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第27話 復活の神と戦争の合図

「ぜ、ゼキエーレ様がどうしてここに?」


「うん? 気が付かなかったか。その男が私の器なんだよ」


「……は? こんな男がですか!?」


 ソウマがゼキエーレ様の器なんて信じられない……とは、思わなかった。

 初めてソウマを見た時、闇に紛れて輝く光を見た。


 それがまさかゼキエーレ様だとは思わなかった。

 だからこそ、驚きを隠せない。


「それで、ゼキエーレ様はどうして今ここに? 何故すぐに出て来てくれなかったのですか。最初からソウマを器だと言ってくれれば私だって……」


 優しくした、なんて冗談でも言えない。

 きっとゼキエーレ様が止めに入っても、私はあの黒い状態のソウマに手加減はできなかっただろう。


 ルシファーとの戦いを意識していた、私だったら無理だ。


「いやね、君とソウマが戦っているのは知っていたんだ。でも、力が戻らなくてさ」


「力……言われてみれば、確かに弱いですね」


「そうだろう? これじゃあ、全盛期の1%にも満たないよ。まったく、衰えたかなアッハッハ」


 嘘でしょ!?

 これでたったの1%、いや、1%未満?


 こんな上質で、しかも密度の濃い聖気は他の神々でも見たことがない。

 やはり創造主は違うのかな……。


「おっと、そうだ。君には感謝しないとね」


「感謝、ですか。私はゼキエーレ様の器を傷付けようとしただけのような……」


「まぁ、見方によってはそうかもね。けれど、結果として彼が殺人に手を染めることはなくなった。それは、君が居てくれたおかげさ。ありがとう、ガブリエル」


「そ、そんな……お褒めに預かり光栄です」


 まさか最高神であられるゼキエーレ様から直々に感謝を述べていただけるとは、恐悦至極雨あられ!

 こんなことを言われてしまってはついつい頬が緩んでしまって、あぁ……。


「ゼキエーレ……まさか、創造主であるゼキエーレ様なのですか!」


「ん? 君は確か、十字聖教会の司祭だったか?」


「はい、ラッセントと申します。貴方様のためにここまで働いてきました」


「私のために、ねぇ」


 急に割り込んできた司祭が自分を高く評価するような言いぐさで自己紹介をし始めた。

 だが、それをゼキエーレ様は快く思っていない様子だ。


「私はね、怒っているんだ」


「怒って……一体何にですか?」


「君だよ、司祭」


「我、じゃない私ですか!?」


「そうだ。私の愛しい息子をよくもまぁここまで痛めつけてくれたじゃないか。しかも、関係のない人々を虐殺し、まったくもって許しがたい所業だよ!」


 司祭はそこまで外道だったのか……全然知らなかった。

 ここ最近は下界に降りて来ていて、天界にある情報網が使えなくなっていたからだな、ここまで情弱になってしまったのは。


 そうすると、ソウマは司祭の悪行を知った上であの暴挙に出たのか。

 かなり危なっかしく、禍々しいオーラを放ってはいたが、やはり義のために動いていたという事か。

 彼もまた光を内に秘めた男、そう簡単に堕ちはしないのだな。


 それに比べて私と来たら、司祭と言うだけで善人だと決めつけソウマを悪人だと即決してしまった。

 情けない、実に情けないぞ。


 私が自分自身の色々な意味での弱さを反省しているのと同時に、ゼキエーレ様が司祭を責め立てていた。


 って、ほむ?

 何か聞き捨てならない言葉が出てきていたような……むす、こ?


「君には死後、然るべき処罰が――」


「ゼキエーレ様!」


「む? なんだガブリエル、私は今忙しいのだが」


「む、息子とは一体どういうことですか!?」


「……おっと、口を滑らせたか。はっはっは、忘れてくれ」


「忘れられませんよ!!」


 ゼキエーレ様のこの反応、冷や汗をかき、視線を横に逸らして私と目を合わせようとしない、完全に動揺している。

 確定だ、ソウマはゼキエーレ様のご子息、そして私が攻撃を仕掛けた人物。


 これは、ヤバイ。

 私、完全に神には反逆してしまった。

 反逆罪に問われてしまう、やらかしたぁ。


 あまりのショックに両手で顔を覆い項垂れてしまう。

 神への反逆は私達天使が最も嫌悪すべき所業。

 それを己が犯したと知って、自責の念で押しつぶされそうになってしまった。


「お許しくださいゼキエーレ様……私は、わたしは」


「おいおい、止めてくれ。私はそんなつもりじゃ」


「創造主よ、我を救いたまえぇぇぇ!」


「ちょ、お前は黙ってろって」


「ゼキエーレ様あぁぁぁ」


「創造主ぅぅぅぅぅ」


「あぁもう、うるさーい!!」



 ◆



 魔界某所


「……チッ、楽しそうだなゼキエーレ。古き友よ」


 ルシファーはソウマの体を通してガブリエルと司祭に翻弄される友を見て、そう呟く。


 この男もかつて、ゼキエーレやガブリエルとあんな風にギャーギャーと喚いていた時代があった。

 それは過去、それも遠い遠い過去の話である。


 その頃のルシファーは大天使であり、ゼキエーレと同じ時期に生まれ、同じ時期に育ち、同じ時期に活躍した。

 言わば、ゼキエーレの兄妹に近い存在だった。

 その上、後輩であるガブリエルと意気投合し、任務を共にすることも多くなっていた時期だ。


 ルシファーはそんな時代を思い出し、己の中に芽生えた暖かな気持ちをかなぐり捨て前を見る。

 ルシファーの前には数えきれないほどの魔物が跪き、魔王ルシファーに対して最大の敬意と畏怖を表していた。


「そうだ……我はこれを選んだ。このために生きて来たのだ。もはや友などいらぬ。次に会う時はお前の命日だ、ゼキエーレ」


 かつて、大魔王の下で魔界七大将のトップを張っていた頃の密かな野望は、もやは隠せない程大きく、そして現実に近付いて来ていた。


 彼の止められる者はまだいない。

 同じ魔界七大将である他の魔族たちは動こうとはせず、人間たちも未だ自分たちの危険を実感できてはいなかった。


 ルシファーの野望を阻むものはいない。


「さあ、始めよう。実験は成功した。軍も揃った。力も蓄えた。もう何も躊躇うことなどない!」


 ルシファーは立ち上がり、マントを翻しながらそう叫ぶ。


 それに呼応し、跪いていた配下たちが一斉に顔を上げた。


 ルシファーは大きく息を吸い、命令を下す。


「戦争だ!!!」


「「「ウオォォォォオォ!!!!」」」


 魔界に魔物の怒号が響き渡る。


 それは人間と魔族、古き良き大戦を再び起こす合図でもあった。


 人間と魔族が領土を奪い合い、魔族側は貧困を極め、人間側は内部崩壊を繰り返しつつも、お互いに血を流しあったあの戦い。


 100年近くも続いた、人間からしてみれば忌まわしき戦争。


 混沌大戦の再来、第二次混沌大戦の合図だ。

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