いてあったが、大まかにまとめれば、こんな感じだろう。

 名前にはゼキエーレの姓を書くことはしなかった。書いたらアードールの時と同じような反応をされ、面倒くさい。別に名前だけで問題はないだろう。


 紙を受け取った受付嬢は、しばらくお待ちくださいと言って奥へと消えた。そして、ものの数分で戻ってくると、灰色のカードを差し出して来た。


「こちらがソウマ様の冒険者カードでございます。お確かめください」


 灰色のカードには、名前、年齢、そしてFランクと表示されていた。どうやらこれがFランク冒険者のギルドカードらしい。

 Fは灰色か。ランクが上がれば色も変わるのだろう。しばらくの我慢だ。こんなカードはずっと持っていたくない。


「名前もあってますし、問題はありません。それと、実はある冒険者から少し話をしてもらったので、ランクの上げ方と依頼の受け方を教えてください」


「かしこまりました。では、まずランクの上げ方ですね」


 受付嬢は次のように説明を始めた。


 ランクを上げるには、依頼を受け達成することで得られるギルドとその外部の評価、また、本人の実力、この二つによって決まる。


 評価とは、依頼の達成率、外部での態度や姿勢、それらをまとめて人々の信頼を得ているかどうかである。

 本人の実力は言うまでもなく、依頼の難易度に対して適切な実力があるかどうか。達成した依頼の難易度や、討伐した魔物からこれは逆算される。


 この二つがランクアップに至るとギルドに判断される、または、それに至る功績をあげれば、ランクを上げることができる。


「依頼はギルドを通さないとダメなんですか?」


「いえ、冒険者ギルドは冒険者に依頼を紹介するための場所にすぎません。なので、依頼を個人的に受けることで罰せられる、なんてこともありません。しかし、その場合は全責任が依頼を受けた冒険者に圧し掛かりますので、最悪の事態になった場合はギルドからの除名処分になる可能性もございます」


 依頼の受け方は自由、と。個人的に受けるのも、ギルドで受けるのも、どっちでもいいんだな。規制もそこまで多い訳でもなさそうだし、詳しいことは適宜質問すればいっか。


 俺は最後に一番、これだけは聞いておきたかった質問をした。


「冒険者は、自由ですか」


 この質問に、受付嬢は少し驚いた素振りを見せた後、くすりと笑ってこう答えた。


「完全に自由かと言われれば、その答えは、いいえです。冒険者にも当然規律はありますし、ルールがあります。ですが、他の職業に比べればと聞かれると、答えは――」


 そこまで言うと、受付嬢の美しい顔が花開く。これは一つの兵器ではないかという笑みが、俺の目の前に咲き誇っている。


「自由です! 冒険者は、命を賭けて己の欲望を満たす者達であり、その呼び名に相応しい振る舞いをしています。何より、命を賭けているのですから、何をやるにもその人の自由でしょう?」


 いい答えだ。惚れそうになるくらい、清々しく芯の通った素晴らしい答えだ。いや、実際のところ惚れているかもしれない。


 しかし、当面の目標は奴隷購入。


 一般的な恋愛をできるとは思わないし、受付嬢ほどの美人さんにはもうとっくに彼氏がいるだろう。指輪はつけてないようだが、仕事中だからという理由かもしれない。


 どちらにせよ、俺には目指すべき目標があって、そこまで行くための努力が必要だ。余計なことを考えていてダメだ。特に、女の事に関しては。


「ありがとうございました。おかげで、ここのことが良く分かりました。これから、しばらくお世話になります。改めて、ソウマと言います。よろしくお願いします」


「私はアメリと言います。ソウマ様、よろしくお願い致します」


「そんな、様なんて。一介の冒険者に対しては、あまりに敬い過ぎなのでは?」


「でしたら、ソウマさん、と。私のこともアメリで結構ですので。それと、敬語も必要ありません。私のは、仕事の関係で止めるわけにはいきませんが」


「分かりまし……分かった。アメリ、よろしくな」


「はい。ソウマさん。よろしくお願いしますね」


 お互いに笑い合う。何だかいい雰囲気だが、惑わされてはいけない。きっとこれも仕事で仕方なく仲良くしているだけだ。

 俺なんて冴えない一般人、相手にする程の女性ではないさ。

 期待し過ぎるのは色々な意味で体に毒だ。


 俺はアメリと離れ、依頼の貼ってある掲示板へと足を運んだ。

 掲示板には様々な依頼が張られており、難易度Fをはじめ、中には難易度Aもあった。俺はその中から、難易度Dの討伐系依頼を剥がし取って受付へと戻った。


「これを受けたい」


「こちらは……コブリンを10匹討伐、ですね。Dランクの難易度ですので、失敗する可能性もありますが、よろしいですか?」


「問題ない。ゴブリンなら、おそらく俺の方が強い」


「では、受注したということで、カードを提示してください」


 アメリに言われるがままカードを渡した。

 俺のカードをアメリは良く分からない機械に通し、確認してから返す。どうやらこれで受注したらしい。

 カードを見ると、他の情報に混じって現在受注中の依頼名が表示に追加されていた。


「じゃ、行ってくる」


「行ってらっしゃいませ。帰って、きてくださいね」


 俺の顔をジッと見つめた後、静かにそう言った。

 この最後の一言を、アメリはなんだか寂しそうな顔をして言っていた。


「……あぁ」


 予想外の言葉に一瞬戸惑ったが、死なないという決意を込めて答えた。美人に心配されるというのは、普通に嬉しいものだ。

本当に始まらない……宣言通り!

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