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第26話 人殺しはダメ絶対

休みがちな今日この頃……でも、仕方ないんや! 予定が詰まっているのがイケナイ!!


そんなこんなで、リエル視点です。






 邪悪なオーラを感じ取り、それがルシファーのものだと理解した私は隣町へと急行したのだが……。


 ま た お 前 か


 目の前で黒く気持ちの悪いオーラを纏ったソウマを見てそう思った。


 この男と会うのは2度目、正確に言えば3度目か。

 どの時も、どんな場所でも、私が彼と会う時はいつも邪悪なオーラを漂わせている場面に遭遇する。


 そんな彼は私を見てこう言った。


「何故邪魔をするんだ、リエル」


「愚問だな。私が光で、貴様が闇だからだ」


「……?」


 理解してなさそうな表情だが、私にはそんなこと関係ないな。


 さて、彼の様子は最初の頃よりかはかなり、浸食されている。

 特に左目が完全に魔族へと変わっているぞ。


 ここまでハッキリとした浸食は初めて見たので、対処方法なんかはまったく分からん。


 だが、例え彼が自我を保っていたとしても、魔族と同化したような人間は人間にあらず。

 もう彼は帰らぬ人となったのだと、そう割り切って彼の体を斬ってしまおう。


 ルシファーを……友を斬る時、躊躇わないように。


「死んでも恨むなよリエル。俺は本気だからな」


「それは私のセリフだ。貴様が泣いて命乞いしても、逃す気は毛頭ないから、なッ!」


 ソウマの胴体目掛けて剣を突く、がオーラに阻まれて剣は体に届く前に止まった。


 くっ、オーラが鎧となっているのか。

 これでは、せっかくソウマが軽装だというのに意味はないではないか。


 私は一旦ソウマの反撃を避けつつ距離を取った。


「退いたな。殺していいんだな?」


「しまっ……!」


 失敗した。

 そう言えばソウマはこの司祭を狙っていたんだった。

 これでは距離を取った私がバカだ。


 咄嗟に私は、ソウマを司祭から引き剥がすため突進攻撃をした。


 がしかし、それを読んでいたかのように左手を私の方に向け、オーラの波動で私を遠くへと吹き飛ばした。


「じゃあ、死んでくれ」


 剣を振りかぶり虚ろな目で司祭を殺そうとしているソウマ。


 この力は最後まで溜めておきたかったが、このままソウマの殺人を見過ごすよりかはマシだな。


聖なる大地(ホーリーグランド)!!」


 司祭の跪く地面が光りだし、司祭自体を包み込むように白っぽく透明なオーラが半円を作った。


 その白いオーラはソウマの剣を進ませないように司祭を護った。


「!? また邪魔をするか、リエル」


「私を見ろ、貴様の敵は私だろ!」


「チッ、お前を先に倒さないとダメみたいだな」


 私が司祭を守りソウマの邪魔をしたことによって、とうとうターゲットを私にせざるおえなくなったようだ。

 完全に計画通りだが、やはり少し勿体なかった気もする。


 これからの戦いにはこの力を存分に振るいたかったのだ。


 しかし、ソウマの気を引き司祭を守れたならば無意味ではなかった。

 そう思えば気が楽になるし、むしろ得した気にもなれる。


 前に向きに行こう、目の前で剣を振りかざすソウマを見てそう思った。


「邪魔を、するなっ!」


 横振りの剣をバックステップで避け、縦に斬りつける。

 それをソウマは剣で受け流し、再びオーラの波動で攻撃をしてきた。


聖なる大地(ホーリーグランド)!」


 だが、それも私の力で防ぎきる。

 もうあのオーラで吹き飛ばされることはない。


「……」


 すると、急にソウマが黙ってしまった。

 先程まで「邪魔だ」とか「殺す」とかうるさかったのだが、一体どうしたのだろう。


 様子を見ていると、最初に見た時よりもオーラの濃度が薄くなっていることに気が付いた。


 どうやら、あのオーラがソウマの性格を捻じ曲げている……?


 いや、私は彼の性格とやらを知らない。

 知らないどころか、彼が今までどんなことをしていたのかも、どこ出身なども知らない。


 私は彼の、何も知らないのだ。


 そうだ、知らない人間なのだ。

 私が男性に初めて名前を聞き、親しく会話したという仲だったとしても……他人、なのだ。


「ソウマ、貴様はどうして司祭を殺そうとする」


「……知り合いを、殺された」


「あの、司祭にか?」


「そうだ……アイツに知り合いを殺された。他にも、この町の人々を殺した殺人鬼だ。殺すしかないと思った」


 まさか、そんなことがあってたまるか。

 司祭だぞ、教会のトップに等しい人間だぞ。

 そんな彼が殺人、それも複数人の人間を殺すなどあってはならない。


 だが待てよ、司祭の着ている服に刺繍された十字架の印は……。


「もしや、司祭殿は十字聖教会の?」


「そうとも、我は十字聖教会の司祭を務めている。それが何か?」


「なるほど……ソウマ、私は全てを理解したぞ」


 理解した。


 理解したからこそ、貴方の前に立ちはだかろう。


 こんなことで貴方が、私が初めて名を聞いた貴方が殺人者になる必要はない。


 だから私がここで止めよう。


 貴方の手が血で汚れないように。


「ソウマ、私は貴方を全力で止める。だから、戻ってこい!」



 ガキンッ



 オーラと剣がぶつかり甲高い音が響く。

 まだまだオーラは鎧として機能しているらしく、刃を通してはくれなった。


 しかし、それでもオーラの精神支配は薄れていて、ソウマは私の攻撃にピクリとも反応しなくなった。


「ソウマ、貴方は本当に殺人を望んでいるのか!? この男の死を、本当に欲しているのか!」


「殺人鬼は、アイツだ」


「そうだ。でも、その男と同じ土俵に立っても良いのか!」


「でも、ガワンを殺したのはアイツだ。許せない」


「気持ちは分かる。しかし、そちら側に行ってしまったら……貴方の大切な人たちはどう思うんだ! 悲しまないのか!?」


「大切な……人……」


 その言葉を皮切りに、異常だった左目が段々と元の姿を取り戻していき、それと同時に黒いオーラが消え始めた。


 ソウマは剣を握る力を緩め地面へと落し、その場に崩れ落ちるかのように倒れた。

 私はそれを受け止める形で支え、地面へと寝かせた。


 その時にはもう、彼の体には黒いオーラはなく、代わりに眩いばかりの光を纏っていた。


「ふぅ……やはり貴方は不思議な人だ」


 そう私が呟いた時、それを肯定する声が彼の体からした。


「そうだよね。本当に変わっている」


「だ、誰だ!」


「誰だとは失礼な。君とは一応顔見知りだったはずだよ?」


 声は彼の体からする、そう思ったのだがその声はまるで移動するかのように四方八方からバラバラに聞こえた。


 私は声のする方する方を見ては、そこが虚空なことに驚き再び視線を変えた。


 そうこうしている内、不意に後ろから肩を叩かれた。

 振り返れば見知った顔が、幼児にも似た男の子の顔がそこに立っていた。


「あ、貴方様は……」


「やあ、久しぶりだねガブリエル」


 そのお方は幼児に体をしてはいるものの、中に浮き私と会話をしている。


 姿かたちはどこからどう見ても子供で、愛らしい男の子なのだが中身は全然の別物。


 それも、飛び切り最高で私にとっては尊敬すべき、そして畏怖すべきお方なのだ。


「お、御久し振りでございます……この世界の創造主であり、最高神であられるゼキエーレ様」



 ◆



 夢を見た。

 とても懐かしい夢だ。

 俺が地球で、日本で生きていた頃の夢だ。


 俺は毎日、仕事に行って帰って来ては、そのまま眠る。

 そんな生活サイクルを送っていて、あの時は疑問に思わなかったし給料も酷くはなかった。


 けれど、自分の周りはそうじゃなかった。


 同僚は「ブラック企業辛いですよね」とか言うし、同級生は「え、それブラックじゃね?」とか言うし、母親なんか「その会社今すぐやめなさい!」なんて怒ってきた。


 それでも俺は自分の仕事に誇りがあったし、嫌なことももちろんあったけど、そんなのどこも一緒だと割り切って仕事をしていた。


 でも、そんなある日事件?いや、ある意味では事故が起こった。


 俺と同期で、俺よりも出世していた同僚の1人が自殺をしたのだ。


 その同僚はよく一緒に飲みに行ったし、仕事もした。

 彼が出世した後も、俺の相談に乗ってくれたりしたし、もしかしたら一番仲の良かった奴かもしれない。


 遺書には仕事の辛さや、上司の酷いいじめ、果てには家庭崩壊なんてことまで書かれていた。

 その字は酷く乱雑で、読ませる気がないとしか思えない程だった。


 しかし、それでもその遺書に残った涙の痕が、彼の本心を物語っていたのだと今でも思っている。


 彼の自殺方法は飛び降りだった。

 住んでいたのがマンションの6階で、ベランダが丁度人通りの少ない道へ続いていたのだ。


 自殺を考えた彼からしたら、さながら地獄から解放される絶好の場所だったのかもしれない。


 自殺した彼の死体を見て、彼の自室に走り遺書を開き、そしてその内容を目に焼き付け心に刻んだ時に思った。


 この会社は、人を殺す会社なんだ。


 そう思ってからは人生が苦痛でしかなかった。

 会社に行くのも苦痛、そこから帰るのも苦痛、寝るのも明日になるのが嫌だったので苦しかった。


 あの会社に勤めているだという事実が苦痛でならなかったのだ。

 人を殺す会社に勤めている自分も、共犯ではないのかと思ってしまったから。


 でも、会社を辞めてたら行き場がない。

 バイトで食いつなぐのか、新しい仕事はいつ見つかるのか、そんな不安ばかりが過り辞めるに辞めれなかった。


 何より、彼の遺書には最後にこう綴ってあったのだ。


「もしも叶うなら、俺の友人でありイカレた会社に縛られ続けている彼の幸福を切に願う。彼の幸せを、俺の生きるはずだった命を代価に叶えてやってほしい」


 命を粗末にした彼の、醜く優しい最後の祈りだった。


 俺も彼のように、地獄から解放されようか迷っていたのだが、まだまだ頑張れるなんて気を紛らわしていた時だ。


 会社に縛られてるなんて被害者ぶっても、結局は居場所と給料をもらって仕事をさせていただいている側の人間だと割り切り始めた頃のことだ。


 そんな惨めな考えを捨て去る覚悟をしたある日だったのだ、あの人生を変える見方によっては最高で、現実は最低な、そんな未来を見せてくれた夢を見たのは。

人を殺すのはダメ絶対。

自殺も「自分を殺す」と書いて自殺だし、ダメ絶対(コナン風)


しかし、結局は他人の命でどうこう言える立場では……ううむ、難しい。

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